地下1600mにあるもの
「この源泉は地下1600mから汲み上げています」
いつもならスルーする看板に目が止まる。
僕が住む街の近くにある銭湯は、文字通り、源泉を地下1600mから汲み上げているらしい。
(源泉0m)
ふーん、深いなぁ。
あ、もうどうでもいいくらい気持ちいい
銭湯最高
ふぅー…
…
…
…
(源泉400m)
あ、忘れてた、写真送らなきゃ
あの企画もしなきゃ
あれ、文章にまとめておくか
あと…
…
…
…
(源泉800m)
あー洗濯しなきゃ
缶ゴミ溜まってたな
今週雨続きだったから植物に水はいいか
あと…
…
…
…
(源泉1200m)
明日おやすみかぁ何しようかな
あの本読みきっちゃうかな
お昼何作ろうかな
あと…
…
…
…
(源泉1600m)
そういえば小さい頃はよく道に大の字になって星空見てたな
今の僕の体勢も大の字だな
それで思い出したのか
そういえば…
…
そういえば…
…
そういえば…
…
…
…
自分の源泉を、地下1600mで確認する。
ああ、だからか。
僕にとって銭湯はそういう場所だったんだ。
じゃ、お先に。
牛乳飲んで待ってます。
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