ダメ男、冗談ではなく死にかける
えと、ちょっと予定をテレコにしまして、今回は実に軽いネタです。
先週が特別編だったので今週はガッツリ、と思ってたんだけど、いろいろnoteの更新スケジュールを変更したもんで、こういう軽いネタを挟んでおかないといけなくなったっつーか。
ぽんぽこ、お前さん、いつから日本語読めるようになったんだ。などという茶番はさておき、たしかに今回は死にかけた話です。いやこれもタイトルにあるように「冗談じゃなく」死にかけたわけなんですが。
それでも全体としては軽い。その時は「人生の終わり」を覚悟するレベルだったけど、今振り返ったら、まァ、冗談でショレベルっつーか。
それでは参ります。
◆ あれ、正式名称って、何?
今回はふたつの「冗談ではなく死にかけた」話を書くつもりです。どちらも軽い内容ですが、まずはより軽い方からやっていきます。
あれは今から10年くらい前だったかな。冬の寒い頃でした。
アタシは、基本的に寒いのが苦手でね、だから冬になるとヒートなんちゃらというような、メーカーはどこでもいいんです。とにかくあの、異様にあったかいシャツをずっと愛用しております。
10年前というと、その手の商品がいろいろ出始めた時期でして、シャツだけでなく、えと、アレ、何ていうんだろ。タイツ?パッチ(標準語ではモモヒキ)?レギンス?いやレギンスはさすがに違うわな。
何にせよ、シャツが上半身ならコイツは下半身のための防寒下着です。しかもヒートなんちゃら同様、異様にあったかいのが売りという。
店頭で見るなり、あ、これ、買う、ですよ。上半身だけでもサイコーなのに、より冷えやすい下半身までポカポカになるんだったら、そりゃもう、買わないわけがない。
で、家に帰ってね、さっそく履いてみたわけです。うん、こりゃいいわ。本当にあったけーわ。
・・・
どれくらい時間が経っただろう。あんまり、よくは憶えてないけど、途中で、あまりの苦しさに<眠った>のではなく<気を失った>ってのだけは憶えていた。
どんどん目の前が真っ暗になっていって、何とかもが遠のくような感覚になった。
誰かに助けを求めようにも、ケータイは手元にはあったけど、力が入らずケータイも持てない。持てたとしても、まったく、声をあげることさえ出来ない。
あ、死ぬんだ、と思った。何がなんだか、さっぱりわからない理由で、あの世に行くんだと。
目が覚めて、とりあえずは生きてはいたけど、まだ、苦しい。何でこんなに苦しいんだ。
・・・いやもう、理由はいっこしかないじゃないか。さっき履いた、例のアレです。
このタイツ状のヤツ、やたらピチッとしてて、それで腹のあたりから足首までをやたら圧着している。
これだ。これが原因だ
すぐさまアタシはタイツ状のを脱ぎ捨てた。すると途端に苦しさがアタシから消えました。
後で冷静になって考えてみたのですが、サイズが小さかったのかなぁ、とかね。でも仮にそうだったとしても、もう二度とこの手の「下半身ポカポカ」のは怖くて買えないよ。
だって死にかけたんですよ!?
ってもしこれで死んでたら「タイツ着用による圧迫死」って新聞に報道されたんだろうか。
◆ あれは夏の夜
さて、もうひとつの「冗談ではなく死にかけた話」ですが、これはさらに20年ほど遡った、アタシが21、22の頃の話です。
当時アタシは大学生でして、アタシの所属していたサークルは毎年春と夏に合宿に行っておりました。
このサークル合宿の話はいろいろあるんだけど、それはまた今度ってことで、今回は誰も絡んでいない、アタシひとりがもがき苦しんだ、3年生の時の夏の合宿での出来事を書きたい。
夏、と言えば肝試しです。ですって言われても困るだろうけど、とにかくそういうことにしておいてください。
そのサークルの合宿恒例行事として、1年生が合宿所の近くの「薄気味悪いところ」を徘徊し、2年生以上は「おどかし役」をやる。どうおどかすかは各人に任せられており、あらかじめルートを下見しておいてね、自分がここ、と思う場所に散らばって、何とか怖がらせるって寸法です。
ただ、アタシは、そもそも「肝試し」というヤツが苦手なのですな。
いやこれが、怖くて怖くてってんなら、それはそれで楽しめてることになるんだけど、その反対、つまり「肝試しの何が怖いかさっぱりわからない」のです。
アタシほど、その、つまり、いわゆる霊感ってヤツですか、が弱い人間もいないと思っている。霊がどうこうで「ゾクッ」としたことが今でも一度もないんですよ。
だから肝試しの<キモ>がわからない。
シャレじゃないよ。マジでね、1年生の時の徘徊側の時もそうだったけど、これはテキトーに「怖かったァ~」みたいな演技をすればいい。
ところが怖がらせる側になると何をどうしていいのか何もわからないのです。
とりあえず2年生の時は、タバコでも吸いながら、1年生が来るたびに「どう?怖い?」なんて声をかけてね。じゃあ頑張れ、とか。
どんなこわがらせ役だ。
◆何の策もない
しかしさすがにこれは反省した。いくらなんでも役割を果たしてなさすぎる。来年はもうちょっとマジメにやろう。
いや、そうじゃねーわ。ただ「マジメにやる」なんて、そんな低い志でどうする。やるんなら「こわがらせのプロになる」くらいの意気込みがないと話にもなんない。
こうなったらカネが取れるレベルまでなろう
アンタもう、こわがらせのプロになった方がいいんじゃない?
と言われるくらいにまで高みを目指そう!
・・・そうはいっても「霊的な怖さ」がどういうものかわからないので、いくら反省はしても、結局は要領を得ないことしか思いつかない。
何とかして、悲鳴を上げさせようと思っても、いったい何が怖いのかわからないんだから、それは無理というものです。
何の策もないまま、3年の夏のサークル合宿がはじまった。
「はい、2年生以上は各自ポジションについて~」
そんなことを言われてもなァ。ま、とりあえず、テキトーな場所に移動するか。別に何ら仮装するわけでもなく、普段着のまんまで。
さすがに1年生に声をかけるのはマズすぎたから、今回はとりあえずは隠れていよう。あとは、まァ、「わっ!」とでもいえば、怖いかどうかはともかく、ビックリはするんじゃないか。
いやいや、もうそれで十分だよ。オバケの素養なんか微塵もないんだから。
とにもかくにも、ルートを歩いてみる。うん、意外と隠れられそうな場所がない。あってもすでに先客が、つまり「こわがらせ役」がいる。
うーん、どっかないかなぁ
しかし、怖くはまったくないけど、暗いなぁ。そこまで鳥目じゃないけど、いい場所なんて全く見つけられないや。
あ、もう、ここにしよう。別段良い場所じゃないけど、この木の後ろに隠れていよう。ここまで暗ければどっちみち見えないだろうし。
お、誰かきた。よしよし。木の裏側に廻って・・・。
◆ 風雲急を告げる
!?
え!?何?
ちょ、ちょっと待ってくれ。どうなってんの!?
木の裏側に廻った瞬間、アタシはものすごく重要なことに気がついた。足を下ろす場所がない。
つまりですね、真っ暗で気づかなかったけど、木の裏側は崖になっていたのです。
アタシは必死で木にしがみついた。
お、おいおい、冗談じゃないよ・・・
何しろ真っ暗だから、崖がどれくらいの高さか知る由もない。とにかく、いくら足を伸ばしても地面につかないことくらいしかわからない。
だ、誰か来た!
ま、普通ならここでアタシが発するセリフはもちろん「た、助けて~」ですよね。
でもさすが違うね。プロを目指した男はそんなことはしない。何故なら「こわがらせのプロ」として自分の存在を認識されるなんて最低のことだから。
「こ、怖いよねぇ」
なんてささやき合いながら、女子二人組はアタシの前を通り過ぎた。もちろんアタシの存在に気づくこともなく。
うん、これがプロだ。まさかあのふたりもアタシがここにいたなんて夢にも思うまい。
・・・なーにがプロだ。オダブツ寸前のクセに。
◆ 人間、限界というものがある
どうやら最後のひとりが通り過ぎたようだ。よし、見事に、誰ひとりにも見つかることなく「こわがらせ役」を全うしたぞ!
帰るか・・・。いや、帰れるわけがない。というか腕の力も限界に達してきた。
いったい何分、この木にしがみついてたんだろ。もう、どう考えても無理だ。
ああ、これで死ぬのか・・・
まさか自分の人生がこんなところで終わるなんて想像も出来なかった。しかしあれだけ楽しみにしてたサークル合宿でってのは、よくよく考えたら、それなりに「良いタイミング」ではないか。
それも「プロとしての姿勢」を示した上で、なんだから、考えようによっちゃ、こんなカッコイイこともないぞ。
アタシは覚悟を決めた。
決めた
決め・・・
決められるわけねーだろ!!
生きたいに決まってるじゃねーか!!!
よし、最後の力を振り絞ろう。どうなるかわからないけど、振り子の原理で勢いをつけて、何とか足を木に絡みつかせよう。
ゆらゆら
いいか?いやまだ勢いが足りない。しかしあまりにもゆらゆらしすぎると手が保たない。
よし、このタイミングしかない。
いっせェのォで
すォれ~!!!
足は見事に木に届いたが、勢いがありすぎてそのまま一回転し、アタシは宙に浮いた。そして地面に叩きつけられた。
い、痛ァ~!
ん?生きてる!!
どうやら、何かわからんけど、とにかく助かったは助かったみたいだ。
◆ ま、そんなことだろうと思ったよ
翌日の昼間、アタシはサークルのメンバーに上手く行って合宿所を抜け出した。
ま、合宿所ってもただの民宿だけどさ。
ああ、ここだここだ。
そう、アタシは昨晩死にかけた例の場所に戻ってきました。
真っ昼間に見るとこんな雰囲気が良いところだったのか。しっかし、昨日は大変だったなぁ。もしこっから落ちてたら
落ちてたら
落ち・・・
ま、せいぜい足を挫いたくらいだな・・・
明るい時間にあらためて崖下を見てみると、たしかに高いっちゃ高いけど、せいぜい3メートルほど。両手両足を伸ばしきった状態なら1mあるかないかです。
そうだよな、ぽんぽこ。アタシは何も間違っていないよな。だって見えてなかったんだから。
・・・それ、言う?言うわな。
そんなこんなでおしまい。リアクションお願いします。さらばじゃ!