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#音楽
日本のオルタナティブな名盤 (5) 大石晴子「脈光」
2010年代後半に海外で70〜80年代のジャパニーズ・シティポップが「再発見」されたことを契機に、国内でもネオ・シティポップと呼ばれる音楽が注目を集めた。流行は一段落したが、これを機にシティポップのような音楽を好む層に響く音楽が量的にも質的にもボリュームアップした印象もある。
大石晴子「脈光」は2022年にリリースされた彼女の1stフルアルバムだ。2019年にリリースされたデビューEP「賛美」は
日本のオルタナティブな名盤 (4) 折坂悠太「呪文」2024年
「夜香木の 花が 咲いて」
折坂悠太の「呪文」を聴いてから、無意識に「夜香木」のフレーズを口ずさむようになった。
緩やかで何処か切ない旋律と、市井の人のささやかな日常を切り取ったような飾らない歌詞、そしてシンプルなアコースティックバンドのアンサンブルはどことなく郷愁を誘い、自分という人間を構成する成分のどこかが呼応しているような気がする。
自然と口ずさんでしまうというのは、多分そういうことだ。
日本のオルタナティブな名盤 (3) 長谷川白紙「エアにに」2019年
長谷川白紙はいつも期待を超えてくる。新曲が配信されると、今度はどんな曲だろうとテンション爆上がりし、再生アイコンに触れた瞬間に弾け出す色とりどり煌めいた音の結晶にぶちのめされる。この快感が本当に堪らない。
長谷川白紙の音楽の特徴の一つはその情報量の多さだ。例えるなら1970年代のプログレッシブロックバンドが15分以上かけて表現した大作を4分間にぎゅうぎゅうに詰め込んだような。それはBPMを上げた
日本のオルタナティブな名盤 (2) WONK「Sphere」2016年
2012年にロバート・グラスパー「Black Radio」がリリースされ、ジャズと呼ばれるジャンルで表現される音楽が劇的に拡大し、その境界線も曖昧となった。
ジャズがR&Bやヒップホップと融合することは異端ではなくなり、ありとあらゆるジャンルをジャズと融合させる音楽実験も世界各地で盛んに繰り広げられるようになった。
それまで停滞していたかに見えていたジャズの世界が目に見えて動き出した瞬間である。
日本のオルタナティブな名盤 (1) 青葉市子「アダンの風」2020年
…架空の島に生まれ育った予知力を持つ娘が言葉のない島『アダンの島』へ送られ、そこで『クリーチャー』という謎めいた存在に出会う…
謎めいたプロットを元に「架空の映画のためのサウンドトラック」というコンセプトで創作された2020年リリースの作品。
青葉市子自身が沖縄や奄美の島を訪れた体験が作品の源になっているが、沖縄の音楽をモチーフにした作品ということではなく(琉球音階を取り入れた曲はあるが)、音
MONDO GROSSO「BIG WORLD」が凄すぎた
“変わってしまった世界、さらに変わっていく世界の中で、心の在処を探し続ける音楽の旅“ というコンセプトで2022年2月8日リリースされた、MONDO GROSSO『BIG WORLD』。
この2年間、世界中の人々が思いもよらない脅威に少なからず巻き込まれました。当たり前が当たり前でなくなり、様々な喪失を目の当たりにし、感情の荒波に飲まれたり、悩み考えるうちに人生観が覆ってみたり。
この未曾有の
cero「e o」〜ポストパンデミックの都市音楽〜
ceroの新譜「e o」は不思議な音楽だ。
2023年5月に配信開始となって以降、気づけば延々と聴き続けている。
朝も、夜も、家でも、外出先でも、どんな場面でも、飽きることなく。
まるで清涼飲料水のように身体に染み渡っていくこの感覚は一体何なのだろう。
元々ceroは特定のジャンルに依存しない独自性の高い音楽を作り続けているが、本作は正にノンジャンル、説明の難しい音楽だ。電子音楽の範疇では