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貴ノ富士に見る第二の人生

 9月場所の余韻がまだ覚めやらぬ今日この頃だが、引退力士の活躍の一報が入った。大相撲の元十両貴ノ富士のスダリオ剛(23)が、総合格闘技MMAデビュー戦を白星で飾った。対戦相手は、全日本やゼロワンで活躍してきたプロレスラーのディラン・ジェイムス(29=ニュージーランド)と120キロ契約3分3回で対戦。ゴングから積極的にパンチ、ローキックを放ち、膝蹴りをジェイムスの頭部に浴びせ、同回終了時にドクターストップによるTKOで勝利。引退後、体重を50kg絞り、ヘビー級での活躍を目指してきたそうだ。
 スダリオ剛は、貴乃花部屋に誕生した、貴源治との角界初の双子関取として話題となった。最初は貴公俊という四股名で、後に貴ノ富士と改めた。若くして関取に昇進し、抜群の運動神経に、将来を期待する角界関係者も多かった。しかし昨年9月に付け人への2度目の暴力行為が発覚し、引退を余儀なくされた。協会からの引退勧告時には、裁判所に地位保全の訴えも起こしたが、認められなかった。彼の起こした事件で、日馬富士の貴ノ岩に対する暴力事件を抗議していた貴乃花親方まで廃業に追い込まれ、貴ノ富士に対するイメージはすごく悪かった。若い身空で、暴力力士の汚名をまとい、その後の処遇が心配だった。
 力士は日本相撲協会に残って年寄となれれば万々歳。年収も高く、参与として70歳まで働ける。しかし年寄株の取得には関取在任期間の資格や、億単位の投資が必要。既得権益との兼ね合いで、公益財団法人化の際ですら後者は改まらなかった。幕内力士の60%がこの道に進む。従って年寄になれなかった力士の引退後は、自力で生活を支えてゆかねばならない。角界以外への進路の大半は、ちゃんこ店に代表される飲食業。これで18%。野球賭博で解雇された貴闘力は焼肉屋チェーンを展開。その次がグッと少なくなるが、接骨院を含むスポーツ関係医療やトレーナー。これで4%。贔屓だった阿武松部屋の阿夢露や鐵雄山も、この道を進んだ。目立つのは、若いうちなら格闘技への転向。古くは力動山や東富士や天龍から、輪島や曙や北尾に至るまで、リングで活躍した。貴ノ富士だったスダリオ剛は、久しぶりにリングに進んだ人材だった。第二の人生を充実して送って欲しい。
https://www.nikkansports.com/battle/news/202009270000515.html

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