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ドラマシナリオ6「みやびのジャンプ」③

■前回までのあらすじ■

作品のテーマ(キーアイテム)は「写真」。石橋みやびは最寄り駅に掲載されている学習塾の広告にモデルとして参加した。撮影したのは営業マンながらセミプロの写真家として活動する兄・石橋晴人。依頼主である高田真司は学習塾の塾長であり、石橋の友人。兄から連絡を受けたみやび。それは兄から再び高田の塾の広告モデルになってほしいという依頼であった。


■シナリオ本編■

◯石橋家・外観(夜)

住宅街に佇む2階建ての一軒家。カースペースには軽自動車とワゴン車が停まっている。スポーツバッグを抱えてトボトボとあるくみやび。
入り口に『石橋』と筆文字で書かれた表札。ドアを開けるみやび。

みやび「ただいま」

下を向くみやび。玄関にはくたびれた黒の革靴。
奥からトイプードル(ジュディ)がダッシュでみやびに駆け寄る。明るい表情になるみやび。ジュディを抱きかかえる

みやび「ジュディ、ただいま。お兄ちゃんはもう帰ってるんだね」

クンクンと鳴くジュディ。抱きかかえながら家の中に入る。


◯同・キッチン(夜)

ジュディを抱えながら顔をキッチン入り口から覗かせるみやび。
テーブルでTシャツに短パンの石橋が夕飯を食べている。入り口に振り向いてみやびにご飯茶碗を掲げる石橋。

石橋「おう、ジュディ、ちゃんとお姉ちゃんをお迎えできたな」

テーブルの上には大皿に盛られた唐揚げ、キャベツやトマト、きゅうりで彩られたサラダ、アスパラのベーコン巻き、きんぴらごぼうなどが並んでいる。石橋の手元には缶ビールが置いてある。

みやび「今日は早いね」

石橋「ああ。真司との打ち合わせが早めに終わったんで、仕事切り上げて来たんだ。唐揚げ、まだ暖かいぞ」

缶ビールを一口飲んで唐揚げを頬張る石橋。ジュディを抱えながら石橋に向き直るみやび。

みやび「お兄ちゃん、夕方連絡受けた撮影会だけど……」

石橋「すまない、真司からご指名だ。結構反響あったみたいだぞ」

みやび「うん、さっき塾で高田先生からも直接頼まれたよ。……あのさ」

モグモグと口を動かしながらみやびに向き直る石橋。上目遣いで石橋を見るみやび。

みやび「(か細い声で)日曜、予定あるんだけど、出なきゃダメ?」

石橋「……時間は合わせるけど。真司が『みやびで頼む』って言っているからなぁ。何かあるのか」

みやび「恵子先生のレッスンのお手伝いと、そのあと、さくらちゃんとお買い物。あと……」

もじもじするみやび。

みやび「塾でも帰りの駅でも見たけど、何か自分が写ってポスターって、恥ずかしい……気がついた子から結構メッセージ来るし」

石橋、缶ビールをあおり、缶を振ってから置く。乾いた音。テーブルに座り直し、ため息をついて腕組みする石橋。

石橋「やめとくか? 気乗りしないモデルを写しても、いい写真が取れるわけないし……」

みやび「……考えさせて……(首を振り)いや、大丈夫……」

石橋「……まあ、いいや、とりあえず、着替えて夕飯食べたら?」

箸で唐揚げをつまんでみやびに笑う石橋。苦笑してうなずくみやび。


◯同・みやびの自室(深夜)

四畳半程度の部屋。室内灯が点灯している薄暗い部屋。古ぼけた学習机があり、壁に制服やジャージがハンガーで掛けられている。
頭の後ろで腕を組んで、ベッドに仰向けに寝ているみやび。ジュディはみやびのお腹の上で手足を伸ばして寝息を立てている。
みやび、天井を見上げながらジュディを撫でる。首を向けて視線を移すみやび。
舞台の上で踊っているみやびの写真、ジュディを抱えて笑顔のみやびの写真が小さなフォトフレームに入って壁に貼られている。
ジュディを撫でながら、写真を見つめるみやび。


◯バタフライダンススクール・外観

5階建ての雑居ビル。3階に『バタフライダンススクール』の文字と蝶がディフォルメされたイラストが描かれた看板が掲げられている。
ビルの入り口には『バタフライダンススクール』『生徒募集中 キッズクラス 社交ダンス HiPHOP 各種クラスあります』と書かれた立て看板。


◯同・スタジオ

軽快な音楽が流れるスタジオ。鏡が貼られた壁に立って踊るタンクトップとレギンス姿の小林恵子(27)。恵子の後ろには、年齢は様々な小学生が整然と恵子に合わせて踊っている。
スタジオの後方でリズムに合わせて軽めに踊るTシャツとレギンス姿のみやび。子供たちの様子を見ながら体を動かしている。。
最前列の子供はキレのある動きだが、後ろの列の子供はおぼつかない。
タヌキのキャラクターがプリントされたTシャツを着た香澄(9)、恵子や他の子供達についていけず、涙目でみやびに振り返る。みやび、柔和な表情で香澄に近づき、一緒に踊る。パッと表情が明るくなる香澄。
鏡に写るみやびと香澄の姿を見て、ニッコリしながら踊る恵子。


◯同・エントランス

子供や親でごった返すエントランス。
リュックを背負ったパーカーにGパン姿のみやび。ペットボトルのミルクティーを飲んで大きく息を着く。ハッとしてスマホを取り出す。
スマホを覗き込むみやび、困った顔。後ろから笑顔で駆け寄る香澄。

香澄「ねえ、みやびせんせい!」

笑顔になり香澄に振り向くみやび。スマホをGパンの尻ポケットにしまい、中腰で香澄に目線を合わせる。モジモジする香澄の頭を撫でる。

みやび「香澄ちゃん、学校行けてる?」

首を振る香澄。沈んだ表情。頭を撫でて肩に手を置くみやび。

みやび「……大丈夫。こうしてスクール来てるじゃない。ダンスが上手くなれば、自信もついて、学校も行けるわよ」

ニコリと笑う香澄。みやびの背後にある、学究館のポスターを指差す。楽しげにジャンプするみやびの姿がポスター中央に据えられている。
振り向いて、ギョッとするみやび。

みやび「……!」

香澄「これ、みやびせんせいでしょ? カッコイイなぁ。他のポスターもあるんでしょ? 見たいなぁ」

ウットリとした顔でみやびにまくし立てる香澄。苦笑いのみやび。


◯オコノミー・外観

アンティーク風外装の店舗。入り口に『School style SHOP オコノミー』と金属版の文字がアーチ状に配置されていて、立て看板に『制服ショップ あなたのお好みの制服でお出かけしましょう』『ブレザー スカート 小物 各種取り揃え』と書いてある。


◯同・店内

はしゃぎながら、店内の制服を物色するさくら。後について店内を回るみやび。リュックを背負い直す。
マネキンにディスプレイされたワインレッドのブレザー。さくら、マネキンに気が付き、駆け寄る。しげしげと眺めてみやびを振り返り、笑顔で手招きする。みやび、さくらに歩み寄る。

みやび「……」

嬉しそうにブレザーとみやびを見比べるさくらの様子をじっと見つめるみやび。


続く

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