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マネジメントのこころ

大層なタイトルを付けましたが、これは僕が現時点で組織やマネジメントについて考えていることを言語化したものです。

まだまだ勉強途中であり、1年後には全く違うことを言っているかもしれません。
ただ、数年間組織づくりをしてきた中で言語化したことが、マネジメントに関する学習過程として、誰かの何らかの足しになればと思います。

今回は理論編です。
具体的にどのような手法、手段で進めていくかに関しては、別の記事を書こうと思います。

仕事のしくみ

マネジメントを語るうえで、まずは会社組織においてどう仕事が進んでいくかを理解する必要があります。
ここでは、シンプルに「経営」「マネージャー」「メンバー」という3つのレイヤーが存在する会社組織として考えます。
この組織で、新しい事業を立ち上げ、プロダクトを作っていくとしましょう。
すると、ものすごく簡略化&乱暴にまとめていますが、このような感じになると思います。

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この図においてそれぞれの箱は「やること」で、矢印は「情報」です。
ざっくり言葉で説明するとこのようになります。

1. 経営陣で会社戦略(経営資源をどう使い、何をするか)の意思決定
2. マネージャが遂行戦略(市場戦略、販売戦略、開発戦略など)を立てる
3. マネージャが進行管理し、メンバーが遂行する(設計/開発/販売等)
4. メンバーが市場からのフィードバックや開発状況等を収集し、整理する。
5. マネージャがフィードバックを分析し、遂行戦略に反映したり、経営へのフィードバックする
6. 経営陣も情報を分析し、必要に応じて経営戦略に反映

もちろん一人が複数の領域にまたがったり、役割(部署)やレイヤーが細分化しますが、ざっくりこのように情報が流れ、仕事が進められていくのではないかと思います。

マネージャはこの中で、中心に位置します。
経営からの情報もメンバーからの情報も、一旦マネージャを経由します。
これだけ見ても、マネージャが情報の流れをつくる上でいかに重要な役割かを見て取れます。

マネジメントの仕組み

続いてマネジメントの仕組みです。
先ほど図示した会社の仕組みを、それぞれの視点で切り取ってみます。

まずはマネージャーです。
マネージャーはもちろん経営戦略へ意見したり、時には参画することも十分ありえますが、マネージャーとしてのミッションは、経営陣から戦略がおりてきたところから始まります。

まず、経営戦略に従った遂行戦略を立てます。
EMであればエンジニアの人事戦略、組織戦略、育成戦略など。
PdMであればプロダクトの市場戦略、販売戦略、製品戦略など。
PMであれば体制、ロードマップなど。
それぞれ視点や対象は違いますが、経営戦略を実現するための遂行戦略を立てます。

次に、プロジェクト等を遂行します。
実際に作業するのはメンバーであることが多いですが、マネージャーは進行管理します。

そして、メンバーからのフィードバックを分析します。
EMであれば1on1や成果、PM等からのフィードバックなど。
PdMであれば開発や販売進捗、市場の状況や反応など。
PMであれば開発状況や組織状況など。
役割によって分析する頻度は違いますが、遂行戦略に対する状況を分析します。

最後に、分析した結果を遂行戦略に反映し、再度実行します。
場合によっては、遂行戦略だけでなく経営戦略に反映されることもあります。

例えば、プロジェクトのスクラム開発の場合はスプリント単位でこのフィードバックループをまわし、人材育成では毎月1on1や四半期で目標設定〜評価といった、フィードバックループを回します。

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フィードバックループを回すのはマネージャーだけはない

次は経営視点で切り取ってみましょう。
すると、マネージャーと同じくフィードバックループを回していることに気づきます。

1. 経営戦略を立てる
2. マネージャーに指示して実行
3. 情報収集して経営分析
4. 経営戦略に反映

そして実は、経営やマネージャーほど顕著ではありませんが、メンバーもフィードバックループを回します。
たとえばプロジェクト遂行であればこのようになります。

1. タスクを見積もり、計画を立てる
2. タスクの実行
3. スケジュールからの遅れ、進みをチェック
4. 計画に反映

自身の育成に関してであればこうなります。

1. 四半期や半期等の目標を立てる
2. 1on1などですり合わせながら、目標を意識して実行
3. 評価
4. 目標に反映

これにおいて気づくことは、それぞれの立場で目的が違うだけで全員フィードバックループを回している、ということです。

経営:会社を成長させること
PdM:プロダクトを成長させること
EM:エンジニア組織を成長させること
PM:プロジェクトを成功させること
メンバー:タスクを遂行すること、自身が成長すること

それぞれの立場で実際の活動内容は違いますが、本質的にはほとんど同じで、視点や目的の違いというだけです。
このフィードバックループを回すことで、仕事が進み、会社組織が成長していきます。

メンバーとマネージャー、経営ではそれぞれ扱う規模が違い、それぞれの領域を内包しています。
これは含んで超えるということになり、言い換えれば視点が上がるということになります。
なので、メンバー、マネージャー、経営で求められる視点が違うというのは、つまりこのようなためです。

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マネージャーの役割

冒頭にも伝えたとおり、情報はすべてマネージャーを経由して流れます。
マネージャーが情報の流れを止めてしまうと、マネージャーだけでなくメンバーや経営のフィードバックループも止めてしまいます。
経営陣は経営分析できなくなり、メンバーは計画を立てられなくなります。
なので、マネージャーの最も重要な仕事は、各レイヤーに情報を伝播することだといえます。

また、ただ右から左に情報を流すだけでなく、経営視点とメンバーの視点を繋ぐ必要があります。
単純に経営戦略をメンバーに伝えた場合は各自に混乱が起きます。
またメンバーの方向をそのまま経営陣に報告しても、そんな細かい話はいらない、と言われてしまいます。
この間をつなぐ作業が、遂行戦略および遂行分析です。

この遂行戦略及び遂行分析できっちりと情報の穴を埋め、全体のストーリーを紡ぐ必要があります。
PdMであれば、プロダクトに関する経営戦略に対して、何を作り、どういう市場を攻め、どう売るかのストーリーを作ります。
PMであれば、プロジェクトのざっくりした目標に対して、タスクを洗い出し、見積もり、依存関係を整理し、アサインします。
いつ誰に何をやってもらって、どこに不確定要素があって、どれだけバッファをもたせて、といった計画を、積み木を組み上げるように組み立てていきます。
EMであれば、目標とする組織に対して、採用、育成の両面から戦略を立てます。
採用であれば、どこでどのように候補者を見つけ、どのように選考するか。
育成であれば、各メンバーのキャリアプランをメンバーと一緒に考え、次のステップに必要なスキルを分解し、スキルを身につけるプランを考えます。

このとき解像度が粗いと遂行段階で矛盾や無理が生じて計画が狂います。
また、十分な視点の高さがないと、経営戦略とメンバーの戦略を綺麗につなぐことができません。
高い解像度と高い視点を両立し、経営からメンバーまで一貫したストーリーを作り上げるかが、マネージャーの力量です。

経営層はメンバー一人ひとりがなにを考えているを把握しきれません。組織を集合として捉えた上での戦略になり、一人ひとりの戦略とつなげることは非常に困難です。
またメンバーは、経営戦略なんて雲の上のことのように感じています。
経営戦略だけを語っても、所詮は机上の空論のようにしか感じません。
そんな状態から、自身の戦略と経営戦略を直接的に結びつけてしまうのが、このストーリーです。

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そしてこのストーリーをメンバーと経営層に、正確で明快に、頻繁に伝えることで、すべてのレイヤーのフィードバックループが回り始めます。
そしてメンバーからは安心感、経営陣からは信頼感を得られます。

マネジメントの目指すもの

このストーリーの役割はこれだけではありません。

各メンバーがストーリーを十分に把握し、共感し、語れるようになることで、それぞれのビジョンが生まれます。
このビジョンは、ただのプロダクトや組織が将来どうなっていくかといったビジョンだけではありません。
例えばプロダクトがこうなったとき、組織がこうなったときに、自分はどういうスキルを身につけていて、どういう立場になっているのか、どんな幸せを手にしているのか、といったような、会社のビジョンに重なった個人個人のビジョンです。

これは、ストーリーが中途半端だと到底作り上げられませんし、そしてメンバーに伝わらなければなりません。
特に「伝える」という点に関しては、ストーリーを心の底から確信し、ストーリーを納得するための情報をすべて出し、ストーリー視点から熱量をもって伝える事が必要です。
ストーリー視点というのは、ある意味経営視点よりも上です。

例えば、
「こういう会社を作っていきたくて、そのためにこういうものを、こういう体制、こういうスケジュールで、誰が何をすれば、ここにつながる。夢みたいな話だけど、こういう戦略で行けば意外と現実的じゃない?俺らなら出来ちゃうんじゃない?」
といったように、ストーリーを俯瞰する視点が必要です。

「本当はちょっとここが厳しそうだけどね」
「ちょっとこのことはメンバーに言いたくないから、若干隙ができるけどこう話そう」
「経営戦略は経営陣の問題だから、俺たちやれることをやっておけばいいよ」
といった疑念や諦め、情報の隠蔽が少しでもあれば伝わりません。

また、メンバーからの情報を反映することも重要です。
戦略を一方的に伝えるのではなく、同じ視点で俯瞰してもらい、忌憚なく質問をや意見を投げてもらい、差別なく良いものは取り入れていく必要があります。

この意見を取り入れる人が偏ると、いわゆる「社内政治」が発生し、物事が進みづらくなります。
ストーリー視点で質問をもらえれば、事前に対応策を練ることができ、ストーリーがより完全になります。
そして意見を的確に反映できれば、メンバーでも戦略に参画している意識が芽生え、個人のビジョンを構築しやすくなります。

そして個人のビジョンと会社のビジョンが重なったときに、強烈なチームワークが生まれます。
これを私はチームの「主人公化」と呼んでいます。

「主人公化」と呼んでいるのは、チームメンバーが歯車という意識ではなく、チーム内の各メンバーがの行動が会社、仲間、自分の夢につながるといった、強い意思をもったメンバーの集合体に昇華するためです。

この状態になれば、各メンバーは楽しく仕事でき、目的をひとつにしたチームの人間関係も良くなります。
同じ視点を共有できているため認識のずれも減り、報告も的確になって遂行分析しやすくなり、次の遂行戦略も立てやすくなります。
また自分の成長が仲間の成長、会社の成長につながることを強く実感できているため成長意欲も増大します。
これはEM、PdM、PMすべての目的を達成できます。

マネジメントのこころ

このストーリーこそが、マネジメントのこころだと、僕は思っています。
マネージャーの成長によって、このストーリーは成長し、より完全なものになります。
そしてストーリーを伝播することで、プロダクトは成功し、プロジェクトは成功し、組織は成長します。
言いかえれば、マネジメントのこころを育て、伝えることで会社が育ちます

様々なマネジメント論や組織論がありますが、いまのところ僕はマネジメントのことをこのように考えています。
もし、マネジメントに関してうまく言語化できていない誰かに対して、あぁこういう視点もあるんだと、少しでも参考になればと思います。

今回はかなり長い記事になりましたが、それでもまだ理論編です。
次回以降で、ストーリーのつくり方や、マネージャーとして必要なスキルなど、より実践的な内容も書いていけると良いなぁと思っています。

ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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