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chiyoizmo
(続)三つ子の魂百までも20
17:00頃に伊東さんは事務所に帰ってきた。
普通、伊東さんは夕方は事務所に立ち寄らないのだが、
今日は報告する事があったみたいだ。
嫌な事があったみたいで、顔付きが険しい。
こういう時は、注意が必要だ。下手な冗談は命取りになるかもと思い、伊東さんとソファーに座り対面した。
「さっき、女性から聞いた医者の所に行って来たよ。」
と言いながら、裕美さんの淹れたお茶を飲み干し、お代わりを要求した。
「それで、どうだったの?」
と、裕美さんが聞いた。
「それが、その住所の病院に行ったんだが、その人はもう辞めたと言われた。」
「居なかったのですか?・・・・」
と、僕は残念な思いで、後の言葉は続かなかった。
「だけど、その医者のことで、話が聞けた。それも、・・・・」
と、間を空けた。伊東さんも勿体付けて話す人だろうか?
「それも、何!」
と、裕美さんが聞きたがっている。
「それが、良い噂を聞かんのだ。ある看護婦によるとだな・・・・」
と、またお茶を飲んでいる。
僕は、次の言葉を興味を持って待った。それと同時に、
此の様に話すと皆の興味を引く事が出来ると、事を学んだ。
「あまり評判が良く無いんだ。腕は良いらしんだが。」
と、言いつつまた、お茶を飲んだ。
「どの様に評判が良く無いんですか?」と、
僕が聞いた時、裕美さんは、
「腕が良いって、どう言う事?手術が上手って事?」
と、間を空けずに聞いてきた。
「要するに、その病院で何かトラブルがあって、そこを辞めたらしい。今、
所在は判らんが、難しい手術を請け負いでやっているらしい。それも、高額の報酬を要求しているらしいんだ。」
と、伊東は何処かで聞いた様な話しをした。
「ブラックジャックみたいね?」
と、裕美さんが怪訝そうに言った。
「その様な人と新美さんは友達だと言うことですね。
でも、それって、悪い事しているのでしょうか?
何故、病院を出て行ったのか判りませんが、難しい手術なら、
報酬も多いでしょう。それだけの技術があるのでしょう。
何故、評判が悪いのでしょうか?」
と、僕は疑問に感じて呟く様に言った。
「看護婦の話しだと、その医者は、患者に対して無礼な態度を取ると、言っていた。特に貧乏人には、相手にしないらしい。
それで、院長と揉めて、その病院を辞めたみたいだ。」
「今は、何処に居るかは判らないと、言う事ですね」
と、僕が言った時、伊東は、
「その兄貴がこっちの病院に居るとの事だ」
と、言って手帳に書いた住所と名前を見せてくれた。
またもや、個人情報が保護されず暴露されていた。
「此処から近いですね。一度行ってみますか?
此の石川と言う医者に会いますか?」
「でも、兄弟は仲が悪いらしい。」
おそらく、弟の居場所は知らんだろう。」
「此の、医者。弟の方だけど、何か知っているね!
事件に関わっているね。そんな気がする。
きっと、矢部さんの事も知っているよ。
私の、頭脳に響いてきたわ。間違いない。」
と、裕美さんの確信ある言葉に、伊東さんは、少し笑いながら
「裕美、なんでそんな事が判るだよ?」
と聞いた。僕も同じ疑問を裕美さんに抱いていた。
「私は、子供の頃から霊感が強くて、いつもはそんな事は無いんだけど、
急に感じる事があるのよ。
さっき、叔父さんの手帳に書いてある名前を見たら、そのように感じたのよ。
知らんけど」
と、何故かここで関西風の言葉を出した。
「まあ、期待して聞いとくわ。」と、全く期待していない呆れ顔だった。
「後は、広田美枝子さんに期待するしか無いですね」
と僕が言った。
「で、いつ来るんだ?その女は。」
「判らないです。」
「連絡先聞いているんだろう?こちらからアクションしないとダメだろう。」
「そうですね。じゃ今、電話を掛けてみますね。」
と、先程貰った名刺を見て電話を掛けた。
その結果、明日広田さんは事務所に来てくれる事になった。
「それと、気になるのが、新美の妹だなあ、何処にいるのか?
もっと、気になるのが、佐伯だ!あいつは何かを隠している。」
と、刑事の目付きで伊東は言った。
「佐伯って誰?何で気になるの?コーちゃん何も言わなかったよね。佐伯の事なんか!私に報告しなかったよね。」
と、裕美は鋭い目付きで刑事の様に僕を、睨んでいる。
佐伯の事を忘れていた僕に、裕美さんは鋭い視線を浴びせてきた。
その視線に少し恐怖を感じた私は、
「佐伯の事は、元刑事の伊東さんからお話を聞いた方が良いと思ったので、私から話すのは控えておきました。」
と、自然な形で誤魔化した。
「そうなの!公ちゃんなりに気を使ったの。で、どこが怪しの?
佐伯って言う人」と、伊東さんに訊ねた。
伊東さんは、勿体ぶったのか、直ぐには応えず、お茶を音を立てながらすすって飲んだ。
裕美さんは、好奇心が全てにおいて強く、探偵に向いてはいるが、
一緒にいると、ウザい時もある。
伊東さんは、間を取りながら一つ一つ、考える様に話した。
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