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人間になった宇宙人(3)



雅子は、勉強をしていた筈なのに、いつの間にか佐竹優也の事を考えていた。
今日、会ったばかりなのに、何故か気になる。
虚な瞳で一点を見詰めている。

……佐竹君、田原先輩に似てる。だから気になるのかな〜……
田原とは、雅子の初恋の片想いの少年だ。

♪恋する女は夢観たがりの、いつもヒロイン束の間の
と、言う歌詩があるが、雅子は夢心地だった。

「雅子、もう寝たの?電気ついてるけど。」と
隣の部屋から母の声が聞こえてくる。
時刻は23時を過ぎている。

「もう、寝るよ。お母さん。」
「早く寝ないと、朝起きられないよ。また遅刻するからね。
早く寝るのよ。」
部屋の扉の外から聞こえる。

……佐竹君、何処から来たんだろう?遠くから来たと言っているけど
外国かな?田舎の感じがしないから、都会から来たのかな?
お父さんは、どんな仕事しているんだろう。
おそらく、お父さんの仕事の都合でこちらに来たんだろ。
佐竹君、何処に住んでいるんだろう?……

その様な事を考えてる間に、雅子は眠り堕ちて行った。

次の朝、揚々に早起きの雅子であった。
いつもは、気にしない服装も、髪型も今日はしっかりと整えられていた。
雅子は鏡を見ながら、思った。
……ブスでは無いが、ニキビと、そばかすが気になる。……
いつもは、気にしていなかった事が、今日は何故か気になる。
……これって、佐竹君に見られるから気になるのかな?……
チョッピリ複雑な気持ちのまま、いつもの様に学校に向かって元気良く自転車を走らせた。

……今日は、遅刻はしない……
今日から本格的な授業となる為、お弁当持参の登校である。
学校には、学生食堂もあるが、母親は毎日弁当を作ってくれる。
これも雅子には嬉しい事の一つであった。
以前の雅子は「母親から愛されていない!」
と、感じてしまう事が多くあった。

「愛の反対語は、憎しみではない。愛の反対語は、無関心だ!」と、雅子は想っている。

以前の母親は、雅子に対して全くの関心を示さなかった。
中学生の時、みんなから酷いイジメを受けていても、
[雅子には関心が無いのか?]
母親は、気付いてはいなかった。
それが雅子には辛い悲しみであったが、母親が離婚し一緒に暮らす様になってからは、母親の愛情を感じる事が出来る雅子であった。

相手の為に食事(お弁当)を作ってくれる事は、その人に関心が無ければ、出来ない。
義務的に出来る人も居るかも知れないが、相手を想う気持ちが無いと長くは続ける事は出来ない。また、おかずに工夫する事が無くなる。

雅子は中学二年生の時、猫を飼っていた。
道に捨てられていた猫を見つけて拾ってきたのだ。
母親から、反対はされたが、自分の気持ちを押し通した。
(詳しくは前著にあります)

飼い主が、ペットを飼う時に一番に考える事(関心事)は、餌(食事)である。
次に排泄の処理。
ペットを飼って、餌も与えずほったらかしにする事は無い。

人間も同じ事が言える。
親は子供に対して関心がある為に、食事を提供する。
相手に関心を持つことが、最初の愛情の表れ。

愛の無い人には、関心を懐く事は無い。



毎日、その人の為にお弁当を作ってくれる事が、相手に「関心」を持っている事であり、拡大解釈すれば、「愛」と言ってもいいであろう。
雅子はその様に感じていた。



「おはよう」と教室に入るなり雅子は元気良く声を上げた。
……佐竹君来てるかな?……と、想いのまま教室内を見渡した。
……来てる!……

雅子の元気な声を聞いて一番驚いているのは、佐竹優也(ゴア)だった。
……この前、地球に来た時の雅子と全然違う。元気いっぱいだ!
雅子にどの様な事があったのだろう?私が地球にいた時までは知ってはいるが、それからどの様な事があったのか?
何故、これだけ雅子は変わったのだろう……

驚きを隠せない、佐竹優也である。
(ゴアの目的は、人間の愛を調べに来た為、相手の想いを読み取る能力は使わずに感情を探りながら接して行く事を決めているゴアであった)

佐竹は、転入したばかりで友達と呼べる人は未だ居ないが、
話をしてくれる人は何人かは出来た。
気軽に話掛けてくれるのだ。
その一人に、水上浩二がいる。

彼はこのクラスの学級委員長に選出され、明るくみんなから人気のある人物である。
本来ならば、相手の心を読む事をするのだが、今回はそれを封印している佐竹である。
……この人が、僕に優しく接してくるのは、本心からか?
それとも、何かの目的があるのか?……
と、想ってしまう佐竹である。

人の裏の感情を探る事は、非常に難しい。
その様な気持ちでいつも居ると、人間関係が殺伐となってしまう。
だからと言って、簡単に言葉を信じてしまったならば、
不幸になる事もある。
……地球人って本当に苦労が絶えないな〜……
と、想っている佐竹(ゴア)であるが、経験した事がない事に挑戦するのも楽しみの一つである。
それは、未開の地を探検するのと似ているのかも知れない。



授業中、雅子は隣の佐竹優也が気になって仕方が無かった。
だが、佐竹の顔を直接見るのでは無く、横目でのチラ見である。

佐竹はそのチラ見にも気付かずに、よそ見もしない。

……佐竹君って授業に集中する真面目な人なんだ……
と、雅子は感心していたのだが、

佐竹(ゴア)がよそ見しないのは、姿は目覚めてはいるが、
寝ているのである。正確に言うと意識を飛ばしているのである。
佐竹(ゴア)にとって、地球の授業は何の価値もない事であった。

(読者の人で 「何故宇宙人が、高校に転入できたのか?」と疑問を持たれた方もいらっしゃるでしょう。この答えは後ほど)

授業も全て終え、帰りの会の時間となった。
帰りの会とは、全員の確認と明日の打ち合わせ、並びに委員会の報告事項の連絡など、10分位で済む会合である。
その会が済むと、クラブ活動に行く者や、サークルの活動をする人、そのまま帰宅する人に別れる。
佐竹は転入したばかりで、クラブやサークルには属さず帰宅部である。
雅子も帰宅部である。居酒屋の手伝いをしないといけないので、
クラブには入る事はできないのだ。
この高校は、普通科、商業科と別れていて、雅子は普通科である。

一般的に勉強が出来る人が、普通科に入る。
それは、中学生の時に成績に応じて入れる高校に生徒を振り分けるからだ。教室から生徒たちが去って行く中、まだ数名生徒達が雑談している。

……愛の事を知りたいと考えているが、どの様にすればいいのだろう?
前回は、猫になっていたので人に甘える事は出来たが、
今回は人間である。どの様に人に近づいて行けばいいのだろう。…
と、佐竹は考えていた。

……愛と好きと言う感情に違いがあるのだろうか?
猫であった時は、雅子の事が気になって仕方無かった。
これって愛なのか?と思っていたが、………
と、自問自答している。
……雅子の事が気掛かりだったのは、いじめにあっていたからだ!
いつも死にたいと雅子の心が言っていたかである。
だが昨日今日と、雅子の側に居て感じたのは、雅子は以前とは違い明るくハツラツしている。
嬉しい想いがあるが、気になる存在では無くなった。
これって何故? あれほど気になっていた雅子が………

「佐竹君」と突然声を掛けられた。

「何、ぼ〜っとしてるの?」
と、見つめられた。
……誰だろう?名前は何だったけ?覚えていない!……
「ボ〜ッとしてましたか?愛の事を考えていたので!」
と正直に佐竹は言った。

「愛の事!どう言う事?え〜^_^」
と笑いながら、驚いている。
その屈託の無い笑顔が何故か魅力的な感じがした。

……地球人は顔とか、容姿で判断するのだろうか?
好きになるか、嫌いになるかを……

「佐竹君って変わっている。 ねえ〜誰か好きな人出来たの?」
と、聞いてきた。

……好きな人ができたか?ってどう言う意味なの。
好きって言う意味が、解らないのに……
と、心で叫んでも聞こえはしない。言葉にしないと、地球人には解らない。
「好きと言う事が、解らないのです」
と、真顔で答えた。

「ちょっと聞いてよ雅子!佐竹君、好きって言うのが解らないだって!」
と、驚いた表情で石田洋子が大きな声で呼んでいる。

https://note.com/yagami12345/n/nd5137715e14f




















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