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池江璃花子選手の快挙に慟哭

元水泳部員として、競泳日本選手権をテレビ観戦。東京オリンピックが実施される「東京アクアティクスセンター」が会場である。そこで信じられない光景を目にした。女子100mバタフライ決勝。池江璃花子選手が57’77”で優勝。前半は羽根が生えたように翔んでいるのだが、いつもなら病後の体力不足で失速する終盤25m。そこでスピードが落ちず、そのまま逃げ切ってしまった。先頭を切ってゴールに飛び込む姿、そして刻まれた記録を見て慟哭した。五輪標準記録は、100mバタフライ単体こそ切れなかったが、メドレーリレーは突破。本人自身も言っていたが、勝つことと57秒台は「信じられない」アンビリーバブルだった。準決勝は58’48”。0.71秒もの短縮である。競泳で1秒とはほぼ1mの距離を意味する。現在の五輪標準記録は、オリンピックの決勝進出を目処としているので、種目によっては日本記録を上回る。インタビューもリアルタイムで観ていたが、彼女の感激がビビッドに伝わってきて、嗚咽を抑え切れなかった。泳げることの素晴らしさ、自分を支えてくれたスタッフや、「造血幹細胞移植」で回復させてくれた医療関係者への感謝が、彼女の全身全霊から満ち溢れていた。
 思えば2019年はじめから白血病の発症を発表して入院。生きるか死ぬかという闘病生活を経て、先進的治療により競技に復帰。もともとが世界トップスイマーだったから泳ぎも流麗だったが、顔の色は青白く、健康にはち切れていた体格もホッソリしていた(なんと体重15Kg減)。それが泳ぐ度に身体つきが回復し、タイムもズンズン上がってきた。本人自身もパリオリンピックの出場を目指しており、東京オリンピックの出場は視野に入れていなかった。それがまさかの東京オリンピックの出場権を獲得である。どれだけリハビリが苦しかったことか。ましてやその後のトレーニングは、どれほど辛かったことだろう。この快挙は照ノ富士関の大関復帰と並ぶ双璧の人間ドラマだ。現在と先の首相や都知事が「オリンピックの開催こそが、人類がコロナという病に打ち勝つということだ」と言ってみても政治的な意図しか感じないが、池江璃花子の魂からの言葉を聞いていると「オリンピックをやる意味があるんだな」とストンと得心した。世界の妹・池江璃花子選手に心からのお祝いの気持ちを贈りたい。

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