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古溪光大「僕と君と諸行無常と。TikTok 僧侶の幸福論」

古溪光大「僕と君と諸行無常と。TikTok僧侶の幸福論」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CD2H4NP3/
 群馬県安中市の曹洞宗「龍峩山雲門寺」の後継ぎとして生まれた著者は、坊さんの未来に自らの運命を呪ったと言う。仏教大学への進学を避けて中大へ、一般企業である帝人に入社。しかし社会人経験の中で、次第に自分の生き方に物足りなさを覚えて、永平寺に修行に出る。今では得度して、若き僧侶として精力的に活躍中。それも「般若心経 現代語訳 Rapしてみた」を歌舞伎町をバックにYouTube公開、TikTokで仏教の教えやお経の解説、LINEで若者たちの恋愛や人間関係や人生についての悩み相談。四ツ谷「坊主バー」でバーテンダーも務めている。こんな型破りな「ふるたに」ワールドだが、その説くところは、こだわりを捨て、生きることへの感謝。宗教家であるとともに、立派なセラピストとして立っている。
 この本を読んでいて思い浮かんだこととして、僕には1つ歳上の僧侶である従兄がいる。今では福岡県柳川市の浄土真宗のお寺の住職を務めている。リスペクトに値する存在である。この従兄が若き僧侶の時代に、いろいろな社会運動に参加していた。遠く東京に聞こえてくるのは、従兄のラディカルさを案ずる声だった。自分にとっても、歳が近くて、最も親しい親戚だったので心配だった。その後、両親から寺を継いだ従兄は、結婚もして社会的にも落ち着いた印象を受けた。檀家の方々ともご一緒させて頂いたことがあるが、胸襟を開いたおつきあいをされている。お寺で勉強会も開催されているし、展覧会などの催し物も企画されている。境内にピザ窯やカフェを併設して、地域交流にも務めている。この本の著者である古溪光大こと「ふるたに」も、当初はずいぶんと周囲から非難轟々だったそうだ。しかし真心を持って接していれば、周囲も自然に認めて受け入れてゆく。従兄の場合もそうだったのだろう。若い頃の意欲や試みは、創造性の発露である。著者はまだ30歳前だそうが、従兄のように実りある僧侶生活を送って頂きたい。


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