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柚月裕子「月下のサクラ」

柚月裕子「月下のサクラ」(徳間書店)。「朽ちないサクラ」に続く、米崎県警シリーズ第2弾。徳間書店が総力を挙げて送り出す文藝核弾頭。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B092J6B84X/
 森口泉は米沢県警広報課の事務職を退職した後、改めて県警を受験して、30歳で女性警察官となった変わり種。33歳で知能犯係で刑事となった。事件現場の情報プロファイリングをする機動分析係に異動を希望。試験の結果は難しいと思われたが、個性的かつ強面な黒瀬係長の引きで合格した。配属早々に、署内の金庫から1億円が盗まれる大事件が発生。退職した総務部長に嫌疑がかけられ、泉は抜群の記憶力を認められて黒瀬に重用される。しかし捜査に公安が介入し始めて、事件は国際詐欺事件と思わぬ方向へと発展する。
 信頼できる上司とは。仲間との絆とは。自らの信念とは。滅び腐った日本の警察界に「喝」を与える、機動分析係の結束。「上が言うから」「所詮は潰される」。言い訳ばかりでは負け犬となる。諦めない、食い下がる。過去の失敗への悔悟から、自らを奮い立たせる者の力を示す。これは決して熱血刑事物語ではない。自らの社会への責任をごまかさない、真っ当な人間の覚悟を示した物語である。

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