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心に残るゲーム 〜キングオブキングス(FC)〜

今もリメイクされる作品

 なぜこの作品を購入したかは、覚えていません。
 ただ、夢中になってプレイしたことは覚えています。
 好きすぎて、友達とボードゲーム版を作ろうとしたくらいですから。

 本作は、1988年発売のシミュレーションゲームです。
 1980年代では珍しい、ファンタジー系のウォー・シュミレーションでした。開発はアトラス、ナムコ(現・バンダイナムコゲームス)が発売したファミコンソフトで、私を含め、未だに根強いファンがいる作品です。
 ちなみに、この手のジャンルの代名詞といえるファイアーエムブレムはもう少し後の発売なので、とても異質なソフトに見えたのではないでしょうか。
 このゲーム、オリジナルはファミコンですが、後年にプレステでリメイク版が出ています。それだけでなく、2010年代に有志の方がファミコンテイストでリメイク(新マップや新ユニットが追加されたバージョンもある)したフリーPCソフトまであるのです。
 それまでのウォー・シュミレーションと違い、ユニットは勇ましい武将や現代兵器じゃなくて、RPGでおなじみのモンスターたちです。ゴブリンやリザードマンが斧や槍を手に戦い、グリフォンやワイバーンが空中戦を繰り広げるのです。
 なお、ファンタジーがベースですが、そこは1980年代のゲーム。萌える要素は小さじ一杯もないようなパッケージ。後でアトラスが開発と知り、ゴリゴリの硬派テイストなイラストレーションに妙な納得をしたものです。
 萌えの代表格(?)のエルフは、説明書のユニット紹介イラストはミスター・スポックのような耳が尖った、前髪パッツンのオジサンでしたからね。髪の色はピンクや青でなく、バッチリ黒で弓を片手にしているイラストはいかにも遠距離戦が得意なスナイパーな印象を持ちました。ゴブリンは凶悪な感じのイラストで、血の気の多そうな印象。その他も和製のファンタジーな要素は少なく、アメリカのTRPGのイラストに近いテイストでした。 
 さて、このゲームはシナリオを進めていくキャンペーンモードと対戦を想定したはマルチプレイモードがあります。キャンペーンモードでは、魔王ルシファー率いる軍がアトランティス大陸を征服する直前の状態から始まります。主人公であるキングはルシファーの征服を阻止し、反攻する使命を神々から託されます。そして、ルシファーに占領された地域を奪回して最終的にルシファーを倒すことが目的です。ストーリーが進むごとに使えるユニットが増えていきます。最終決戦で最強ユニットのドラゴンが加わったときには「つ、ついにドラゴンが……」と当時小学生の私は、一人モニターの前で感動していたのを覚えています。

当時小学生のワタシがしびれたこのゲームの魅力

 ファミコン全盛期の当時、このゲームは世界観やシステムに独特のものを持っており、最初はとっつきにくかった反面、なれてくるとどっぷり浸かってしまう魅力がありました。

 魅力1. 独特な世界観
 魅力2. ただの「ユニット」であること
 魅力3. 各ユニットの相性や地形効果の存在

魅力1. 独特な世界観
 前述した通り、このゲームはファンタジーをベースにした世界観をもとにシナリオを進めていくキャンペーンモードがあります。ただ、特に細かいストーリーがあるわけでなく、突然「キング(主人公)よ、このアトランティスをルシファーから救え」と神様の啓示を受けて、戦いに身を投じます。キング自体もどんな出自か説明はありませんし、なんで各ユニットを雇えるか説明もなく「手元の軍資金でユニットを雇ってください、収入増やしたければ街を占領してくださいね」という説明くらいで、プレイヤーはキングとして裸一貫から魔王の軍勢と戦うのです。心の汚れたオヤジになった今では「いくらなんでもあまりに無茶振りだろう」とか「こんなになる前になんとかしろよ、神様達」とか「内政コマンド無いのにどうやって統治しているんだろう」とか思ってしまいますが、当時の純粋な小学生の私は「そうか、いろいろ大変なんだな、いっちょ頑張ろう」といろいろ想像力を働かせていました。確か、学校の自由帳に細かいストーリーを夢想して書いていた覚えがあります。
 オジサンの無粋なツッコミを入れるよりも、今までファンタジーRPGで戦っていたモンスター達を率いて(一部違いますが)、魔王の軍勢とガチンコのぶつかり合いをする、というこの雑な世界観(褒め言葉)が、このゲームの最大の魅力だと感じます。ファミコンのドット絵(しかもあまり凝った絵ではないです)で繰り広げられる戦闘や魔王軍と戦うストーリーは、想像力を広げられる余地が沢山ありました。

魅力2. ただの「ユニット」であること
 当時の私が斬新だと感じたのは、各ユニットが「ただのユニット」であり、特に隊長のキャラクターなどはいないので、感情移入しないというところでした。歴史ものなどは武将が一人のキャラクターとして確立されていますので、やられてしまったらそれまでです。
 このゲームの場合、ユニットの差はなくても物量的に魔王軍の方が有利なので、少し育てたユニットなどが苦手ユニットに囲まれてあえなく全滅してしまうのはよくありますし、両軍の奪い合いになる要所では、ユニット同士の潰し合いが激しいこともよくあります。
 こんな激しい戦いなのに、隊長キャラがいたりすると大変です。お気に入りのキャラがやられないようにいろいろと考えて配置する必要がありますし、何か特殊能力持っていたりすると、後々の展開に影響するので、思い切って前線に出すことをためらったりします。
 しかし、このゲームの場合は名もないユニットです。思い入れも湧きにくいので、平然と足止めや捨て駒といった戦術が使えます。ルシファー側のユニットに中立の街を占領される前に、移動力のある飛行系のユニットで街に居座り、自国のファイターや飛行系に強いエルフが現地に行くまで粘るということは日常茶飯事ですし、ソーサラー系が召喚できるスケルトン、モンク系が召喚できるゴーレムを要所に配置して魔王軍の勢いをひっくり返すまで粘ったり、1体でもそれなりの戦いができるスケルトンのユニットを低レベルのソーサラーで量産し、消耗的な波状攻撃ということも出来ます。
 このような消耗品のような戦法が良しとされるゲームシステムであることに当時の私が衝撃を受けると同時に、戦いの進め方に幅広さを感じてのめり込んでいったのでした。
 また、このゲームの場合、ユニット自体は自軍も魔王軍も特に差はなく、均一スペックです。ファイターはファイター以上の能力はなく、自軍であっても魔王軍であっても、ゴブリンには弱いことは大差はないし、ナイトはグリフォンが苦手であることは両軍とも変わりません。各ユニットにはレベルがあるので、レベルが高いユニットは苦手なユニットでもそこそこ戦えますが、それ以上、同一条件下での戦闘で差がつきにくい、というのも公平さを感じて魅力的に移りました。当時のファミコンはバランスの悪いゲームはとことん悪くて、ちょっと進むのでも一苦労でしたので……。

魅力3. 各ユニットの相性と地形効果
 このゲームは、各ユニットに対してそれぞれ有利・不利といった相性を持っています。代表的なものとして、低コストの妖精ユニットであるゴブリン、ハーピー、エルフの3種類は「三すくみ」があります。ゴブリンはハーピーに弱く、エルフに強い。ハーピーはエルフに弱く、ゴブリンに強い。エルフはハーピーに強く、ゴブリンに弱い、といったものです。このようにそれぞれのユニットに対し、有利不利の相性を持っています。
 ユニットは経験値を積んで上がる「レベル」がありますので、レベルが高いユニットは不利な相手でもそこそこ戦えますが、やはり不利であることには変わりません。武将の力量である程度ゴリ押しできる歴史ものと違い、同じレベルであれば、地形効果があったとしても不利な相性はどこまでいっても不利なのです。
 ただし、例外があり、ナイト、ソーサラー、モンクのユニットはレベルがあがると上位職にクラスチェンジして、圧倒的な強さに変わります。これを狙って逆転するということも可能ですし、クラスチェンジを阻止するために優先的に狙って攻撃するという戦法も考えなくてはなりません。このような要素があるため、ユニットの配置の幅が広がり、より考える要素が出てきます。
 ナイトは数の減ったユニットを狙って、ハイエナのように掃討しながらレベルアップしてクラスチェンジしたら前線にグイグイでたり、補給できる街にソーサラーを配置して、ショボいながらも多量の経験値を得られるマップ攻撃を繰り返し、レベルを上げて早いクラスチェンジを狙ったり、モンクは補給魔法で経験を積んで、ユニット減らさずにレベルアップを狙う……このような作戦を考えることも魅力です。
 また、当然といえば当然なのですが、配置されている場所によって、相手ユニットからの攻撃を軽減出来たり、移動コストが変動します。このゲームの場合、この要素が結構重要で、いくら強いユニットでも地形効果がない場所にポツンと置かれると、あっという間に全滅ということも少なくありません。また、サーペントのように川や海では圧倒的な能力を見せますが、地上にあがると全然ダメな特殊ユニットも存在しますので、投入するマップとタイミングを考えることも必要です。
 決まりきった相性はあるが、クラスチェンジで苦手ユニットに大逆転、といった要素がとてもわかりやすくて面白く、こぞってナイトの最上位職であるドラゴンナイトを量産するのに躍起になったのは良い思い出です。
 本当はソーサラーの上位職のウィザードの方が量産するべきだ、と気がついたのはオヤジになってリメイク版を遊んだときでした。ドラゴンナイト、すごくカッコ良かったんだもん……。

30年以上たった今も遊びたい

 このゲーム、当時小学生の私では、魅力を周囲に伝えられず、また、自作でボードゲームを作ろうとしたものの、いろいろ難しくて挫折した苦い思い出があります。しかしながら、ファミコンに頼らずに自作してでも遊びたいと思わせる魅力があるのも、また確かなことでした。
 ファミコンを始めとして様々なゲームで遊びましたが、自作してまで遊びたいと思わせたゲームは、この作品以外には思い当たりません。
 プレステ版のリメイクはグラフィックも違って「これじゃない」という感じでしたので、有志の方が作ったファミコン風なリメイク版を遊んで「これだよ、これ」と感動してしまいました。このリメイク、難易度が調整されているため、結構難しいので途中まで進んでお休み状態ですが、何かの機会に再びプレイしてルシファーをボコボコにしたいと思います。

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