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たつの市という魔境に行った話

私の上下の歯は、がちがちと音を立てて震えていた。時折、外気温との差で白く曇った呼気がその歯の間を抜けるのが見えた。間断なく吹き付ける前から、横からの強風は無慈悲にも私の体力を奪う。

―――早くしないと、死んでしまう。…

そう頭をよぎった。

確か、「凍死」という死に方は厳密には存在しなかった筈だ。低体温症による循環障害、またはショック死。…人は死を目前にした時、そんな危機感のない事を考えるのか…薄れゆく意識の中でそんなぼんやりとした思考が頭を支配していた。


・・・

話は2週間前、とあるとても仲良しの後輩とお酒を飲んでいたときの話。

ぼく「兵庫に住んでもうおよそ10年じゃ。第二の故郷になってしもたよ。」

後輩「確かにそうですね。僕も神戸にきてもう長いですし、あんまり故郷のこととか考えなくなりましたね」

ぼく「やっぱり?兵庫県の市はそろそろ全部言えるわ。」

後輩「いや嘘やめてください」

ぼく「あのなぁ、こう見えても俺はその道のプロじゃで?地理関係の問題についt」

後輩「じゃあ言ってみてください?」

ぼく「えーと、神戸市と、姫路市、赤穂市…」

10分後

ぼく「あと川西市と、なんかあったっけ?」

後輩「残念、あと一つの市が言えなかった!」

ぼく「えー…」


こうしてたつの市への日帰り旅行の火蓋が切って落とされた!

(完全に自業自得である。)


まぁ、実際行ってみてとてもいいところだなと感じたので写真と共に感想をお届けしようと思います。

ちなみに、僕の家からたつの市の市街地まで、スクーターで片道2時間半かかりました。「ショーシャンクの空に」が2回観られるじゃないの…。

なんか、たつの市って実は美観保護地区みたいなものらしく、昔の龍野城があった周辺の城下町は古い景観を保全しているエリアであったようです。何のあてもなくたつの市まで来てしまったのに、いきなり当たりの場所に来ました。

昔の建築を残したまま、和モダンな外装を施したシャレオツなショットバー。何枚か写真を撮ろうとしたところここから少年が出てきたので気まずくなり立ち去りました。お客さ…いや、このおうちの息子さんでしょうね。伸び伸びと育ってほしいものです。

龍野城跡。残念ながら天守閣は無く、物見櫓めいた何某があるのみでしたが。それでも立派な面構えですね。

城跡にはなんと梅園、そしてお寺がありました。広角レンズを持ってきていて正解。なかなかきれいに撮れました。

梅の時期が丁度被っていたのもあり、匂梅の馥郁とした香りを鼻腔いっぱいに閉じ込めることができました。要するに、とてもいい匂いでした(小並感)。いやでも梅の花って思ったより香るもんなんですね。日本人は桜だーとか言いますが、梅も乙なものです。

古都には銘菓が欠かせない。たつのにも「ひしお饅頭」という銘菓がありました。ひしお、とは「醤」、つまり醤油の風味のお饅頭です。湯気がジュワジュワ漏れている籠を開けるとほのかな醤油の香りが食欲をそそり、ふんわりとしたお饅頭をあつあつのままガブリと頬張ると、どこか懐かしい味に心が小学校時代にトリップしていくようです。

まぁ、食べてないですけどね。(想像で書きました)


あと、たつの市といえば「赤とんぼ」の作詞家でお馴染みの三木露風氏が生まれ育った地であるというのはあまりにも有名なことです(私は知らなんだ)。龍野公園すぐのところに霞城館(かじょうかん)という、三木露風や矢野勘治を記念して作った資料館があり、200円という破格で見て回ることができます。きのこの山を一箱我慢したら入れるんだよ、ねぇお坊ちゃん…。

(資料館のため、写真はありません)


・・・

そしてたつの市を満喫した私は、寒風が吹く中2時間半かけて(通勤ラッシュで3時間くらいかかったと思う)、青息吐息で帰りましたとさ。

(この記事の枕の文章とまではいかないですが、やはり寒さは敵です。私の場合、バイクグローブがなまじ保温性に優れていたためか、剣道の小手のように汗を吸い込んでしまい、手がめちゃめちゃ臭くなるという悲惨な事態となりました。ファ○ク♥)

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