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「あなたにとっての特別な夜って、なんでしょう」 或いは、「"Twelve Girls Band"と聞いて、あなたはピンときますでしょうか」

それなりに長いことOL、在オフィスのレディ、みたいなことをしていたからであろうか。金曜の夜というものに対して、「特別」を感じる身体になっていた。

人の親・六年目に突入しても依然として素行不良、であるとはいえ、曲りなりにも母親業を営む私が金曜の夜遊びを敢行すると、自分含む家族にとって無茶が生じてしまう。そういった理由で、この週に一度の特別を味わい尽くす機会は体感、久しく、無かった(子の父親なる人物の動向を鑑みると、脈々と・頑なに受け継がれている、ゆゆしき伝統の、いわゆる美しいニホンの、オレ、的であるな、否、シンプルに公平性に欠けていることよのう、……ハ? なんてこたぁ、思うものの)。
遊んでは、いる。それもだいぶ、多めに。他人の喜びや苦しみを自分のそれと比較してどうこうするのは戴けない、というのと同じように、自身の「遊んでいる」の程度を俯瞰して測ってそうするのもまた、違う。等と、しょーもな人間が言い訳めき、騒ぎ立てたり踊り狂ったりしているわけであるが。

そんなこんなで悔しがることすら忘れつつあった、半ば諦めの、私の、枯れかけた華の金曜日であった、のだけれども、そこに「どうでしょう?」とド文化・爆イケ姉さん&兄さんからウルトラミラクルハッピーなお声掛けが。オシャレで賢(かしこ)な若者たちが盛り上げているあの街の夜を、遊び尽くそう。そんなの、二つ返事。

好きなもので弱ったからだを飾り付けて、いざ行かん。キンチョーするので、近くの酒屋の角で一杯引っ掛けてからね。

国立、谷保は『小鳥書房』へ。
清らかな魂を感じさせる女性店主。月に数回、夜の本屋でバー営業をなさっている。このたびは、そちらのイベントに参加。

メインでもサブでもストリートでもマイルームでも、大なり小なりのカルチャーを持つ人間にとって、血が温まるような空間。カルチャー人物らの語らいの場。

しかしこういうところに顔を出すと、私はますます喋りすぎる。度々、自分のことを小さな東のアンミカと錯覚するタイミングがおとずれる。
普段買わないお洒落なビールをサーッと流す。声デカくてごめんなさいッ、いやいや声デカいのいいじゃないですか! 嘘だぁやさしいなあ、界隈のカルチャー人物らに靴ほめられて上機嫌、センス人間「オシャレですね!」ナンセンス人間「はい、(肩肘張らない絶妙なラインを設定して)しっかりオシャレしてきました!!」

慶びの多い人生を願って名付けられた、ってきいてたけど本当はお父さんが女優の松坂慶子のファンだったからそうなったフルネーム松坂慶子さん、は同い年(女優の名は仮名です)、頭のイイ友だちの顔にめっちゃ似てるし、いや知らんわて感じだと思いますけど、兎にも角にも勝手に親近感わいちゃいましたよー、つって、隣で穏やかに佇むハルカさんは五つ以上も歳下だったけれどもこんなところにフッといらっしゃるような方は流石落ち着いていらっしゃる、えっ、TBSラジオ聴きますう? 宮藤さんに言っても仕方ないですよねえ! ええっ、とあそこにいるのはもしかしてサエさん? 合ってる? お久しぶりですね! えええっ、マッチングアプリ作者の方ですか!? ……あっ違、Tinderの創設者的なことかと思ってしまいました、あ、そういう本をお書きになって、なるほど小説、面白そう! ところでわたくし恥ずかしながら人の親をしておりましてね、うわあそれはサイアクですね嫌な一面見ちゃいましたね萎えざるを得ないッ、………
平野レミ、上沼恵美子、私。

イベントの趣旨は、ドーナツについて語るというものでした。 ドーナツ小噺用意してたけど必要なかった。

おやすみなさい良い夜を。

そこから歩いて移動して、スナック『水中』へ。
ここも賢(かしこ)で凛々しく、チャームの塊のようなママが営むお店。まだお若いのに(自分より五つか六つも歳下なのだ。ちょっと信じられない。でも一緒にいた姉さんも信じられないって言ってたし、それに関しては、そうなのだと思う。天性の貫禄のようなものが確かに、ある)、粋が板についている。

勧めてもらったジンをロックで飲む。旨い。金曜の夜に、誰かが私のために丁寧に作ってくれたお酒は、涙が出るほど旨い。賑わう酒場だけど、カラオケだって歌うけど、さっきよりも断然、静かに飲んでいる。

浮かび上がるのは骨ではなく血肉がよい。浮足は立たせていきたい。息のしやすい水の中でした。

コンビニで各々、酒やカップ麺を買い込み、谷保の団地にお住まいの兄さん宅へ。喋る、喋る。途中で酒を買い足しに出、戻り、喋る。いつのまにか、板の間で寝てしまっていた。

朝が来て、解散。

二度めましてのお姉さん、私の思う、本(ほん)トーキョーの人。上品なナリでヒップホップを泳ぐ、きれいな人。合間にふたりきりでブランコ乗ってタバコ吸って、煌めいていましたね私たち。高く漕げまして焦げました。あの瞬間は一生忘れません。

親切なお兄さん。出会ってから一年くらい経ったでしょうか。長かったかな短かったかな。煩い女の酸いも甘いも苦いも刳い(エグいてこう書くのね、知らなかった、なんか鰐、ワニみたい)も噛み分けて飲み込んでくれましたね。好きなもので彩ってこざっぱりと纏めあげた、ひとの良い部屋に泊めてくれてありがとう。夜中寝ぼけて夢遊してごめんなさい。ソープディスペンサーぶっ壊してごめんなさい。ミスドおいしかったね。

ありがとう。生きる。

〜BGM〜 エレファントラブ『大人は楽しい(アダルトMIX)』

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