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猫になった宇宙人8


猫になった宇宙人(8)


少女は猫好きなのだろう。
赤の他猫(私)を、いつも可愛がってくれる。
だが、少女の心はいつも悲しみに包まれている。

その悲しみは、生きる事の辛さである。
表情は平静を装っているが、心はいつも泣いている。

少女の悲しみが私に、ひしひしと伝わってくる
少女には、悲しみを伝えれる人はいない
家族にも、先生にも言えない。

少女には友達が一人いるみたいだが、その人にも言えない。

M52星にいた時は、これ程の悲しみを持った人に、
出会った事は無い。
少女はいつも死にたいと思っていた。

私は少女を助けたい。
私を愛してくれる少女に恩返しをしたいと
いつの間にか思う様になっていった。

一度、少女の通っている、中学校に行ってみよう。
先ずはそれからだ。少女を虐める人を探そう。
私はそう決意して、少女の通う中学校に向かった。

授業中であった。
今日は、少女も登校している。
少女は時々学校に行く。
行かなければ、卒業できないからだ。
地球人の制度で義務教育というのがあるらい。
そんな事はさて置き、少女のクラスを探した。

足音を忍ばせながら、そっと校舎内を探した。
二年三組この教室に少女はいる。
授業中である。
教室内の生徒は静かに授業を聞いている。
しかし、沢山の心の声が聞こえてくる。
うるさいぐらいに。

私は、忍者の様に教室に入って行った。

少女がいる。
だが、心はうつろだ。早く帰りたいと思っている。

誰が少女を虐めるのだろう?
私は、一人一人の心を探ってみた。

その時チャイムが鳴った。
授業終了のチャイムであった。
一礼すると教師は教室を出て行った。

その時、ある女生徒の心の声が聞こえた、
(退屈だから、雅子でもいたぶるか)

退屈だと人をいじめるのか⁉️

その女は少女の前に行き、
「おまえ、今日何故来た!おまえは家に入ればいいんだよ。
来ると目障りなんだよ。」

少女は黙っている。
誰も少女を助けようともしない。
無視している。

「何とか言えよ!」
少女は泣いている、心の中は悲しみが止まらない。
だが、少女は表情も変えない、何も言い返しはしない。
何故?

地球人は心は読めないのだから、言葉で言わないと伝わらない。
何故言い返さないの?
その時、誰かが私を見つけた。

「おい、猫がいるぞ」
皆んなが私に注目した。

やばい、私は素早く立ち去った。
少女を虐める人は、確認出来た。
そして、教室にいた生徒たちの心の中も大体分かった。


私は教師の居る、職員室に足を運んだ。

何人かの教師がいた。
私には全く気づかない。

教師たちの心の声が聞こえてきたが、誰も少女が虐められている事についての声は聞こえてこない。
取るに足らない事を考えている。

一人の生徒が虐めを受け、自殺の願望があるくらい悩んでいるのに
教師達は全く気付いていない。

たとえ心が読めなくても、少女の態度、仕草でわからないのか?

少女が毎日学校に来ない事を、教師は何故疑問に持たないのか?
少女の事を真剣に考える教師がいない事を思うと、腹が立った。

私が少女を守る。
その時決意を固めたがどの様に守って良いのかわからない。

やはり、猫には無理だと気がついた。




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