ママンに送る詩㉓『換気扇は止まらない』
紐がちぎれて
換気扇が止まらない
ごおごおごおと
その音だけが鳴り響く
タバコを消して
紐を引いたらぶつりと切れた
もうやめろ
そんな天からの思し召しは
いとも容易くかき消される
吸いたきゃ吸いな
ごおごおごおと
そう言っている
最期を迎えるその前の日まで
好きなタバコを吸い続けた
酸素吸入器を入れたときも
部屋で吸えないとつぶやいた
僕らの肩を借りてでも
タバコを吸いに起き上がった
換気扇は止まらない
ごおごおごおと
鳴り続ける
母との最期の日々が
ぷかりと吐いた煙の中に
ふいにあらわれ
吸い込まれていった…
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