見出し画像

PPP的関心【「いばらき幸福度指標(仮称)」導入計画から、都市経営のインプット・アウトプット・アウトカムの関係を考える】

PPP的関心で、地域ブランディングについて書いたことがあります。
ブランド構築というからには、ヒト・モノ・カネが行き交う地域の活性化に向けて、主体的・意図的に選ばれる地域」になるような仕掛け、計画、実施策がなされるべきでは、ということを書きました。

地域のブランドを構築するために主体的・意図的に仕掛け、計画、実施策を行い何らかの結果を出そうとする際、政策的な(費用や人材の)インプットと計画の実行により生み出される結果、例えば定住・交流人口の増加や域内経済規模の拡大など「アウトプット」を指標として進捗や実現程度を測る、とされることが多かったように思います。

ただ、地域ブランド構築では起こった環境の変化を用いて地域内でどんな暮らしや活動が実現するのか、それを市民が自身のプライドとして受け止めるのかが大事であって、掲げたようなアウトプット指標が実現してもそれはブランド構築の向けた手段が実現しただけであって、地域ブランド化の進捗を計る指標として掲げるには「いま一歩」感を拭えない印象がありました。

都市経営におけるインプット・アウトプット・アウトカム

都市経営においてはビジョンを掲げ、そこへの道筋としての作戦、計画が示されることが肝要です。それを「インプット・アウトプット・アウトカム」の関係として整理してみると、
・インプット :公共投資やPPP等により資金や人材などの資源を投下
→処理    :都市計画や地域振興計画等の法, ルール, 計画に従った実行
→アウトプット:定住・交流人口や域内経済規模の増加等の"処理"実行結果
→アウトカム :結果から獲得できた成果・効果、それらが生じている状態

といった整理ができると思います。

茨城県による総合計画への「幸福度指標」導入方針は従来の都市経営計画の進捗や成果をアウトプットだけで測ることから離れ、住民の幸福度という、いわば「アウトカム」指標を用いた(少なくともそれを意図した)都市経営計画の進捗の測定、実現程度の確認を試みるものとして形になるか、という点で注目だと思いました。

#日経COMEMO #NIKKEI

「寛容と幸福の地方論」を再読する

以前、取り上げた「寛容と幸福の地方論」では、大きな結論として

画像3

を提示し、人口減少に歯止めをかけ、魅力的な人材の移動や定着を促すための重要な「因果関係を持つ背景的要素」、ファクターXとして「寛容性」を示しています。加えて、寛容性とWell-beingとの相関を捉え

画像1

以下の提言をしています。

画像2

今回注目した茨城県による総合計画への「幸福度指標」導入方針は、アウトカム指標を計画実現程度の測定指標として用いるトライアルである、というテクニカルな面に加えて、住民のWell-beingを意図した(考慮した)方針でもあると考えることもできそうです。

「いばらき幸福度指標(仮称)」への期待
「アウトプット」ではなく「アウトカム」を意図した発信を

参考までに。幸福度との相関があるとされたWell-beingについて、一般社団法人ウェルビーイングデザインのホームページには、

「ウェルビーイング」(well-being)は、「幸せ」「健康」「福利」などと和訳されますが、文字通り解釈すると「良きあり方」ないしは「よい状態」という意味です。つまり、人々が、精神的、身体的、社会的に「良きあり方」「よい状態」であることをウェルビーイングといいます。

と記されています。

記事によれば、今回審議会に諮問された次期総合計画案に盛り込まれている「いばらき幸福度指標(仮称)」には、

・「県民が日本一幸せな県」を目指す
・幸せを実感できる環境整備や充実度を把握するための指標
・豊かさ、安心安全、人財育成、夢・希望の4つのチャレンジを打ち出す
指標はこれに沿った内容で客観性の高い政府統計データなどを基礎とする。

とあります。
書かれている「環境整備や充実度を把握」は進捗確認の表現として、もしかしたらアウトプット指標が用いられることになるのかしら?という点が気になります。せっかく「幸福度」をタイトルに掲げるのだから、住民の状態、精神的、身体的、社会的に「良きあり方」「よい状態」であるかについても言及される、そんな発信・コミュニケーションを期待したいところです。

期待の一方で、記事を読んで「余分」だと思ったこと

年度ごとに都道府県間で比較できる数値を出し、全国順位を出すことも想定

相対的な位置を確認するのは交流人口の奪い合いなど都市間競争を意識している、あるいは、先日、某県知事の「過剰な反応」で話題になった都道府県ランキング的な他者評価を意識しているのかなと勘繰ってしまいます。

もちろん、都市「経営」を実践するからには「競争的な側面」が何もないとは言いませんが、他者評価ランキングを上下させることは目的にはならないと思いますし、それが何番だったら良いのか?という「基準」を作ることも各都道府県・都市の背景(財政規模、人口などの資源の差など)が違う以上あまり意味がないと思います。

せっかく「アウトカム指標」を意識した都市経営計画・方針を立てるのならば、人気投票(住みたい、行きたい)的なものを意識した他者との比較ではなく、住民や訪れた交流人口の満足度(住み続けたい、何度も行きたい)を注視するべきで(…もちろん、マーケティング的な意味では結果の差を分析するツールとして用いることはあるかもしれませんが)、相対ランキングを過剰に注視するような発信は不要ではないかな、と思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?