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(新)三つ子の魂百までも(20)


20

「身体が蒸発するって!何なのでしょうか?」
と、母親の友子さんは驚きの声を上げると同時に身体が小刻みに
震えている。
そして、手で顔を覆い静かに泣き出した。
「熱かったでしょうね。苦しかったでしょうね。・・・・」
と、こちらにもその苦しみ、悲しみが伝わって来る。
僕も涙が滲んでくると同時に、その者に対しての怒り💢が込み上げてきた。
裕美さんも泣いている。
父親の正一さんは、信じる事が出来ないみたいで茫然としているが、瞳に涙を浮かべている。
林田さんは、やるせない態度でカメラをテーブルに置いた

言葉を発する事が出来ない重い空気の中、
裕美さんが、静かに言った。
「その、女性ですが、今 巷で騒がれている事件の犯人では無いでしょうか?この女は・・・・・。」

と、裕美さんは、言葉を止めた。
裕美さんは苦悶の表情が浮かんでいる。
……言うべきか、言わざるべきか!……を、考えているのだろうか?

「その女は、人間では無いのですね。」
と、林田さんが落ち着いた口調で静かに裕美さんに言った。

「人間では無いって⁉️・・・・・」
正一さんは、驚いているのだが、言葉には力強さが無い。
友子さんは、黙ったままでハンカチで目を覆っている。

「撮った写真を見てから意見を述べたいのですが、今の所は
差し控えておきます。」
と、裕美さんは冷静に答えている。

「林田さん、撮ったフイルムをカメラから取り除いて頂きたいのですが、そして松田さんにこのフイルムを現像して、写真にして頂きたいのです。
私達にトリックなど一切無い事の証明です。」
と、裕美さんは静かに語った。そして、

「この写真が出来ましたら、もう一度お会いしてお話しをしたいのです。よろしいでしょうか?」
と、同意を求め、松田夫妻は心良く了承してくれた。

ベランダ越しに見える外の景色はいつもと同じ光景だ。
街並みも何ら変わってはいない。
……この平穏な世界に、人を蒸発させる生き物が居るのか⁉️……
と、考えると恐ろしい事であり、次の被害者を出してはいけない
との想いであった。だが、これは他人事では無く
僕もその被害者になる可能性が充分ある事に気がついた。
しかしも、その女は男だけを狙ってくる。

いち早く、この事件の解決をしなければ、被害者は増えていく。

僕は、大いに決意した。
「日本のポアロ」の 名にかけて!

https://note.com/yagami12345/n/na2b6a7969d1b

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