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三つ子の魂百までも(12)


12

モテる男は辛い。二人の女性から告白されても、私の性格では、
二股は掛ける事は出来ない。と思いながら、
裕美さんと美乃さんを観ていた。

「ところで、コーちゃんは、何故、加藤君がコーちゃんに似ているか調べたの?双子じゃないの?」

「本当に似てますね?双子みたいに」

と、美乃さんは相槌を打つ様に、不思議がった。

「まだ、調べて無いけど。」
と、会話している時に、代表の直美さんが帰って来た。
直美さんは、キャバ嬢を辞めて、探偵の業務だけに専念している。

直美さんは、三浦さんに挨拶をした後、
「案件が解決してよかったです。ストーカーの人も、悪人では無さそうと、内の杉田も言ってましたし、大丈夫だとは思いますが、油断はなさらないでくださいね。何か不都合な事がありましたら、ご相談ください。法的処置も考えますので」


美乃さんは、笑顔を見せながら頷いた。

裕美さんが、

「お姉ちゃんはどう思う?コーちゃんと加藤さんが、双子と思う?
ねえ、どう思う」
と、ねだる子供の様な聞き方である。

「そんな事は、公一君が考えればいいことです。
裕美には、関係がないでしょう。」
と妹を叱る様に言った。
流石はお姉さん。直美さんのこう言う所が僕は好きだ。

「じゃ、一度両親に聞いてみます。僕が双子かどうかを?」

「聞いてみて、聞いてみて!絶対に聞いて」

「なんで、そんなに気に掛かるの、裕美さんは?」と僕が尋ねると

「だってね〜。気になるよね!」
と言いながら、美乃さんに同意を求めるように、美乃さんの顔を見た。

少し間があって
「うん、気になります。」と同意してる。

そう言う事で僕は両親に聞く事になった。
と言っても、両親とは離れて暮らしている。

僕は、一人っ子で兄弟など居ないのは明白なのだが、
加藤君があれだけ似ているのは、気になる。

久しぶりに自宅に電話をした。呼び出し音が、数回鳴った後

「はい、杉田ですが、」と母の声が聞こえた。

「俺、おれ、だけど」とふざけて言った。

「俺では、分かりません。どなたでしょうか?」

母親はしっかりしている。俺俺詐欺には引っかかる事は無いか
と思っていると。

「公一でしょ。ふざけて無いで、名前言いなさい」
と怒られた。

「お母さん、僕の名前言っては駄目でしょ!俺俺詐欺に引っかかるよ。絶対にお母さんから、名前を言ってはいけないよ!」

と注意しておいた。だが母親は、その言葉を無視するかの様に

「久しぶりね。どうしたの?仕事は上手くやってるの?...
そう、良かった。恋人とか出来ないの?...

もう、そろそろ結婚の時期でしょ。
最近ね、..。」

と、どうでもいい事を、喋り出した。
適当に、相槌を打った後、僕は

「お母さん、最近 僕とそっくりの人と会ってのだけど、
皆んなが、『僕とその人は双子では無いか』と言うんだけど、
僕って双子なの?」

こんな大事を、さらっと聞く僕って一体何者?と
自分で思いながら聞いた。
母親は何も喋らない。あれだけ話していたのに、急に喉が
詰まったみたいに、黙ってしまった。

「どこで、会ったのその人と?」
と急に言葉のトーンが下がった。

「一回目は、大学の入学式で二回目はつい最近。」

と僕の声はハイトーン。でも気持ちは複雑。

母は、
「他人の空似かな〜?」と少し曖昧に誤魔化す言い方である。

私は、こう見えても探偵の端くれ。鋭い洞察力が働いた。
双子かどうかを、親ならば知っているのに、
この言い方は変である。
双子で無いので有れば、明確に否定できる筈でる。
だが、ここで母親を問い詰めるのはやめよう。
電話だし、複雑な事情も有るかも知れない。
と、思ったが、

「空似ぐらいじゃ無いよ。そっくりだよ」

明らかに問い詰めている。

「公一、御免。お客さんがきた。電話切るね」
と言って、一方的に切られてしまった。

この態度は明らかに、不審。もしかすると、僕は双子かも知れない。

懲りないでまたもや投稿
売れないKindle作家

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