見出し画像

オンデマンド出版の限界

今の業務とは直接タッチしないが、かつての自分の経歴を振り返って『う〜ん』と唸るメールが来た。それは「コミックパーク」サービス終了のお知らせだった。「コミックパーク」は漫画に特化したオンデマンド出版サービスだった。オンデマンド出版とは在庫を持たずに、原本のスキャンデータをデジタル印刷して出荷する出版事業。実は自分は日販の子会社である「ブッキング」を1999年に立ち上げて、日本で最初のオンデマンド出版サービスを始めた責任者だった。米国でイングラムという取次会社が始めた事業を、日本IBMが持って帰ってきた案件を、多くの出版社の出資を募って始めた。当時の狙いは専門書のオンデマンド出版だった。

 しかし実際には専門書よりも漫画の復刻需要が多かったことから、ブッキングはこれまで出版業界の主流であったオフセット印刷による漫画の復刊にシフトした。「コミックパーク」はゼロックスが出資したコンテンツワークスによって運営を開始した。漫画に特化したオンデマンド出版サービスだった。なかなか良く売れるコンテンツも発掘して、ブッキングにとっては強力なライバルだった。しかしながらオンデマンド出版はそんなに儲かる事業ではなかったので、双方で手を組む模索をした。ブッキングで扱っていない漫画は、コミックパークにリンク誘導して商品提供するようにした。コンテンツの共有も検討した(これは先方の株主である大手版元の意向で実現しなかった)。

荻野社長とは社長どうしでずいぶん漫画復刻協業に向けて話し合っただけに残念だ。コンテンツワークスも漫画よりも自費出版の写真アルバムの方が儲かるそうで、企業体維持のためにはやむを得ない選択だったのだろう。自分の実感としては、オンデマンド出版というサービスが、復刻というソリューションにおいて、電子書籍という手段に敗れたということと解釈している。印刷製本費がかかるという点で、オンデマンド出版は電子書籍に頒価の点でビハインドを負った。

画像1

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?