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黒崎視音「六機の特殊 警視庁特殊部隊」

黒崎視音「六機の特殊 警視庁特殊部隊〈新装版〉」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓

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 警視庁キャリアの土岐悟警視は、対テロ部隊SATへの異例の異動を命じられた。警視庁警備部第六機動隊=通称六機、その第四小隊長に無経験のまま任務に就く。手練れの部下を実質の上司として、極限まで体力を鍛え、銃について深く学ぶ。これでもか、ここまでかと言うくらいに本作品ではマニアックに銃について解説する。ハードウェアとしての性能や特性、銃撃方法そのものの基礎とバリエーション。これぞプロと言える戦闘術の奥義である。そして警察は軍隊ではないから、敵を制圧さえすればいいというものでもない。銀行強盗、ハイジャック。対テロ対策の前提として、必ず人質確保は欠かせない。そこで隊員たちは人の命の重みを知る。時には家族や恋人を置いて、自らが生死を彷徨うこともある。

 現場を踏むこと、キャリアであること。一般的には仕事の常道である登龍門が警察の世界では分離されている。現場を踏むことが、将来への迂回となる道を歩むこととなったキャリア組の土岐小隊長。キャリアの中でも決してトップとは言えない彼が経験したテロ部隊の過酷さ。極限までの忍耐と努力を有する。生命のやりとりに備える訓練は半端じゃない。それもそうそう出番があるわけではない。来るべきその時に備えて、来る日も来る日も実戦を想定した訓練を積む。意識が遠くなるほどの毎日に、根本的に人生観が変わる。スキルは現場でこそ磨かれる。絶え間ない努力の先に、上司や部下と固い絆を結ぶだけではなく、世界の叡智とも信頼が結ばれる。世の中でよく言われることは天才と秀才の違い。天賦の才は得難いものだが、往々にして努力は素養を上回る。本作品では同期生の五反田が、泥くさい土岐との好対照であり、価値観の衝突する関係となる。

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