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あほやん 占い師と会う(1150字の小説)

道路を歩いていると、片隅に女が一人椅子に座っている。
見ると、
「占いします」と机に張り紙が垂らしてある。
不思議に興味を抱いて女のいる所に歩を進める。
女は若くて意外に綺麗な顔立ち。
若い女の占いなど当てにはならないだろうと、
思っては見たが、綺麗な女に惹かれてしまう。

「お客さんですか?」と、座りながら首を上に向け
上目目線で聞いてくる。
「お客さんなら、前にお座り下さい」
と、椅子を薦められる。
僕は言われるままに椅子に座り、手のひらを差し出す。

「私は、手相占いでは無いです」
と、言われる。
僕は怪訝に思い
「何の占いですか?」と尋ねてみる。

「私は人のオーラを感じる特技があり、それを占うのです。お代は1万円です。如何が致しますか?
但し、当たらなかったらお代は頂きません。」

「当たらなかったらお金、いらないのですか?
それなら、占って下さい」
と、僕は腹黒く考える。
…当たっていても、否定すれば良い。儲かった…
と、僕は心の中でほくそ笑んだ。

「では、手を出して下さい」
と、言われるままに手を差し出す。
僕の手の平に、女の手が重なる。
久しぶりに女性と手を繋ぎ幸せを感じる、僕。

女は瞑想し、静かに僕の手を握り締める。
女は何かを読みとっているのか、「うんうん」と言う様な仕草で頭を上下に動かす。
そして、目を開け、僕の瞳を覗き込む様に見つめる。
「貴方は非常に良い人ですね。人が良すぎて騙される事が今まであったでしょう。そうでは無いですか?」
と聞いてくる。
…当たっている。だが否定しないと、お金を払わないと
いけなくなる。ここは嘘をつくべきだ…
「いえ、騙された事など一度もないです。」と
平然と答える。

「そうですか?でも気をつけ下さいね。
今日貴方に幸運が訪れます。
この道を真っ直ぐ行くと、貴方にとって運命の出会いが
待ち受けています。
必ず待ち受けています。その女の人は、貴方よりも小柄で
可愛く美人ですが、可哀想な人です。
もしその様な娘に出会ったならば、声をかけてあげて下さい。この予言が当たらなかったらお代はいりません」

「では、当たっていたら、お代を払いに来ますね」
と、言って僕はその場を立ち去った。
道なりに歩いて行くと、
予言通り、小柄で美人の女がいる。
悲しげな瞳は僕を求めるかの様に誘ってくる。
「どうかしたのですか?」
と、優しく女に言った。
女は僕の言葉を待っていたのか?
嬉しいそうに僕を見つめてくる。
そして、
「私、今日言われたのです。ある人から此処に居ると
運命の人に出会うと」

…そんな馬鹿な?本当に有るのかこんな事!…
と、心で叫ぶ僕。
「貴方とお話ししたいです」
と、大胆にも女から僕の手を握ってくる。

女に連れて行かれた場所は、ボッタクリの
悪質キャバクラ!

あの占い師は新手の勧誘女だった。

追伸
みなさん気をつけ下さい。
本当に有るかもしれません。


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