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(新)三つ子の魂百までも(22)


22


「死んで間が無いと形にならないのですか?」
と、僕が聞いた時、裕美さんが次の写真を出してきた

「この写真よ。林田さん、どう思う?」
と、裕美さんの真剣な表情がより真剣さを増している。
俗に言う怖い顔だ😱

林田さんも怖い顔でその写真を見ている。
「・・・・・・う〜ん(≧∀≦)」と、一言いい

「苦しんでいますね・・・」と、言った。

僕には何も解らない、他の人達も怪訝な表情だ。
特に母親の友子さんは、涙が頬を伝わっている。
その表情を見たらもうこれ以上の詮索はやめた方がいいと
僕は感じていた。

「裕美さん、正太さんが亡くなったのは事実ですか?」
と、僕は小さい声であったが強い気持ちで聞いた

「そうです。残念ですがもう亡くなっています。」
と、明確に言い切った。
友子さんの泣く声が小さいながらも聞こえてくる。

……重い雰囲気である。誰かがこの雰囲気を変えて欲しい!……
と、僕は願った。
祈りは通じるもので、来客を示すインターホーンのチャイムが
静かな事務所に鳴り響く。

来たのは、美乃と修だ。
……そういえば、今日は日曜日。修は休みだ、でも美乃はデパートの勤務時間では無いのか?……
対応しているのは、直美さんだ。
離れた場所で会話しているみたいで、修達の話の内容は聞こえてこない。

「本当に、正太は死んでしまったのですか?」
と、父親の正一さんが、自信無さそうに言った。
「ええ。」と、小首を縦に動かす裕美さん。

正一さんは、瞳を閉じた。

「正太を殺した奴は、何者ですか?この前は妖怪って言っていましたが・・・・、そんな物が本当にいるのか?・・・・」
と、頭を抱えながら力無く言った。

「この次の写真を観てください。」
と、裕美さんが差し出してきた。

「さっきの苦しんでいる写真の次ですか?
この写真も苦しんでいるのですか?どこで苦しんでいると解るのですか?」
理解できていない僕は、少し怒りを表す様に、
裕美さんと林田さんに質問した。
相変わらず、父の正一さんは頭を抱え下を向いている。
母の友子さんは、ハンカチで目頭を押さえ写真を見ようとはしない。

「これは、霊感の無い人には解らないかも知れません。」
と、林田さんは残念そうに言い
「僕も以前は、何も解りませんでした。でも修行を積んだおかげで
霊感が付きました。このカメラを扱う様になってからです。」

「次の写真を見たら解るわ。これは鮮明に写っているわ。
正太さんの顔だと思うけど、この写真は何も苦しんではいないわ。
ご両親に会えて嬉しそうな表情よ。」
と、裕美さんが言った時、父親の正一が頭を上げた。
そして、その写真を手に取って見た。

「うん、正太の顔に似ている。」と、言った。
母親の友子さんも写真を見て、軽く頷いてみせた。

「これだけです、写真は。」
と、裕美さんがみんなに告げた。
他の写真には、霊の写っている写真は無かった。
「もう少し鮮明に撮れていたら良かったのですが、申し訳ありません」
と、林田さんは、正一さんと友子さんに謝っている。
僕は、これだけ沢山の心霊写真を見たのは初めての経験である
だけど、遠慮しないでハッキリと写って欲しい。
モヤッと霊が写ると、こちらもモヤッとした感情が残る。

それから、ご両親との話しが続く

「捜査のレポートに書きますが、正太さんの捜索はこれで終わりにしたいと思います。悲しい結果となってしまいました。
ご両親には、信じ難い事だと思います。
でもこれ以上の捜索は、亡くなっている以上無理だと感じました。」
と、裕美さんは感情を殺した言い方であった。

「あの〜。正太の遺体はこの前蒸発したと言っていましたが、
事実でしょうか?」
と、友子さんが不思議そうに聞いてきた。

僕も疑問に思っている事だ

「それは、・・・・・私は明確に解っていますが、私の云う事を信じられますか?」
と、裕美さんは友子さんに力強い視線を送る

その気合いに押されたのか、友子さんは裕美さんから目を背けた。
「この事は、私が話しても誰も信じてはくれないでしょう。
でも、事実です。今世間を騒がせている犯人の正体は、妖怪です。それも恐ろしい妖怪です。
人を熱で殺し、そして蒸発させる妖怪。
でも、そんな事を言っても誰も信じ無いし、言った人を狂った人間って思うだけです。
でも、真実はそうです」
と、裕美さんは、名探偵の様に言い切った。

友子さんは何も言わなかった。
ただ、深いため息を残していた。
正一さんの落胆する姿は、手に取る様に解った。
悲しい現実を受け入れなければいけない。

裕美さんは、辛い表情で二人を見ていた。
……裕美さんは、本当は優しい人なんだ!
単なるパワハラ上司では無いんだ!……
と、僕は感動していた。

https://note.com/yagami12345/n/n595e1d4f3fd0











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