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サロメ(平野啓一郎訳)を読んで

今回はあらすじを大体しか知らなかったということで、サロメを読んでみました。こちらは平野啓一郎さんが翻訳して、それを元に宮本亜門さんが舞台化させたと言うものになっています。
まずサロメそのものを読むと、サロメの無垢な可愛らしさと恋を知ってどんどん狂気を見せていくところ、そしてナラボートやヨカナーン、ヘロデの一点しか見つめていないために起こる狂気に触れてゾッとするけれど忘れられないような、少し自分でもわかってしまうようなものを感じました。
その後、平野啓一郎さんがどんな思いで訳を書いたのか、どのようにオスカー・ワイルドと向き合ったのかが訳者あとがきにガッツリと書かれています。これを読むと翻訳で何が必要と考えられているのか、どうしてこのような訳にしたのかということがわかり、そこから再びサロメを読むと今度は少し客観的にサロメを見つめることができました。そうなると目立ってくるのは脇役のはずのヘロディアスなんです。他の人々とは全く違う感覚で動いていくヘロディアスを見るとサロメそのものの見方も大きく変わります。
そして最後に宮本亜門さんが翻訳に寄せてコメントを載せてくれています。これを読むと舞台ではどうやれば映えるのか、サロメはどのように見るのが1番狂気を伝えられるのかと考えている見方を教えてもらうことができます。そうやって再びサロメを見ると今度は舞台を見ているかのような感覚になります。
こうして3回サロメを見返したのですがそれぞれにそれぞれの良さがあり一冊を十分に味わうことでサロメを味わい返すことができる、素敵な本でした。訳本はこういう楽しみ方があるのだということを教えてもらえる一冊でした!

…ただ、恋に対してかなり警戒心を抱くようになってしまったので次はもう少しマイルドなのを読みたいですね笑笑(初恋のピュアな感じの小説が信じられなくなってしまっているんですよね…)

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