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人間になった宇宙人(6)



「佐竹君は、兄弟がいるの?」
と、雅子がご飯を食べてるのをやめて突然聞いた。

「兄弟ですか?居ないです。一人っ子です」
と、答えた。
「そう、一人なの。私のは兄と姉がいるのよ。」
と、何故か雅子は、兄弟の事を口にした。
でも、母親は同じだが、雅子の父親はどこの人だか判らない、
悲しい現実がある。
佐竹(ゴア)は、以前来た時からその事は知っている。
……何故雅子さん、兄弟の事を言い出したんだろう?……
と、佐竹は疑問に思った。

「兄弟って不思議なのよ。同じ親から生まれて来たのに、
性格や考え方がまるっきり違うの。好きなものも違うの。
お兄ちゃんと違うのは、仕方ないと想うけど、お姉ちゃんと違うのは何故か解らないの?何でかな?」

と、悲しそうに呟く様に、雅子は言った。
姉と心が通わない事が残念な想いがあるのだろうか?

「僕は兄弟が居ないのではっきりとは判りませんが、
やはり、お姉さんと、よく話し合うべきだと思います。
心を開いて話すべきだと思います。」

「でも、雅子のお姉さん、チョット怖いし、変わっている人だよね。」
と、洋子が会話に参加してくる。

「でも、あの人は本来は明るくて面白い人だと思いますが」
と、佐竹は洋子に向かって言ったが、

「お姉ちゃんの事、佐竹君知っているの?」
と、驚きを隠せ無い雅子である。
洋子も驚いている。
「いつ、お姉ちゃんとあったの?佐竹君。」

……しまった! また口を滑らせた。……
「いえ、会った事は無いですが・・・。その様に思っただけです。
想像です。」

「想像ですか?怪しな〜。本当は会った事あるんじゃない?」
と、洋子が訝しがる様に聞いてきたが、雅子も
「本当に想像なの?お姉さんに会った事も無いのに?」
と、疑いの表情だ。
「でも、佐竹君の言う通り、お姉さんは本当は、優しい人で明るい人なの。私には冷たく当たるのだけど、本当はそうじゃ無いと思うの」
と、雅子は佐竹君の言葉を肯定する様に呟き、

「お姉さん、可哀想な人なの。お母さんと、仲が悪いの。」
と、うつ向きながら、哀しそう言った。

佐竹は、その表情を見た時、猫になって来た時の事を想い出していた。
あの時、雅子はいつも暗い顔で哀しみを胸に秘めて生きていた。

自分(ゴア)が雅子の側を離れると、雅子は自ら命を断つかも知れない。私にとって雅子は本当に気がかりな存在であった。
………もしかして、この感情が愛? ………
あの時は猫であったが故に、
雅子に告げる事は出来なかったが、人間として来たからには、
今度は雅子に告げる事が出来る。だが今回、同じ感情になる事が出来るであろうか?雅子は以前の雅子とは違う。
元気で明るい!私はその様な雅子を気に掛ける事があるのだろうか?……

と、疑問が残った。

楽しい食事会の会話は、続いた。
雅子は佐竹に好意を持っているとの確信を持った洋子は、
自分が愛のキューピットになる事を勝手に決めていた。

……雅子、私が一肌脱ぐからね……
と、時代遅れのセリフを言いながら、静かに決意を秘める洋子であった。



佐竹は家に帰宅すると、犬のゴンが尻尾を振って待っていた。
「お土産ある〜?。ゴアがいつも言っている鯖の焼いたのあるの?
美味しんでしょ」
と、猫舐め声で聞いてきた。

「あるよ。でも犬は魚より肉の方が良いと言われて、
焼き鳥の余った物を貰ってきたよ。」

「余った物?焼き鳥?何それ」
と、小首を傾げながら、ゴンは聞いてくる。

「まあ、食べてみて。この焼き鳥、美味しいから」
と、差し出してみる。
ゴンは、初めて食べる焼き鳥を注意深く見つめている。
そして、意を決する様に一口で食べた。

「美味しい。ドックフードと全然味が違う。何だろう?
この味は、しょっぱい様な甘い様な、何とも言えない味。
食感もコリコリしていて、焦げた所の僅かな苦味が、郷愁を誘う」

と、ゴンは食のレポーターの様な感想を宣べた。

……特に最後の郷愁を誘うって何だ?……と、ゴアは思ったが、
ゴンの満足そうな顔を見ると、安心した。
美味しい物を食べる事は、地球観光の目玉の一つになっている。

「どうだった?女子二人との食事会は?好きな人出来たか?」
と、ゴンは今度は芸能リポーターのみたいに、探る様な質問してきた。

「好きな人なんか出来ないよ! それよりも、雅子さんに嫌いって
言われたよ。」
と、ちょっと拗ねた様な言い方で呟いた。


「雅子さんに嫌われた⁉️ そんな事無いだろう!
何かの思い違いだろう。嫌いなら、自分の店に来てって言わないだろう!」
と、ゴンは元気付ける様に言ってはいるが、半信半疑な言い方だ。

「そうだと思うけれど、地球人の心の中は見えないし、読めないよ。」

「だから、そんな周りくどい事しないで、心を読む様にすればいいんだよ。僕が雅子さんの心の本心を観て来ようか?」

「ダメだよ、ゴン。心を読む事なく地球人と接触したいんだ。
その中で愛とは何かを知りたいんだ。だから勝手に心を観ないで。」
と、ゴアは真剣な面持ちでゴンに言った。
「解ったよ。ゴアは頑固者だからな。愛が解ったら、僕に教えくれ。それよりも、他の食べ物は無いの?」

「他の食べ物は、この玉子焼きだよ。ゴンの為に残して来たよ。」

「ありがとう😊、で、玉子って何?何の卵?」

「さっき食べた鶏の卵だよ。それを焼いたの。食べてみて。
美味しいよ。」

と、ゴアは食べ残した玉子焼きを、ゴンの容器に入れた。
ゴンはじ〜っと見ている。初めて見る玉子焼きに思いを寄せているのか?それとも警戒しているのか?
と、ゴンが考えている時に、目にも止まらぬ早業で、一口で
玉子焼きを口にほう張りながら、

「美味しい😋この柔らかさの中にジワッと出てくるジュウシーな
甘みは。地球に来て良かったです。
今度は犬で無く、人間に生まれて来たい。と言うか人間に変身したい。」
と、感慨深く言った。

「人間に生まれ出る事って本当に稀有な事です。
人間に生まれて来た以上は、他の動物と同じでは無い!
と、しっかりとした自覚を持ち生きる事が本当に大事です。
人間として生きる。これほど崇高でこれ程の喜びは無い。
前回は猫になって現れたが、想っていても言葉に表す事が出来ない。もどかしい思いを持ち、食べる物も人から与えてもらうだけ。
好きな物を注文出来ない。
本当に不便であった。人間だけが自由に出来る。
人間って素晴らしい😀
皆さま、人間に生まれて来て感謝しましょう!」


と、ゴアは、何故か地球人になっていた。t

人が人を好きになる。これほど崇高な事は無い。
恋愛は勝負では無い。
「時々、好きにさせた方が勝ち」と想っている人がいますが、
それは全くの誤解、想い違いだ。
ある人の言葉で
「愛されているのは、蝋燭の火に照らされいるのと同じ。
 愛している時は、自ら蝋燭の火となって燃えている」
と、聞いた事がある。

人が人の事を好きになる事が出来なかったら、本当に悲し事。

告って振られたら傷つくが、でもそれは、その人と縁が無かった、
薄かったと想えば良いのでは無いだろうか?
それよりも、自分が人を好きになれた事を褒めてあげる方が良い。

人を好きにもなれない人間よりも、ずっと人間らしい。

と、雅子はこの様に想っていた。

いつか、佐竹君に告白する。雅子は強い気持ちを胸に秘めていた。

でも、そのいつかって いつなの?

五日では無い事は分かってはいるが、今はその勇気が出ない。

乙女の心は揺れていた。青春真っ盛りの16歳。

🎵恋も二度目なら、少しは上手に愛のメッセージ伝えたい。

と言う歌があるが、雅子も二度目の恋であった。

前回は、告白もせず単なる片想い。
でも仕方ない、彼は一つ上の先輩。多くのファンがいる中で、
目立たない私の事など、気付かれもしない遠い人。
憧れの人だった。

佐竹君はその先輩に顔が似ている。
先輩とは話した事など一度も無かったけれど、
佐竹君とは、気遣いなく喋れる。
佐竹君、私の事どの様に想っているのかな?

お母さんは、若い頃はモテタと言っていた事を思い出した。

🎵母に甘えて打ち明けるには、あ〜少し大人すぎるみたい

でも私、もう16歳だ。そう言えば
🎵伊代はまだ、16だから
って言う歌あったな。
お母さんが歌っていた。
知らんけど。

母親の影響だろうか、昭和歌謡の歌詞が想い浮かぶ、
雅子である。

思い切って、母に相談しよう。恋愛の事を。
決意を固める雅子であった。

https://note.com/yagami12345/n/nf5652ed3efd6

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