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書肆 海と夕焼とは

書肆 海と夕焼。古本屋。間借り本屋です。

2019年12月に本格始動。2019年12月28日プレオープン。2020年1月4日正式オープンの本屋だ。

間借り本屋なので、西荻窪にあるBREWBOOKSさんのひと棚をお借りし、出店している。

店名は愛好する三島由紀夫の小説「海と夕焼」から拝借した。

「海と夕焼」は『花ざかりの森・憂国』(新潮文庫)に収録されている短編。あらすじはこうだ。

文永の鎌倉建長寺で寺男になっているフランス人・安里。彼が啞の少年を相手に語るは、60年前に彼の故郷、フランスにて経験した奇蹟と挫折。神のお告げを信じ、二つに分かれることを祈った夕映えの海。しかし、とうとう分かれなかった海に広がる夕焼けに真紅の煌めきに、彼は奇蹟以上の不思議を見たのだ…。

安里は、信仰を持っていた時に信じていた奇蹟以上の不思議を夕焼けに染まった海に見ている。そして、言葉を失う。彼が感じた挫折や郷愁、それさえも呑み込んでしまう夕焼けの海の大きさ。

そんなものに圧倒されることは現代に生きる我々にもないだろうか。挫折や蹉跌で失った言葉。そんな時、私は小説に縋った。いくつもの小説を読み漁り、言葉を探した。まるで大海に溶けた砂粒を探すように。

そんな言葉を掬い上げるための本屋になりたいと思った。そんな時、「夕焼の海に溶けてゆく言葉を探す本屋」というキャッチコピーが浮かんだ。今、まさにここで生きるためにあまりにも合致した言葉だった。

迷った時、悩んだ時、この本屋を訪れれば、何かが見つかる。探し物は失った、いつの間にか溶けてなくなった“ことば”だ。何物でもない“ことば”があれば良い。

そんな想いを込めて、書肆 海と夕焼、はじめました。

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