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武尊「ユメノチカラ」

武尊「ユメノチカラ」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CT5741M4/
 読んでいて、これが格闘家の本だとはとても思えなかった。小さな身体、弱った心。いつも自信が持てなくて、明日の自分を憂う。これがK-1チャンピオンの実像なのか。格闘家の本と言えば「俺は強いぞ」「努力で世界一」という自慢話かと思っていた。しかし武尊は違う。弱かった自分を曝け出す武尊。ドロップアウトして、鬱病すら経験した人生。SNS中傷に心を痛め、那須川天心に敗れての謝罪。私たちと同じように悩み、苦しんでいる。そこに大きな親近感を感じる。武尊の成長には、肝っ玉母さんの心の支えがあった。それを素直に聞いて、生きるバネとした武尊の素直さがあったのだろう。それはかつての彼と同じように、挫折した子供たちへの切実な助言だ。悩める若者たちに、自分が立ち直った成功体験を必死に伝えている。
 そして武尊の生きる姿勢に共感する。痛いこと、苦しいことから逃げずに立ち向かってゆく試合運び。目先のお金を追わないことは、MLBの大谷翔平選手と同じ。那須川天心選手とのマッチ実現に向けた努力。ファンが喜ぶ試合を、何よりも心がけている。日本の格闘技をワールドカップにする夢。自分の夢というより、格闘技界の発展をモットーとしている。武尊にとって、自分自身の栄達よりも、格闘技を通じての社会貢献が大切なのである。これは選手というより、格闘技界を背負っての生き様だ。男子、大望を持って世界に輝く。そしてそれは偉人によって為されるのではなく、すぐそばにいる凡才によって実現できることを武尊は証明した。ちなみにスーパーレックとのONEフライ級キックボクシング世界王座戦に判定で敗れた武尊。武尊の試練と挑戦は、生きている限りまだまだ続く。


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