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2023-24年イベリア半島周遊その2(リスボン2日目)

 2日目は朝から郊外のシントラへ向かう。宮殿や山々が「シントラの文化的景観」として世界文化遺産に登録されている他、ユーラシア大陸最西端として有名なロカ岬への起点としても知られている。筆者はどちらかといえば後者が目当てだったが、前者も魅力十分な観光地だ。

 シントラに移動する前に、早朝のリスボンを少しぶらつく。学生時代は町歩きというものの楽しさをイマイチ理解できていなかったが、最近ようやく理解できるようになってきた気がする。

朝のテージョ川。海に見えるが実は川。
コメルシオ広場にそびえるアルコ・デ・ラ・アウグスタ(勝利の門)。最上部が展望台になっているらしい(見逃した)。

 ロシオ駅に戻り、シントラ行きの電車に乗り込む。ヨーロッパの大きな駅は空間を贅沢に使ったホームが多く、歩いているだけで旅情がある。電車はめちゃくちゃ落書きされてるけど。

タイル張りが美しいロシオ駅。
シントラまでは40分程度。
駅の近くから早速かわいらしい建物が見える。

 シントラの見どころはシントラ宮殿、ペーナ宮殿、レガレイラ宮殿、ムーアの城跡あたりが主要なものとなるが、これらは互いにそれなりの距離があり、バスで回るのが定石だ。だが、せっかくポルトガルまで来たということで町歩きを楽しみたかった筆者は、一旦ムーアの城跡まで歩くことにした。シントラを歩き回って分かったことは、この町はアップダウンが想像以上に激しい上に、山がそれぞれの見どころを隔てており、全行程を徒歩にするのはそれなりの体力が必要かつ時間もかかるということだ。実際、筆者は最初にムーアの城跡を目指したが、なぜか裏道から突入する羽目になり、岩屋城以来の山登りを強いられてしまった。
 
 ムーアの城跡は、その名の通りムーア人(北アフリカのイスラーム教徒)によって7~8世紀頃に建てられた城塞で、現在はその城壁のみが残っている。この城壁自体がそれなりに高い場所に築かれている上、周囲には平野・丘陵地帯が広がっているためなかなかの眺めだ。

本当に道が合っているのか不安になり始めたところで突然出現した城壁。
ムーアの城跡からの眺め。
しばらくすると霧が出てきてしまった。

 ムーアの城跡から山を下ること20分、いよいよペーナ宮殿のお出ましだ。シントラのメイン観光地とあって、チケット売り場は大変な賑わいだった。筆者はリスボンカードと併せて予約購入済みだったので、すんなり入場できた。敷地内を進んでいくと、旅行雑誌などでよく見るカラフルな建物が見えてくる。19世紀にフェルナンド2世によって建てられたこの宮殿は、複数の建築様式を取り入れた極めて独創的な装飾をしている。これに加えて色使いもかなり派手なため、まるでテーマパークにある作り物の宮殿ように見えるが、王政廃止のその時まで使用されていた、れっきとした王宮である。まぁ人工物という意味では「作り物」ではあるのだが。

ペーナ宮殿。めちゃくちゃ霧がかかっている。
テーマパーク感があるが、ホンモノ(?)の宮殿だ。

 ペーナ宮殿は内部も見学することができる。入場は時間で区切られており、指定の時間に列に並べばよいのだが、これがなかなか長蛇の列で、ポルトガルの観光立国としての強さを感じてしまった。

美しい中庭。回廊をご覧いただければ分かるように、かなりの数の観光客が押し寄せている。
調度品の中には中華趣味っぽいものも多く含まれており、近世ヨーロッパを感じる。
近くで見ていたおばちゃんが「これトイレ?」と言うぐらいにはちっちゃすぎるバスタブ。
中庭2階から時計塔を臨む。
もはやどこが開くのかよくわからない机。
独特な燭台。
結局霧が晴れることはなかった。

 ペーナ宮殿を離れ、再び山を越えて一旦中心街に戻る。この道中、ペーナ宮殿を目指して山道を歩く日本人の親子に出会った。今回の旅では3か国9都市を巡ったが、日本人観光客が一番多かったのはポルトガルだった。スペインに比べればマイナーなイメージがあったので意外な発見だ。

再び山道をゆく。
一応バス路線はこんな感じだが、時間は読めない。

 中心街のカフェで一服し、ロカ岬行きのバスに乗り込む。なお、レガレイラ宮殿には時間の都合上結局行くことができなかった。ちょうどこの数日前、ホープフルステークスでレガレイラ(馬名の由来もまさにこの宮殿だ)が優勝したところだったので、是非行っておきたかったのだが……。また来る理由ができてしまった。最初からバスに乗っておけばよかっただけでは?

 曲がりくねった山と海沿いの丘を越え、遂にロカ岬にやってきた。言わずと知れた、ユーラシア大陸最西端だ。いわゆる極東と呼ばれる地に住む自分が、ユーラシア大陸の西端に行く、というのは何だか不思議な感覚だ。随分遠くまで来たようにも思ったが、かつてリスボンを訪れた天正遣欧少年使節の面々は長崎から船で2年半かけてやってきたわけで、それに比べれば便利な時代になったものだな、などと考えながら例のモニュメントを目指して歩く。「ここに地終わり海始まる」の文句で有名なモニュメントだ。

有名なモニュメント。
雲の切れ間から光が差し込み神々しい感じに。
この向こうに新大陸がある。
"ここに地終わり海始まる"

 ロカ岬はモニュメントと最西端到達証明書を発行してくれる事務所、それにトイレ以外には何もない場所だ。まぁ岬ってそんなものなのかもしれない。だが、言葉にできない感動がそこにはある。
 なお、各ガイドブックには403番バスでアクセス可能とされている場合があるが、この路線はどうやら廃止されたようで、現在は1253番、もしくは1624番バスがロカ岬行きの路線となっている。筆者もこちらのnoteを参考にさせていただいた。この場を借りてお礼申し上げる。

 ロカ岬からシントラ駅まで戻り、そのまま電車でリスボン市内に帰還。リスボンに着いた頃には既に日が暮れており夜景がきれいな時間帯になっっていた。

リスボンの夜景。

 夕食を求めて市街地を放浪し、色々と見て回った結果この日もシーフードにすることにした。Bessaという名前のレストランで、Googleレビュー1000件で4.8をマークしていたので気になって入店したが、その評価に違わぬおいしさだった。しかもメイン+パン+ワイン1杯で3600円。この大インフレ下の欧州にあってはなかなかの破格といえる。リスボンに行った際は是非試してみてほしい。

タコ料理。かなり柔らかくなるまで煮込んであり、美味。
食後酒としてジンジーニャ(サクランボのお酒)をサービスしてもらった。
Bessa外観。リスボンに行った際は是非。
店から出るとマラソン大会が始まっており、沿道は大盛り上がりだった。

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