ある「ギフテッド」当事者の半生(4) どうしてこうなった

〜前項(留学先探し)の続きです〜

6.オーストラリアに着いて

成田を21時半過ぎに出発するブリスベン行きに無事乗り込む。ほぼ定刻の出発のようだ。日本航空とカンタス航空のコードシェア便だが、乗務員も機体もJALのようだった。ブリスベンまで所要9時間弱、時差は日本標準時からマイナス1時間。ここまで長いフライトに乗るのは初めてだった。
 余談だが、当時使用されていたボーイング747-400はエンジンが4機で、現在主流の2発機よりも遥かに騒音がでかい。そのため、ちょくちょく目を覚ました。

飛行機はほぼ定刻にオーストラリア・ブリスベン国際空港に到着。
入国審査の列に並び、パスポートにスタンプを押してもらって到着ロビーへ。
エージェントの人(現地人で日本語話せる)が私の名前を書いた紙を掲げて待ってくれていた。

「初めまして」
『こちらこそ』
「食べ物のコントロール、大変だったでしょう?」
 オーストラリアは食料品の持ち込みが大変厳しいことで有名だ。オーストラリア大陸という他から隔離された独特の生態系を壊さないように厳しくされているのだが、流石に日本で買って機内で飲んでいたポカリスウェットまで放棄するよう言われたのには驚いた。

『ホームステイ先までどれくらいの距離があるんですか?』
「うーん、自動車で1時間くらいかな」

駐車場に停めてある車に荷物を積んで、助手席に乗る。
オーストラリアも日本と同じく右ハンドル・左側通行なので、違和感は全然ない。
あえて言えば、高速道路をみんなかっ飛ばす(120km/hでも遅いくらい)、ラウンドアバウトというロータリー交差点に結構な速度で突っ込んで左側に飛ばされそうになるくらいだ。
乗り物酔いする体質じゃなくてよかった。

ほぼ1時間ほどで、お世話になるソーデンさん宅到着。
ソーデンさん夫婦は60代位だろうか。それから盲導犬になるために育ててる犬2匹、あとは中国上海からの留学生であるリーさん(英名:ルーク)が一緒に待っていた。ルークは1985年生まれだから3歳年上になる。
「Hello」
『Hello, nice to meet you, Sir』
サーを付けると尊敬の念を表す意味になるのはさすが元大英帝国だ。

一通りエージェントさんとソーデン夫妻が会話した後、記念写真を撮った。
その後エージェントさんの連絡先が書いてある名刺を貰い、彼は別の場所へ。

「ここが貴方の部屋よ」
日本風にいうと8畳間程度だろうか、結構広い。エアコンはなく、天井には巨大なファンが付いているのみ。それでも、空気が乾燥してるから案外問題ないとのこと。
 隣の部屋はルークの部屋だ。私の部屋より少し狭いだろうか。
彼には何度も助けられながら、オーストラリア時代の親友となっていくことになる。

荷物を解いたりしているとやがて夕飯どき。
 ボブさん特製の「Sukiyaki」…というが、はっきり言って得体の知れない「何か」だった(笑。その時驚いたのだが、向こうの人はみんな揃って食べるという習慣がない。配膳された順に何も言わずに食べ始める。揃って「いただきます」してから食べる日本との違いをまざまざと見せつけられた。

「君の名前は何て読むんだ?読めないぞ?」…ああ、やっぱり。リーさんは英名を持ってるから良いけど、自分は日本語名しか持っていない。やむなく、発音が似ているが女性の名前である「Keith」と呼んでくれ、と言うしかなかった。

「明日銀行行ってアカウント作らないとね。携帯電話も買わなきゃ不便でしょう?」とスミスさん。ルークは「国際電話の安いプリペイドカード買った方がいいよ、すごく安い」携帯電話から国際電話かけるととてつもない金額になる一方、固定電話は市内一律40セントで、国際電話とかで使ったら40セント硬貨を電話の横に置いてね。とのこと。

 ここまで来て思ったが、あれ?普通に英語話せてるし理解出来てる?と言うことだった。週明けから学校が始まるが、「語学試験があるけど通過できるんじゃないの?」と言われた。もちろん、綴りなんて全然メチャクチャだったわけだが。

夕食を食べ終わると、各自の時間。基本的に現地の人は夜とても早く、9時には就寝する。真夜中まで起きてるのは我々アジア人くらいだ。

そんなかんなでラップトップを広げて日記を書いていると、ドアをノックする音が。開けてみるとルークだった。
「お父さんは何の仕事をしているの?」「兄弟は何人居るの?」「ガールフレンドは居るの?」「好きな俳優は?」みたいな他愛もない話をした。
ルークは一人っ子(中国政府の政策で?)、父上は上海のホテルレストランで料理長をされてるとのこと。ただ、日本人で好きな俳優だと日中では同じ漢字でも読み方が違う。『コウジ・ヤクショが好きだよ』「誰?日本人?」『そうだよ』「うーん、文字で書いて?」「あー!わかった!!」みたいなやりとりをした。
漢字はつくづく便利である。

そんな感じで話しているとすでにPM11時を回っていた。
明日は手続きが色々ある、頑張ろうと思ってベッドで眠るのであった。

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