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日記#02│朝一の取材

朝9:00に取材が入った。いつもはできるかぎり午後に予定を入れているので、緊張が走る。ふだんから朝7:00には起きているので「起きられない」心配はないんだけれど、「準備が間に合うかどうか」と「頭が回るかどうか」が不安だった。

朝から午前にかけて、ふだんは部屋着&すっぴんで仕事をしている。集中力が切れたところで、昼飯を食べたり、化粧をしたり、時にはシャワーを浴びたりする。だから自分が人前に出られる状態になるまでに何分必要なのか、把握していない。

そして私の脳が一番活性化しているのは、たぶん午後2:00から夕方にかけてだ。その時間帯は原稿がはかどるし、取材もぽんぽん質問できる。そこに一定の自信があるからこそ、朝9:00取材の重荷が増す。

朝6:00にアラームをセットした。そのまま二度寝しないよう、起きがけに寝室の窓を開ける。お、今日涼しいじゃん、と驚く。ついこの前まで、札幌は猛暑に見舞われていた。いつの間にかピークは過ぎ去ったらしく、私の好きな北海道らしいひんやりとした空気が部屋に流れた。

ストレッチをしてシャワーを浴びて、化粧をして。ふだん意識せず気分でやっていることを、ぎゅっと詰め込んで消化していく。結局、7:00になる前に諸々は終わった。

取材自体も、滞りなく進められた。冴えた質問ができたかといえば微妙だけれど、いつもとそれほど違いはなかったはず。相手の言葉を汲み取りながら記事の完成形を想像できたし、きっといい記事にできると思う。

なんだ、やってみたら意外とできるじゃん。ホッとしたけれど、じゃあこれからも朝一の予定を積極的に入れるかと問われれば、たぶんできるかぎり避けるだろう。

働き方の自由度が非常に高いWebライターという仕事について、はや6年。いつの間にか、会社で勤めていた年数をこえた。自由というものは、はじめこそ新鮮で特別感があったものだけれど、今となっては自分の怠惰さをまざまざと感じるので、すこしルールや束縛を懐かしくも思う。

「まじでだりい」とまぶたをこすりながら、毎朝満員電車に乗っていた日々。戻りたいとはこれっぽっちも思わないけれど、あれはあれで時間を無駄にしないコルセットを装着していたのだろう。悪くないプロポーションだったと思う。

今はずいぶんとたるんだ生活をしている。もちろん仕事は一生懸命やっている。けれど休めるなら休みたいし、ときどきエンジンがかからなくてぐったりと過ごしてしまう。誰も見ていないと、人はだらける。

“くそまじめ”だと自負していたけれど、誰の目もなければ結局頑張らない。朝の時間を有効活用して目をキラキラさせていた頃もあるが、あれは沸き起こる意思じゃなくて、周りから褒められたいという別の欲求の賜物だろう。

そういう無自覚な「自分の意思ではない努力」が、結果として誰かの役に立ったり、素晴らしい成果につながったりもする。だから無自覚なまま、誰かがつくった規律や監視のなかで精一杯頑張っていたほうが、パフォーマンスは発揮できるのかもしれない。

どっちが幸せかは人によるだろう。じゃあ、私は。

朝9:00の取材が終わったあと、気が抜けてベッドに横たわった。朝開け放った窓からは陽光がさしこんで、カーテンをふわふわと揺らしている。虫の声が、鳥の声に切り替わった。そうか、この時間に切り替わるのか。あんまり意識していなかったな。発見だ。

こういう時間が好きだ。それが私の意思なんだ。だから私は、誰かから束縛されることのない働き方を選んだ。朝一の取材がくれた「朝でも働ける」という発見をなにひとつ活かさないまま、私はまた明日からもすこし怠惰で、好きな時間を愛でる働き方を選ぶんだろう。

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