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【ネタバレ】『笑うハーレキン』(道尾秀介)②―"ハーレキン"って一体何なのか?

前回の記事を読んでいない方は、是非そちらをご覧いただければ嬉しいです。別に、読まなくても大丈夫です。お好きにしていただけるのが一番ですからね。


さて、今日は氏の作品『笑うハーレキン』の核心に迫るテーマを紹介できればと考えております。

再度あらすじ(ネタバレ含)

あいつはいつも、ここにいる。
経営していた会社も家族も失った家具職人の「東口」。
川辺の空き地で仲間と暮らす彼の悩みは、アイツにつきまとわれていることだった。
そこへ転がり込んできた謎の女「奈々恵」。
川底に沈む遺体と、奇妙な家具の修理依頼。
迫りくる危険とアイツから、逃れることができるのか?
「道尾秀介」が贈る、たくらみとエールに満ちた傑作長篇。

作品の序盤で、東口がなぜホームレスになったかという事が描かれます。ざっ要約すると、「大手取引先の社長の計画的倒産」「最愛の息子の事故死」「妻との離婚」です。
全てがバラバラのようで、実は繋がっている要素は大きいのです。
大手取引先の社長が東口の離婚した妻と深い仲で、息子の死は東口が家庭を顧みない結果の事故死だったのです。つまり、全ては主人公である東口が招いた『怠慢』によるものでした。

その後、奈々恵が本当はどのような人物であったかということが分かり、結末に向けた怒涛の展開が待っているのですが、私は正直この辺りは「ふーん」程度に読んでました。すみません。笑

ですが、この序盤の東口がホームレスになった理由というのが、なんともまあ心に響くものがあるなぁと。前回でも紹介しましたが、登場人物の心の陰影というものが深いと感じます。

ハーレキンとは?

Harlequin
ハーレキン,(イタリアで)アルレッキーノ,(フランスで)アルルカン(◇まだらのタイツをはいた中世無言劇などの道化役)

goo英語辞書にはこのように載っておりました。
少し表記の揺らぎを直して検索したところ、

アルレッキーノ (Arlecchino) はイタリアの即興喜劇コメディア・デラルテ中のキャラクターの一つで、トリックスター。ひし形の模様のついた衣裳で全身を包み、ずる賢く、人気者として登場することが多い。国によっては、アルルカン(仏: Arlequin)、ハーレクイン(英: Harlequin)とも呼ばれる。欧米では道化役者の代名詞となっており、芸術作品の中では、ピカソの「アルルカン」、チャップリンの「ライムライト」、ロベルト・ベニーニの映画「ピノッキオ」のマリオネット、アンデルセンの短編小説集「絵のない絵本」の第十六夜、ブゾーニのオペラ「アルレッキーノ」などに登場する。

Wikipediaにはこのように書いております。

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道化師と呼ばれることが多いこのキャラクターは、ピエロともジョーカーとも呼ばれますね。ハーレキンという言葉自体は、仮面を使った即興劇のキャラクターのようです。

そう、この「仮面」というのが、物語の核になるものだと考えます。
ヒロインの奈々恵も、主人公の東口も、その他の周りの人物たちも皆本来の自分とは異なるキャラクターを演じています。
それは、自分の本性や正体を知られてしまうということに対しての恐怖を抱えているということだとも言えます。

これもネタバレですが、奈々恵は実は世界中を旅していたという嘘をついていて、本当は自宅で箱入り娘として育てられていました。
しかし、自分を変えたいという一心で、それを偽ってホームレスのコミュニティに入り込みます。
途中で奈々恵は自分の嘘がきっかけで、とある人物をどん底に突き落とすのですが、嘘をついてしまったことに対する後悔の念に苛まれてしまいます。
また、ホームレス仲間たちも、いざ表に出るとなった際はまともな服を着て社会的な立ち回りをしたり、仲間たちの本名を敢えて知ろうとしなかったりと、本性を知られてしまうことを怖がる場面が出てきます。

ハーレキン(宮廷道化師)は常に笑顔の仮面なのですが、その下では自分の存在であったり恐怖であったりと常に対峙しているという象徴であるかのように、この作品では描かれます。

そして、主人公の東口がいつからか見えるようになっていた疫病神は、人々の裏の顔を見透かすナビゲーターのような立ち回りをします。

最終的に、ヒロインの奈々恵が全ての秘密を吐露して疑いを晴らした結果、疫病神は消えてしまうのですが、
これによりあることがわかります。

疫病神という存在は、主人公の東口の過去の執念や未練の塊が具現化したものだったのです。
ストーリーの中で、東口が自分の過去(会社の倒産や妻・息子との離別)と決別するという過程を経ることで成長するということを、垣間見ることができるのです。

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この辺りは、作品の中で直接触れていなかったので是非書かせていただければと思いました。
もし間違っている箇所のご指摘や、こういった考え方もあるよねというご意見があればコメントお待ちしております。

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