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【映画感想】桜のような僕の恋人

恋愛に対して斜に構えているがゆえに「どっちかが死ぬタイプの純愛ものか……」と正直思っていた視聴前の自分に覚悟しとけと言いたい。晴人と美咲は言わずもがな、美咲の兄を筆頭に周りの人を見ているのがしんどかった。想像の何倍もしんどかった。

予告で見た映像でもこのシーンだったのかと驚くところが多々。文脈や音楽を伴うと映像の見え方が変わるんだということを改めて感じた。

予告で気になるな〜と思った人はぜひ本編を見てほしいし、予告を見て「どっちかが死ぬタイプの純愛ものか……」と思った人もそれはそれで見てほしい。ぜひ私と同じしんどみを味わってください。

Mr.Childrenの主題歌「永遠」も素晴らしかった。視聴前、エンドロールの前、エンドロールの後で聞こえ方がまるで違って震える。もうね、ミスチルすごい。

「永遠」の「必死で何かを僕に伝えようとしてる あの日の君が見える」を聞いて思い出すのは雪の中のシーン。晴人は春が来るたび、シャッターを押すたび、あの日の後悔を思い出すのだろう。

冒頭で出てくる、そしてエンドロールの最後に映る写真について、晴人が気がついていたらいいなと思う。晴人と美咲の夢の始まりにお互いがいたんだと、美咲自身が見せたかった彼女の姿を晴人は永遠に写真に閉じ込められていたんだと、そう思えるラストだった。

「損害賠償感覚でデートをしてその後付き合うか?」という疑問は多少あったが、耳たぶを切る前から美咲にとっての晴人は大事な最初のお客さんだったわけで、晴人の話を周りの人にもしていたことから察するに最初から気になる存在ではあったんだろうなと思った。そう思うと晴人の告白を喜ぶシーンにも納得。

前半の晴人と美咲のシーンでいうと、初めてのキスや夜が切なかった。晴人にとっては「1回目」でも美咲にとっては「最初で最後」なのがつらい。2人の時間の感覚がズレていること、美咲の生き急いでいる様子が伝わってくるシーンだった。前半の幸せだった時間の全てが美咲の諦めなければいけないことだったんだと思うと苦しい。

ただ後半の襖越しのシーンや手紙を見ると、たとえ失われるとしてもあの幸せな時間があってよかったんだろうなと思う。永遠に変わらないものの尊さ……と言葉にすると陳腐だが、美咲から晴人への手紙はどうしたって泣いてしまう。

手紙のシーンで印象的……というかなるほどなと思ったのは、永遠に変わらないものの尊さや時間が進むことの残酷さを描きながらも、その中でどうしたって生きていかないといけない残された側についても描いていたところ。止まっていた晴人の時間を再び動かして、二度目の夜明けをもたらしたのは美咲だった。晴人が愛を込めて後を追うなんて展開だったら、それはそれで美しい純愛なのかもしれないけれど自分には刺さらなかっただろう。

手紙のシーンと言えば、その直前の晴人のシーンが痛ましい。明らかに手紙が届く流れなのでここで自殺に至ることはないんだと分かっていても、中島健人さんの鬼気迫る演技でゾッとした。泣きの演技でも静かな涙から慟哭まで、ファン必見だと思う。

中島さんだけでなく松本穂香さんの演技にも脱帽。老化が進んでからの姿はボディダブルが演じる可能性もあったそうだが、最後まで松本さんでよかったと思う。

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