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アーヤと魔女

NHKプラスでスタジオジブリ「アーヤと魔女」を観た。(企画)宮崎駿(監督)宮崎吾郎の親子鷹である。原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズ(「ハウルの動く城」でも原作者)。
https://www6.nhk.or.jp/anime/program/detail.html?i=earwig
 イギリスの孤児院で暮らす10歳の少女アーヤ。誰もが自由にさせてくれる生活は快適だった。しかし孤児院は里親を探す施設。ある日、突然やって来た風変わりな二人の男女に引き取られることになった。女性のベラ・ヤーガは魔女。男性のマンドレークは、気難しい小説家。ベラ・ヤーガからの魔法の伝授を期待したアーニャだが、来る日も来る日も助手としてこき使われてばかり。いくら頼んでも、魔法は教えてくれない。食事時しか顔をみせないマンドレークはいつも「私をわずらわせるな」。しかしアーヤも反撃開始。
 逆境を跳ね返す少女の活躍がテーマである。非常に生き生きとした躍動感。魔法の世界のワクワク感。しかしハスに構えて見れば、ストーリーは原作に沿っているのだろうが、要はこすっからい子供が大人をうまく飼い馴らす話かと、少し後味がよろしくない。エンディングも『えっ、ここで終わるの⁉︎』と思ったが、オープニングを振り返れば『なるほどね』と思わせる秘密の仕掛け。今までの二次元ジブリアニメと違って、3Gアニメも試み。いつもながらの秀抜なジブリ美術。3Gアニメご本家のディズニー映画も凌ぐ鮮やかさ。
 今回の放映の事前にジブリスタッフへのインタビューなどが放映されていた。宮崎吾郎が「3Gアニメにすれば老人が口を出さない」と発言したのにはギョッとした。老人とは自らの父親である宮崎駿氏のことである。これまでも近藤嘉文監督「耳をすませば」や米林昌弘「思い出のマーニー」などの製作時に宮崎駿氏との距離の取り方の難しさは、鈴木敏夫プロデューサーがいろんな場所で語っていた。偉大な父を持つ息子の苦労。長嶋茂雄を父親に持つ長嶋一茂は、野球よりも芸能の場で存在価値を示した。しかし宮崎吾郎監督は、父親と同じ線上で生きている。それがどんなに苦しいことか。息子をボロカスに言いながらも、NHK総合の歳末ゴールデンタイムに枠を確保して舞台を用意する、父親の屈折した愛情も強く感じる放映だった。

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