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窪田順生『潜入 旧統一教会 「解散命令請求」 取材NG最深部の全貌」

窪田順生『潜入 旧統一教会 「解散命令請求」 取材NG最深部の全貌」(徳間書店)。Amazonで総合100位にも入っている話題の書。電子書籍版はこちら↓
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 まさにフィールドワークである。解散命令請求されている旧統一教会が、初めて取材を許したルポである。その取材は既成マスコミと違って、足で歩いて、現地施設の見学や信者の取材も含んでいる。安倍元首相の暗殺事件以来、加害者である山上徹也の立場から旧統一教会への批判報道が相次いだ。しかし日本のテレビや新聞は元信者の声しか伝えておらず、カウンター側にある旧統一教会を取材できていない。それは旧統一教会が正しいかどうかという以前に、明らかに不公正な報道姿勢である。そもそも旧統一教会への批判は、壺の高額販売などずいぶん以前からなされていた。しかしマスコミは、そのような批判に無頓着だった。なぜならそれは日本国民にとっては、他人事であったから。マスコミにとっては、儲けネタにならない記事だったから。ジャニーズ問題におけるように、日本のマスコミは「他人の不幸は自分の幸福」でしかないし、大半は忖度の権化であるから。戦中の取材以降、日本のマスコミは襟を正して恥じた方がいい。特にTBSはノーアポの突撃取材で迷惑だったと信者たちは憤慨している。
 韓国の現地取材や信者の直接ヒアリングを経ただけあって、巷のマスコミ報道とはずいぶん違った内容であった。ある意味で文鮮明と韓鶴子の日韓和合の思想には、集団結婚はともかくとして、頷ける部分がなくもなかった。また旧統一教会の富が教団からだけではなく、リゾート産業や飲料企業を営む統一産業からも持たらされていることを本書で初めて知った。高額献金については、自分はクリスチャンとして伝えたいことがある。自分の通っている教会は、教会員の実質的出資によって建築されている。名義上は上部団体が資金供出しているが、実際は教会員の私財と銀行借入金によって賄われている。それを教会幹部である数人が銀行への連帯保証人となって、教会債を購入している。おそらく1人で1,000万円くらいは出している。こういう資金は上部団体は一切出さない。あくまで教会員の自主的負担である。旧統一教会の高額献金も、私の通っている教会と同じ理屈である。3,000万円の聖本(聖書)を購入することによって、信仰心を充足させている。個人の大切にする価値とは、第三者が決めることではない。むしろ家族に棄教を迫られて、拉致監禁された被害者である信者も数多い。ただ旧統一教会も高額献金する信徒と、その献金によって貧窮する家族を放置していたと問題を捉えている。「世界平和統一家庭連合」という名称に変更したことも、それが理由とのこと。従って、今は10万円を超える献金には本人の署名を必要としている。正直言って本書では「原理」が何かということは理解できなかった。しかし『彼我双方の意見を聞くべし』という著者の主張は、至極もっともなことである。

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