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(新々)三つ子の魂百までも 8


林田さんは、少年に電話するみたいで、
電話番号を調べている。
今は便利な世の中になった。
簡単に誰でも連絡が取れる時代。

以前、父から聞いたのだが、
「好きな女性に電話する時、自宅の置き電話しか無かったので、
家族の誰が出るか、ドキドキしながら、電話をした」
と、言っていたのを何故か思い出す。

少年と連絡が取れたみたいだ。
電話の相手の話す声は聞こえてはいないが、
林田さんの言葉で内容は推測出来る。

林田さんが、裕美さんの都合の良い日を確かめている。
裕美さんは最近仕事が立て込んでいる為に
日程の調整が合わない。
林田さんはいつでもいいみたいだ。
林田さんの仕事はフリーのカメラマン兼フリーのジャーナリスト。
今は暇みたいだ。

僕は忙しい日々を送っている。
僕ぐらいの優秀な探偵になると、
色んな仕事を任される。
時には、裕美さんのサポートや伊東さんの補助。
後輩の指導など様々な仕事をこなさないといけない。

そんな事はさて置き、少年との面会の日程が決まった様である。

もちろん僕も行くことになった。
頼られると「嫌」とは言えない性格を知って
裕美さんはいつも僕に頼ってくる。

日時は11月の第三日曜日午前11時。

今から二週間後だ。
場所は少年の住む町(個人情報の為記載しません)の駅にあるレストラン。

その様に決まってホッとしたのか、林田さんは、嬉しそうに帰宅の途についた。

僕は裕美さんの事が気になって聞いた

「大丈夫ですか?ヤバい仕事では無いのですか?心配です。」
と、真剣に言っている僕を、裕美さんは感じてくれたのか

「大丈夫よ、先ずは少年に会うだけ。
話しを聞くだけだから。」
と、微笑みを浮かべ僕を見てくれた。

僕の心の中の嫉妬の火は鎮火したみたいだ。


月日の経つのは早く、もう少年と会う日がやって来た。



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