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何のためのサプリ?;ビタミンサプリは本当に病気を予防できるのか?

この記事で言いたいこと

 アメリカ人の約30%、日本人の20%~30%はなんらかのサプリメントを摂取している世の中だそうです。
 さて、何のために、サプリメントを摂取しているのでしょうか?おそらくその大部分の方は、疾病予防などなんらかの健康効果を期待して服用しているのだと思います。

 理論的に、マルチビタミンを摂取すれば、血中ビタミンの濃度上昇を介したフリーラジカルや酸化ストレスの抑制、免疫能の強化などによって、がんや心血管疾患の予防が期待されるかもしれません。

しかし、 抗酸化作用があるとされているβカロテンやビタミンEのサプリメントの摂取は、不利益が利益を上回っている明らかな証拠があり、米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、がんまたは心血管疾患の予防のために、これらの摂取を「推奨しない」と改めて発表しています。

また、その他のビタミンを含むマルチビタミンについても、疾病予防などの効果があるのか否かについての根拠は薄弱です。

 そのような中、アメリカ人の比較的リスクのある高齢者(平均72才、高血圧58%、糖尿病13%、スタチン・アスピリン服薬が各40%)を対象に、マルチビタミンの効果の有無を検証した論文が発表されていました。

 サプリメントについて考えるよい機会と考え、この質の高い大規模な研究を題材に勉強をしてみました。

 サプリメントを摂取されている方、摂取するか否かついて検討されている方などへの参考になれば嬉しいです。

関連論文の紹介

 今回も権威ある栄養学ジャーナルであるThe American journal of clinical nutritionの新しい刊に掲載されていた論文を紹介します;

「 Multivitamins in the prevention of cancer and cardiovascular disease: the COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study (COSMOS) randomized clinical trial 」 written by Sesso HD, et al. Am J Clin Nutr. 2022 Jun 7;115(6):1501-1510. doi: 10.1093/ajcn/nqac056.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35294969/

癌と心血管疾患の予防におけるマルチビタミン:COcoaサプリメントとマルチビタミンアウトカム研究(COSMOS)ランダム化臨床試験」の効果を調べた研究です。

 この研究は、タイトルに示されているように、マルチビタミンだけでなく、 COcoaサプリメントの効果も同時に検証していますが、本論文ではマルチビタミンの効果についてのみ検証されました( COcoaサプリメントの効果は、別の論文に発表されています)。

 研究対象者、条件をクリアした21,442名の比較的リスクの高いアメリカ人高齢者(平均72歳、90%白人、約60%高血圧、約13%糖尿病、約42%スタチン内服、約49%アスピリン内服、約17%がんの既往)でした。

 研究対象者を、マルチビタミンまたはプラセボ(偽の錠剤)のいずれかを毎日飲むグループに割り付け、平均3.6年の追跡期間後の、がんや心血管疾患などの病気発症率が2群の間で違いがあるのかを比較しました。

その結果、残念ながら、がんの発症率および死亡率は、マルチビタミン群とプラセボ群の間で間でまったく変わりませんでした。つまり、マルチビタミンの効果はなかったということです。がんの部位別に発症率を検証すると、乳がん、大腸がん、前立腺がん、皮膚がんなどでも同様に、2群の間のがん発症率はまったく変わりませんでした。しかし、肺がん発症率についてのみ、マルチビタミン群で平均38%の抑制効果がみられていました。

次に、心血管疾患の発症率および死亡率についても、マルチビタミン群の効果は認められませんでした。さらに、心臓病、脳卒中、頚動脈硬化性疾患、各治療歴別などに分けて解析をしても、まったく2つの群間で発症率が変わりませんでした。

 ただし、この研究の観察期間は平均3.6年と、がんや心血管疾患への影響を調べるためにはやや短いのかもしれません。また、対象者は、比較的リスクの高い白人高齢者が主体であり、未病の若年から中年者にはあてはまらない可能性があります。

※この記事は、論文内容をかなり端折っていますので、興味のある方は本文にアクセスして確認されてくださいね。

ワタシの感想

 これまでの専門機関から出ているサプリメントに関する提言や、本研究結果を踏まえますと、現時点ではサプリメントに過度な疾病予防を期待しないほうよいのではないかと思います。

 そもそもサプリメント( supplement )というのは、補完や補足という意味ですので(追加という意味もありますが)、日常の食生活で十分に補給できない栄養素に狙いを定めて摂取すべきもののような気がします。例えば、若い女性の葉酸のサプリメント、鉄欠乏性貧血予防のための適量の鉄サプリメントは、ワタシも奨めたほうが良いのではないかという意見に賛成です。

 ワタシ自身は、これまでサプリメントを利用した経験はありません。サプリメントに使用する経費を、日常の食生活で不足しがちな魚、野菜、果物、雑穀、種実などの購入費に使用したほうが、食生活が豊かになると感じているからです。さらに、良好な食生活が健康増進や疾病予防および改善に最も近道であることは、多くの科学的論文によって支持されています。

 サプリメントを使用することのメリットもあるとは思いますが、まずは日常の食生活を振り返ってみることが、健康増進や疾病予防および改善に最も近道であろうと思われます。

さいごまでお読みいただきありがとうございました。

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