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鳴神響一「警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 網走サンカヨウ殺人事件」

鳴神響一「警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 網走サンカヨウ殺人事件」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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道東の浦士別川の上流で撲殺されていた、美しい女性カメラマンの南条沙織27歳。事件現場はサンカヨウという美しい花が河岸に咲く秘境であった。迷宮入りした事件に、道警の闇を嗅ぎつけた明智光興警視監。彼から地方特別調査官を命じられた朝倉真冬30歳は事件の隠密捜査を命じられた。現場近くには真冬が学生時代から世話になっていた遠山勇作夫妻の「藻琴山ロッジ」があり、ここを足場に捜査に入る。殉職警察官の娘である真冬は、現場から外されたことに落胆を覚えつつも、新しい任務に就く。そこには地方警察の持つ権力構造の中で隠蔽された悪と不正が隠されていた。
 主人公の朝倉真冬は若く美貌にして複雑な生い立ちを持つ女性。彼女の最大の特徴は、他人の心の痛みが身体的に直感できること。この共有能力が海千山千の道警や網走地元民の捜査に決定的な舵取りを果たす。藻琴山周辺の美しい自然、藻琴山ロッジ夫妻の温かい歓迎、捜査過程で生まれた仄かな恋心。ドラマチックな犯罪解明劇の陰で、筆者が何より伝えたかったのはサンカヨウという花の儚い美しさだったのではないだろうか。

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