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ある天才科学者の幽霊(4)


4

ふ〜っと、私はため息を吐いた。本当はここでタバコでも
吸いたい気持ちであった。

「あんた、私のどれくらいの事を調べた?」

と、逆に女に質問をした。

「パソコンのファイルにあった事は、大体把握しているわ。
それと、広田さんから聞いた事もあるわ。」
と、澄ました顔で言っている。

「だったら、私に質問する事などないだろう!
何故、私に手紙を送った?」

と、冷たく言い放った。
私は生前この様に人に対応してきた為、評判が悪かったのかも知れない。

「馬鹿ね、あなた!パソコンに書いてあったぐらいの事で、
私の好奇心が満たされると思っているの?
私の好奇心は、海よりも深いのよ!

さっきから聞いている事に答えてよ。
矢部さんの遺体は何処にあるのか?
あの事は書いて無かったわ!
嘘ついてもダメよ。
私は霊感が強い女よ。」

と、私に向かって馬鹿と言う言葉、久々に聞いた。
この女、執拗に食いサガってくるな。

「矢部さんの遺体は、石川が知っているはずだ。
だが、もう荼毘に伏したのではないかな?」

と、曖昧に答えておいた。
実際に矢部さんの遺体が何処に保管されているかは知らない。


「新美君。やっぱり石川医師の事を知っていたようね。
私の前では、誰もが真実を話すわ。」

と、勝ち誇った笑みを浮かべながら言っている。

真実を話すだと? 
しまった!石川の事を言ってしまった。

石川との関係がバレてしまった事に後悔はしたが、
そんな事は、どうって事もない。
私はとり繕うこともなく、話しを続けた。

「で、後は何を聞きたい?」

「石川医師と貴方が知り合いだった事は認めたね!
矢部さんの脳の移植も、石川医師がやった間違いは無いね!
そして、貴方が亡くなった後、麗華さんは石川医師の所に行った。
その様に思っても良いかしら?」

と、私を見下ろす様に言ってくる。
無礼極まりない女だ!
だが、私も生前はこの様に人には対して話していた事を
思い出した。

「私が亡くなった後の事は知らないが、麗華に矢部さんの脳を移植したのは、石川だ!
私が死んだ後、麗華が石川の元に行ったとしても不思議な事では無い」

と、私は正直に答えた。

「私の思っていた通りだったわ。
でも、疑問があるんだけど、ロボットを製造する資金はどこから出てたの?もしかしたら、反社会的なところから?

新美君、そんな人達と関わっていたの?
広田さん、心配してたよ?
どうなの?」

と、この女、私よりも歳下なのに私を「君」付けして読んでくる。

だが、ロボットの製造資金をサグってくるとは、
気が抜けない。
ここは事実を言うべきであろう。

「私は、反社会的な人達とは何ら関係が無い。
製造の資金などもらってはいない。」

「じゃ、どこから出てたの?相当な費用が掛かると思うけど?

嘘ついてもダメよ。私は全て見抜く力があるのよ?
解っていると思うけど!」

と、自信満々だ。
だが、時計を見ると、もうタクシーが迎えに来る時刻だ!

「残念だが、私には時間が無い。
もう帰る時刻だ!
この続きは今度にしよう。
もう迎えが来る。さらばだ。」

と、伝えてタクシーに乗り込んだ。
次に会うのはいつの日かは分からないが、会いたくも無い女だ!

私は、下界を去った。
ホッとする想いを持って。




この小説、今日書き上げました。
Kindleで販売するかは、未定です。
先ずはノートに掲載します。

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