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Zaim アプリの所有者権限を変更した際の苦労話

はじめに

くふう AI スタジオで Zaim のアプリを担当している住田です。

今回は、Android 版 Zaim アプリのアカウント所有者を変更したときに苦労したことについてお話しします。

背景

2023 年 7 月にくふう AI スタジオが誕生しました。
Zaim からくふう AI スタジオになった関係で、 Google WorkSpace のプライマリドメインを kufu.co.jp に統一し、メインのメールアドレスとして kufu.co.jp ドメインを使うことになりました。
ちなみに、旧 zaim.co.jp ドメインもセカンダリドメインとして登録しています。

メインのメールアドレス変更に伴う様々な移行作業の中で、アプリに関係するものとして iOS と Android のアプリの所有者( iOS は AccountHolder、Android は Account owner)のメールアドレス変更がありました。
iOS は AppleID としてメールアドレスを使っているだけなので、最悪の場合、旧メールアドレスでのメール受信さえ維持できれば良いのに対し、Android は Google にログインできる必要があるため、コスト等を考えると移行が必須でした。

契約の関係で移行のデッドラインは 2023 年 12 月中旬。
余裕を見て 11 月中の完了を目指して、2 ヶ月くらい前から準備を開始しましたが、かなりギリギリでした。
なかなか経験することがないと思いますので、何かお役に立てば幸いです。

事前調査

手順を調べていくと、どちらも現所有者のメールアドレスだけを単純に変更することはできず、新ドメインのメールアドレスでアカウント登録をして移行する必要がありました。
管理者権限だけなら複数ユーザー登録できるため、普段のアプリの運用においては特に困らないのですが iOS/Android ともに所有者でないとできないことがあります。

公式ドキュメントを調べた結果、所有者移行のイメージはこんな感じでした。

  • iOS

    • App Store Connect にアクセスできる別ユーザーに所有者の権限を移すイメージ

  • Android

    • 別のデベロッパーユーザー個人に、関連リソースを全て譲渡するイメージ

iOS の方は、新ドメインで新所有者のメールアドレスを作成、 App Store Connect にユーザー登録して、現所有者から委譲リクエストするだけでした。
公式ドキュメントによると新所有者の本人確認が必要な場合もあるらしいのですが、今回は同じ組織内だったからか特に何もなく完了しました。

それに対して Android の方は、手順や準備物等が多く大変でした。

参考情報

Android アプリの所有者変更の参考にした資料は主に以下 2 つです。調べても最近の他社事例がほんとに見つからなくて大変でした。

  • 公式

  • ブックウォーカーさん2021/12頃の事例

苦労したところ

おおまかな手順は、上記の公式ドキュメントや他社事例と重複するので割愛します。
ここでは、特に苦労した点を取り上げます。

法人のデベロッパーアカウント作成が大変

新所有者として法人のデベロッパーアカウントが必要なのですが、いくつもはまりポイントがありました。

デベロッパーの連絡先登録が大変

バックオフィスの方に Google からの音声メッセージが届いたら教えてもらえるようお願いした上で、代表番号(固定電話)を登録しました。
なぜか音声メッセージが届かず、何度か試したところ、しばらく待つようにとエラーメッセージが表示されてしまいました。
日を改めて実施してなんとか登録。

何度か試してエラーになったところ

本人確認のための銀行登録が大変

公式ドキュメントには 25 円未満のランダムな金額がデポジットとして振り込まれるので、その金額を入力することとなっており、事前に正確な金額や振込人の名前がわからない状態でした。
経理担当に事情を話して毎日着金確認してもらってなんとか確認できました。
実際には ”グーグルペイメント” から 24 円の入金でした。

振り込み名義を明記して欲しい…

米国税務情報登録が大変

公式ドキュメントには必要書類が  "会社設立証書、登記簿、税務署からの何らかの書類、納税証明書" となっていたので、登記簿(履歴事項全部証明書)を使ったのですが 1 回目は NG でした。
理由としては、おそらくですが書類に会社名の英字表記がなかったためのようです。

以下の理由により本人確認ができませんでした。 • 組織を証明する書類: 入力した組織名が、確認のために提出された書類に記載されている組織名と一致していません。提出した書類に記載されているものと完全に一致する組織名を入力していることを確認してから、情報を再度送信してください。

法務担当と相談し、挙げられていた書類とは違うものの英字表記の記載がある定款を提出したところ OK となりました。

サービスアカウントの引き継ぎ方法がわからない

Zaim ではサブスクリプションのレシート検証や、アプリの CI 関連などサービスアカウントを使用しているので、これらを移行しなければなりません。
残念ながら他社事例は少し古いためか Google Play Console の内容が変わっており参考にできません。

 Google Play Console の API アクセスページには廃止のメッセージ

 Android チームのメンバーと Google Developer API のドキュメントを調べていたところ、日本語ページが古く、英語ページのみ最新になっているようだとわかりました。(2023/11月下旬時点)

日本語ページには廃止されている API アクセスページのことが書いてある
英語ページは GCP のサービスアカウントのことが書いてある

引き継ぎ方法として書いてあったわけではないですが、既存の Google Cloud Project のサービスアカウントを使う方法を見つけたので、それでいけるのではということになりました。
具体的には、Google Play Console の ”ユーザーと権限” で、使っているサービスアカウントを権限含めて事前に招待しておきました。

サービスアカウントの例

移行完了がいつになるかわからない

新所有者が承認後 2 営業日程度で移行完了となっているだけで、事前に正確な時間はわからないようでした。
何かあっても対応できる時間があった方がよいと考えて週初かつ直近リリース作業のない 11/27(月)の午後に移行リクエスト実施、11/29 に完了メールが届いたので、実際に 2 日程度のようです。

新所有者側で移行リクエストの承認
新所有者へ移行完了の通知

移行結果

幸いなことに、ユーザーさんに影響を与えるような大きな問題は起こりませんでした。
一番不安だったサービスアカウントによるサブスクリプションの処理が動いているのを確認できたときは、かなりホッとしました。

一点だけ、翌月頭にマーケティング担当から広告関連のレポートが移行完了日以降のデータしかないという報告があり、旧所有者のコンソールからダウンロードをし直したことくらいでした。
ドキュメントに従って、移行申請直前にレポート一括ダウンロードをしていたのですが、タイムラグの分はあとで取得する必要があるようです。

ちなみに、レポート一括ダウンロードは、ChatGPT に聞きながら gsutil でサクッとできてよかったです。

gsutil の使い方を教えてもらった

感想

通常のプロダクト開発とはちょっと違う種類のタスクで、正しい手順もわからず関係者も多くて大変でしたが 2 ヶ月くらいずっと頭の一部を占有し続けた巨大なタスクが無事に終わってほっとしました。
もし次回があるとしても、きっと細かい手順も変わっていると思うし、できれば 2 度とやりたくないですね。

くふうAIスタジオでは、採用活動を行っています。

当社は「AX で 暮らしに ひらめきを」をビジョンに、2023年7月に設立されました。
(AX=AI eXperience(UI/UX における AI/AX)とAI Transformation(DX におけるAX)の意味を持つ当社が唱えた造語)
くふうカンパニーグループのサービスの企画開発運用を主な事業とし、非エンジニアさえも当たり前に AI を使いこなせるよう、積極的な AI 利活用を推進しています。
(サービスの一例:累計 DL 数 1,000 万以上の家計簿アプリ「Zaim」、月間利用者数 1,600 万人のチラシアプリ「トクバイ」等)
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