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古田 亘さんがラジオ番組に出演しました。

「YABUSAME」の作者、古田亘さんが7月28日に「湘南ビーチFM」の人気番組「DAILY ZUSHI HAYAMA」にご出演。番組パーソナリティの森川いつみさんをお相手に「YABUSAME」の撮影秘話などを詳しくお話しいたしました。関係者さまのご許可をいただき、内容をこちらに再録させていただきます。

衝撃的だった、流鏑馬との出会い

森川いつみ(以下、M) : 写真家でアートディレクターでいらっしゃいます、古田亘さんです。以前ご出演いただいてから、もう5年ですね。古田さんは映画のプロデューサーなども手掛けていらっしゃったこともあったんですけども、2016年からは個展、写真集の刊行も始められました。主な写真集に「少年と海」。これが前回ご出演いただいた葉山の海と少年たちの写真集で、それから「GREEN GATE」「イスラエル」「小松準也 君」などがあります。2016年にはJPS日本写真家協会で優秀賞も受賞していらっしゃいます。このたびは写真集「YABUSAME」が電子書籍で刊行となりました。流鏑馬をテーマにしたというのは、どういったところからなんでしょうか?

古田 亘(以下、F) : 4年ぐらい前から流鏑馬を撮っていまして、鎌倉の鶴岡八幡宮さまで行われている春の「鎌倉まつり」や、秋の逗子海岸で流鏑馬披露をされている武田流の皆さんに許可をいただいて、一部のツアーに同行して撮り続けています。それをまとめた形で写真集にしたんですが、本来であれば今年「オリンピック・パラリンピック競技大会 安全祈願流鏑馬」というのが予定されていたんですね。それが中止されることになって、このご時世もあっていろんなイベントが中止になる中で、流鏑馬も全くできないと。であれば、このタイミングで流鏑馬を写真集にして出すことで何か貢献できないかな、と思ったのがきっかけで刊行いたしました。

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M : 2016年の鶴岡八幡宮の流鏑馬神事からということで、すっかり流鏑馬の虜になったと。

F : そうですね。最初は全然撮影する気がなくて、たまたま知り合いに誘っていただいて家族で見に行ったんですけども、当初はカメラも持っていってなくて…。妻に「なんで持っていかないの?」って言われたんですね。あ、そうか持っていかないとな、カメラマンだし、と思って持っていったんですね。そこで生まれて初めて流鏑馬を見て。衝撃を受けて。かっこよさに。これはもっともっと撮ってみたいなと思うようになって。で、鎌倉まつりを主宰されている鎌倉市観光協会さんを通して、武田流の大日本弓馬会さんをご紹介いただいてお願いに行って、同行させてもらえないかと。で、写真を撮り始めたという形です。

M : 私もほぼ毎年、逗子海岸の流鏑馬を見に行っていて。皆さん、やはりカメラ持った方たちが多くおられてカメラを構えていて、私もなんとかこう撮ろうとするんですけど、なかなかこう上手く撮れない…。

F : そうですよね。速いですしね。あっという間なんですよね。僕も一番最初に流鏑馬見たときに、あっという間に終わっちゃうというのがけっこう衝撃的で。もっと古風なものをイメージしていたんですよね。もっと緩やかな。悪く言えば間延びしたような、なんかそういうものを意識していたんですけども、行ってみたらあっという間に始まってあっという間に終わっていくという、すごい刹那な感じが、逆に心に残ったという所があって、ぜひ写真に撮ってみたいなと思ったんです。

M : 電子書籍写真集の方、拝見させていただいたんですけども、馬と射手の俊敏な動きというか、それが鮮やかに正に目の前に流鏑馬が行われているような、そんな雰囲気がしたんですけども。撮影された流鏑馬神事というのは鎌倉だけではないですよね?

F : そうですね。鎌倉の鶴岡八幡宮、京都の上賀茂神社、東京の明治神宮、それと横浜にある神奈川県庁前に日本大通という公道があるんですが、そこに特別に特設馬場を作った特設会場があって、その4箇所です。

M : 時期としましては最近の流鏑馬神事、ここ4、5年くらいの?

F : そうですね。

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撮ろうとしたものは、奥にある何か

M : 今回の写真集はフォトストーリーになっているということなんですが、どのような?

F : これは僕が付けたんではなくて、編集の方がそう表現してくださったんです。でも、これはキモかもしれないなと客観的に気づかされました。もともと僕は小さい頃から物事の成り立ちの理由とか、なんでこれはここにあるのかな、っていうそういうものを悶々と考えるようなことがあって、そういうことが好きなんですね、何かの理由を考えるということが。流鏑馬を見に行ったときに思ったのは、なぜこの儀式がこれだけの熱狂を生んで、1000年ぐらいの歴史がある、この魅力の秘密は何なんだろうと思って撮り始めたんだと思うんですね。他に、海だとか森だとか、イスラエルも撮っているんですけど、なんかそういうもの、ひとつの物事の奥にある何かを捉えようとしているのかなと、フォトストーリーと言われたときに気づかされました。僕はこの流鏑馬の奥にある何か物語とか歴史とか、そういうものをひっくるめて撮ろうとした、そういうことが表現になったのかなと感じました。

M : 流鏑馬というと疾駆する馬上から左横に置かれた的を射る神事、ということなんですが、改めてその意味をひもといてみますと、流鏑馬は単に武芸を競うものではなくて天下太平、五穀豊穣を祈念して的を射る精神性の高い祭事であると。厳しい修行を積んだ者だけが流鏑馬の射手になることができる、ということなんですね。

F : お祈りなんですよね。だから本当は、こういう今のような時期にやるべき行事なんですよ。皆の無事を祈って、健康に過ごせるように祈る祭事なんですけど。それが今はちょっとできない。残念ですよね。

M : 古田さんの作品を見ていきますと、観客には観られない部分、準備段階なども表現されているんですけれども、特に撮影されている中で知ったこととかエピソードなどがあれば教えていただきたいんですが。

F : 準備段階から入らせていただいて、装束をつけるところから撮っているんですけど、かなりいろんな物をつけるんですよ、衣装がね。着物みたいのを着ていて、その上に皮のスカートみたいな、ちょっと名前は分からないんですが、それをこう腰に巻いたりして、その上にまた何かをつけて何かをして、と、ひとりではとても着られない武具があったりして、手伝ってもらって着るんですよね。それでも30分くらい。そこまで大仰にして着ているのに、射手の方たちは割とすーっとして。皆さん馬上で、かなり重いと思うんですけど。その姿勢というか所作がすごいなと思って。あんなに飄々としていられるものなのかなと。それがひとつ。

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あと京都の上賀茂神社でやった時に、神事が終わった後に交流会があったんですよね。そこに来ている観客の方と射手の方たちが話す時間が設けられていて、その時に皆さん、射手の皆さんが笑っていたんですよ(上の写真。古田さん撮影)。行事の中で笑っていらっしゃることは絶対にないのでビックリして。あ、笑うんだ! この人たち! ってすごく新鮮で。皆さんすごくいいお兄さん、お姉さんばかりで、良い人たちで。最初、観客の人たちも遠巻きに見ていて、話してもいいですよってアナウンスが入っても、なかなか近くに寄れないんですね。射手の皆さんはあの雰囲気ですから。でも、だんだんだんだん外国の方たちも近づいてきて、触ってみたりとか、「あ、硬い!」とか、あの皮のスカートですよね。弓を触らせてもらって、すごい固い! とか。皆で笑って談笑している姿がすごくあったかいいい感じで、良かったなあと思ったりしました。

いま行われるべき流鏑馬を、電子書籍で

M : そういった交流もあったということなんですね。今回は写真集の売り上げの一部を寄付されるということなんですね?

F : はい。こういうご時世で流鏑馬の行事が一切出来ないんですね、お祭りなども全部中止になったりして。そうすると流鏑馬ってやっぱり、馬場の管理とか馬の管理やお世話があったりとか、意外と結構お金がかかると聞いています。そういう部分に一部でも、まあ微力なんですけどご協力できたらなと思ってこの写真集の売り上げの一部を寄付させていただくことにしています。

M : 今回その写真集は、電子書籍のみということでよろしいでしょうか?

F : そうですね。これも一部チャレンジングだと思っているですけど、写真集って本当は写真家としては紙で出したいんですよね。自分の納得いった色と紙質で刷ったものをそのまま見て欲しいんですよね。電子だといろんなモニターがあったりして色もいろいろあるので、僕が思っている色で見ていただけているとは限らない、というか。その部分はちょっと疑問も残るんですが、ただ紙で作るとお金がかかるという部分があります。だからこういう状況では、電子書籍で作ることで単価を下げて寄付も大きくなるように出来ないだろうか、というチャレンジの意味も含めて電子書籍で刊行してみました。

M : 電子書籍でお求めいただく際は、その電子書籍のいろいろな対応のサイトがあると。

F : そうですね。amazonだったりとか紀伊國屋キノッピーとかいろいろあるんですが、皆さんが普段読まれている電子書籍があれば、その電子書店さんには大体おいてあるかと思います。

M : 電子書籍を扱っているサイトの方でお求めいただけると。ローマ字で「YABUSAME」で検索していただいて、ということですね。これは頁数が208ページ! ボリュームありますね。

F : そうなんです。写真集にすると結構なボリュームなんですよ、大きいというか手首も痛くなるような重さになる。電子書籍だということをラッキーだと思っていただいて(笑)。ひとつのタブレットだとかスマホに入っちゃいますから、携帯で見られるというのは健康にも良いかなと(笑)。

M : 今年いっぱいは流鏑馬神事も行われないですけど、電子書籍を見ていると流鏑馬を見ているような雰囲気になりますね。では、最後にリスナーの皆さまに一言お願いいたします。

F : 電子書籍はまだ見たことがない方も多いかと思うんですね。この機会にチャレンジしていただけたらな、と思うことと、あと、流鏑馬は健康を祈る神事であって、本来なら今行われなければいけない祭事なんだけど、今は出来ない。これをリモートというかバーチャルなところで観ていただいて楽しんでいただければと。いつもなら鎌倉まつりなどで観られるものなんですが、今年は観られなかったなあと思う方たちに楽しんでいただけたらなあと思います。

(人物撮影 : 中野建太)

湘南ビーチFM  Shonan BeachFM 78.9
https://www.beachfm.co.jp
「DAILY ZUSHI HAYAMA」
https://www.beachfm.co.jp/blog/zushihaya/
2020年7月28日(火)ON AIR
パーソナリティ:森川いつみ ゲスト:古田 亘

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