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PPP的関心【「不動産"学"」と過ごすゴールデンウィーク】

久しぶりに制約のないゴールデンウィークです。ちょっと買い物に出かけた地元の観光地と言われる場所でも人手の多さに驚きます(といっても、以前は週末なら当たり前の光景だったはずで、「慣れ」って恐ろしい)。
久しぶりに満喫できそうなゴールデンウィークではありますが、暦どおりに業務を入れながら、その隙間を縫って今年度から再開した「不動産学基礎」という建築学生に向けた講義の準備もしなくては…という具合で残念ながらゆっくり過ごすという感じにはなりません(笑)。ということで講義資料の準備をしながら再確認したことなどを書こうと思います。
*写真は2015年に訪問したライプツィヒの街角

GWの始まり。不動産「学」って何?の再確認から

私は日本不動産学会のメンバー(監事)でもありまして「不動産学って?」という問いへの答え、問いを考えるヒントを学会誌に求めたいと思います。
過去(1995年)の不動産学会誌にある、日本不動産学会 会長(当時)稲本洋之助先生の「基調講演  不動産学とは何か」という講演録に以下のようなことが語られています(抜粋)。

■不動産学は不動産が今日の国民生活において最も重要な要素の一つとなって いること、及び不動産にかかわる諸事象がそれ自体として解明 されるべき固有の問題としてあらわれていることを認識し、そのあり方を総合的な学術研究の対象として究明することを目的とする学問である
■重要な社会問題である住宅問題、土地問題、交通問題、環境問題が不動産の利用や配置の効率化、適正化という共通項を有している
不動産の利用と配置に関する諸現象を学際的に研究する。 いろいろな問題 があり、いろいろな既存の学問領域がありますが、いずれの問題において も、 いずれの研究分野においても、「不動産の利用と配置 」という二つの 問題があるはずだ。この共通項のゆえに、いろいろな分野の人々が集まって、諸現象を学際的に研究しようということ
■一つの学問分野でこのような議論をしていると、らちがあかないものも、たとえば第一の考え方は主として経済学の側から、第二の考え方はどちらかといえばですが工学系統の側から、第三の社会的公正を重視する開発利益の理解は法律学の側からの受け止め方であります。 そのいずれかの一つに立つだけでは、この問題は真に総合的に解明できない。それでは、この三者が力を合わせて全体を総合するような新しい仮説、方法を見いだすために努力しようではないか、ということになろうかと思います。いまお話したのは、この学会の学際性というべきもの
■「学際性」とは異なる言葉として「業際性」という言葉があります…(中略)…広く不動産にかかわる諸事象の科学的な解明、 それに基づく現実的な条件を見きわめた提言、そして不動産教育の普及・向上という、これらの事業において産・官・学の協力が今や不可欠

不動産学会誌(1995.7)「基調講演  不動産学とは何か」より抜粋

「不動産の利用や配置の効率化、適正化」という共通項

紹介した講演録の中で示された「学際性」を示すものとして、当時の「不動産学会では”法律学、政治学、 経済学、商学、会計学、社会学、歴史学、心理学、地理学、情報処理学、都市工学、建築学、土木学、 農学、林学に至るまで、わが国の学問の主要な分野を、社会科学、人文科学、自然科学の別を問わず網羅"」という言葉もあり、改めて不動産や不動産と取り巻く社会の変化を対象とした時、見つめる視点の多様さ、必要な知見の広さを物語っています。

そして、これまでPPP的関心の記事でも都市公園や学校、あるいは市街地や街路といった公的不動産について触れてきましたが、言われてみると著そうとしていたことはまさに利用や配置の効率化、適正化に関することの一部であったと自分の中で再整理することができました。

「(公的)不動産の利用や配置の効率化、適正化」はPPPやPFI手法を用いて解決可能な問題

PPP的関心では何度も書いてきましたが、そもそもPPPとは「公共サービス提供や地域経済の再生など、何らかの政策目的を持つ事業が実施されるにあたり、官(地方自治体、国、公的機関等)と 民(民間企業、 NPO、市民等)が目的決定、施設建設・所有、事業運営、資金調達など何らかの役割を分担して行うこと」(東洋大学 PPP研究センター)です。
その際、PPP的な施策は従来的な行政による公共施設の配置や利用あるいは公共空間を使ったさまざまなサービス提供の手法に比べ、効率的かつ効果的であることが求められます。

つまり、これからの公共施設(=公的不動産)整備や公共空間あるいは市街地を構成する多様な民間不動産の一層の利活用を考える、すなわち「不動産の利用や配置の効率化、適正化を学際的、業際的に考える」にあたっては、従来手法よりも効率的かつ効果的であることを前提とするPFI手法を含むPPP的手法で施策で検討することでその実現がより可能になるといっても過言ではないと思います。

不動産学に関わる人材の多様性を広げて不動産の実業の可能性を拡げる

今回の記事の締めはほとんどの方に関係ない話ですが(笑)、シラバスには
・社会構造の変化を認識・理解する
・経済活動における不動産の持つ意味を理解する
・不動産ビジネスの産業構造を理解する
・変化しつつある時代において「街を活かす」仕事の胎動と兆しを知る
といったことを目的にしてお話ししますよ、と書いています。

そもそも講義のラインアップに「不動産」という名称がついた組織(学部や学科)や講義がある学校は決して多くないです。
不動産学部など組織として不動産に関する学びを提供する学部・学科以外で「不動産」について講義を提供されている方(多くはないと思います)には不動産開発や不動産取引、不動産管理、不動産金融などの実業を経験をされている方もいれば、私のように実業をしたことはない人間もいます。
これも学際的、業際的である不動産学とすれば然るべき、ということだと思います。いずれどこかで学校に限らない場所や時間で、同テーマを扱うメンバーが集まってお話しする機会があると面白そうです。実はそういう「場」となりうる場所や機会、集まりがあります。不動産学、不動産業の可能性を拡げてゆくべく、学会以外にもこういう動きに関わっている人々との交流も大事にしたいと思います。


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