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PPP的関心【エネルギーと地域経済循環】

今朝(2月17日)のニュースで、「2022年1月の貿易収支が6ヶ月連続の赤字かつ過去2番目に大きな赤字額(2014年1月(2兆7951億円の赤字)に次いで過去2番目)。要因の一つに原油などエネルギー価格の高騰がある…」と報じていました。
資源高が続くことはエネルギー資源を輸入に依存する日本経済に悪影響をもたらすことは勿論、連鎖して地域経済の支出を拡大させる要因になります。
再生可能エネルギーを用いた「エネルギーの自給」問題は温室効果ガス排出の縮減という国際間の約束の実現を進めるという視点もあります。一方で、そうした見方は勿論ですがエネルギー価格の高騰は「地域経済にとって支出増」問題でもあります。

今回は「地域経済と電力」という視点で気になった記事を取り上げました。

とっとり市民電力。脱炭素電力5割以上に

#日経COMEMO   #NIKKEI

とっとり市民電力は、その企業理念に「地域に根差したエネルギー事業者として、電力販売を通じた地域内経済循環を促進し、豊かで安心な暮らしを支える礎となる。」を掲げ2015年に鳥取市と鳥取ガスによって設立された地域電力会社です。

先日配信されたニュースでは

鳥取ガス(鳥取市)と鳥取市が共同出資する新電力、とっとり市民電力(鳥取市)は2022年度に地域から調達する脱炭素電力の割合を5割以上に引き上げる。50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」やSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが広がるなか、企業や個人の間で需要が高まっていることに対応する。
同社が調達している地域の脱炭素電力の割合は21年7月期末時点で約3割。現在、鳥取市内を中心に小学校や県立図書館での太陽光発電、県有中小水力発電所など主要なもので合計17カ所の発電設備からの電力だ。
22年度は新しくできる燃焼系のバイオマスを主力とする発電設備のある施設からの調達も見込む。また、畜産業界でのバイオマス発電など、小規模なものも含めてさらに広げていき、5~6割に高める

2022年2月16日   日本経済新聞 記事

とあり、2022年度に「地域から調達する脱炭素電力の割合を5割以上に引き上げ」ることを掲げています。地域の脱炭素電源から調達する効果は「温室効果ガス排出」と「地域経済の域内循環」という二つの異なる課題に同時に向き合う取り組み方です。

地域経済分析とエネルギー

先日記事で紹介したRESASを使うことで「地域経済の循環」の状況について分析が可能です。

地域経済循環分析では「地域経済からのエネルギー代金の流出」を確認することができます(使い方や内容等の解説は、以下の出力例に付けたリンクを参照してください)。

地域経済循環分析自動作成ツールは、環境省ホームページで公開します。
本ツールでは、ユーザーが選択(複数選択可)した任意の市町村について、地域版GDP統計、産業ごとの取引構造、貿易・サービス収支、エネルギー代金収支、エネルギー生産性などの分析結果が自動出力されます。

環境省HP「地域経済循環分析自動作成ツールの提供について」 より
地域経済循環分析説明資料(環境省HP)

排出量問題と地域経済循環

温室効果ガス排出量削減という課題については、市域の中で「都市的な使われ方」が占める自治体とそうでない自治体とでは(事業所や住宅の集積程度の差から)緊急度や重要度の違いが生じるかもしれません。言い換えれば、比較的大都市問題という見方をされるかもしれません。

しかし、地域経済循環の構造の確立という課題については、社会構造変化による自治体経営の状況を考えると、自治体の規模や都市的な使われ方の差で緊急度や優先度に違いが生じる話ではないと思いますし、むしろ、小規模な自治体ほど地域内経済循環が確立する構造にする重要度が増すのではないかと思います。

PPP企業による一石N鳥の価値創造

冒頭の鳥取市と鳥取ガスの取り組みは官民の共同出資という意味でPPP的な企業体です。そうした公民連携事業によって、民間不動産だけではなく公共施設、さらに畜産業界でのバイオマス発電など小規模な発電施設からの調達も視野に入れることで、雇用創出や地域経済への資金環流(循環構造)構築を進めていることは、PPPビジネスで重要な視点である「一つの取り組みで同時に複数の社会課題を解消する」という点でも注目です。


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