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空き家アートプロジェクト-02

前回に続き、逗子での空き家アートプロジェクトについてです。

・空き家の利活用
・空き家での展示
・空き家での販売
上記3つを行うのですが、すべて同じ空き家で実施予定です。

■今回の敷地
神奈川県の横浜よりちょこっと南にいったところが逗子です。
三浦半島の入り口であり、鎌倉と葉山に挟まれた、海と山がいっぱいの街です。

湘南新宿ラインの始発なので、時間はかかるけれど座って出勤ができます。私はかつては池袋、夫は新宿。週末は逗子という暮らしを求めて移住しました。
私達以外も平日は都内へ通い、休みは自然を満喫する人が多いです。
こういった人々を逗子都民と呼ぶとか呼ばないとか。

JR逗子駅から歩いて15分以下、
逗子小学校や図書館、地域センターといった逗子における文教中心エリアから歩いてわずか3分の場所にとある空き家があります。
仮称として「M邸」としましょう。

M邸はその場で暮らしていたお母様が1年前に亡くなり、
現在の所有者さんが相続をしました。

Mさんは現在も逗子にお住まいですが、すでにご自身の家族と家があります。相続した家に住むのは難しいです。
どうしましょう。


■建物そのまま売るのは難しい

そのまま売ろうにも、戦前から存在する日本住宅です。
日本の家屋の相場は年が経てばたつほど安くなります。
とても立派なお宅ですが、残念ながら相続したそのままでは価値がつきそうにありません。

■家らしい家を
建物はお金にならなくても、土地は売れます。
現在、新築着工数は減少しています。

戸建て住宅になるにしても、一つの住宅区画から狭〜〜いお庭のペンシルハウスが3棟分譲なんて当たり前。プライバシー保護のためにカーテンやシャッターを開けることは叶わず。
確認申請に通ればいいだけの、採光も通風も行わない飾りでしかない開口部が生まれるわけです。
現実的だけど、ニーズがあるから必要だけど、わかってはいるけれど。でも、もやもやなのです。

私は建築やインテリアの専門誌の造り手でした。設計者の愛や住まい手のこだわり、アーティストの精神が根付いたインスタレーションなど、誰かの気持ちのある空間に触れる機会が数多くありました。

もし、特に何も気にせず、暮らしていたらそもそもなにかしらの「心のこもった空間という存在」を知る機会すらない人もいるんじゃないか?いろいろな問題の根底にあるのはこれなんじゃないのか?とひそかに危機感を感じています。


■その街らしさがある集合住宅なら○
アパートなどの集合住宅にする際、所有者が経営をすることが多いですが、
所有者は、建築も不動産もライフスタイルプランも、あくまで素人です。
そうなると、一番しっくりくる採算どりの謳い文句というのは
「住人を少しでも増やすために部屋数を多めにとれるようにしましょう」
ですよね。

よくいえば無駄のない作り。
合理性を高めた作り。
残念ながらこの街でなくても、どこにいってもよい作りです。
つまらない作りです。

生活そのものにこだわる人が増えているのだから、
学生や独身寮のようなものでもない限り、それに応える住宅のあり方って大切だと思うのです。
超都心とは異なり、逗子においては「ほとんど会社にいます。寝に帰るだけです」みたいな人もそんないそうにないし。
逗子なら部屋は普通ですがサーフボードがおけるありますよみたいなちょっとかゆいところに手が届いた物件は人気です。

旧来の増やせや建てろや的なのって本当に嫌。
もはやそんなに人、増えていませんから。

出版の仕事の際は都市景観の分野で頑張る方にも会っていたから、
「どこにいってもいいつくり」なんてもってのほか。
ぷんすかぷんすかです。

■時間貸しのパーキングは場所を考えて
堅実な収益があげられるからと、時間貸しの駐車場にするのも人気。

住宅地に突然現れる、駐車場。
その土地に慣れた方が使うわけではないのだから危ない。適正な立地ではない駐車場って本当によくない。小学生の通学路や商店街の真ん中に突然現れるパーキング。どうなんでしょう。

■修繕して再利用
画一的な集合住宅、時間貸し駐車場。
その街の景観的魅力を損なうものだと思う。
そりゃベタな経営もいいだろうけど失うものにも気づいてほしい。

密でない住宅、
その街らしさを残した集合住宅、
場所を配慮し駐車場、

これらならありですが、もうひとつ方法があります。
それが空き家の再利用です。

日本の住宅は築年数経過により価値が下がると書きました。
それは現状抗えない事実です。

ですが適切な修繕や改修を行うことで、
新たな価値を生み出すことも可能です。

建物に一定のクオリティがあり、
それまで住まい手が丁寧に暮らし、
相続側が街に貢献したいと考えている場合、
価値のない住宅は新たな場に生まれ変わるポテンシャルがある
のです。

今回の「M邸」はまさしくそれでした。

-つづく

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