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国際感覚2 -やってはいけないこと ~こころをつなぐもの~

過去に2ヶ国での海外駐在勤務と、20ヶ国での長期出張(生産技術者なので、主に工場立ち上げ)を経験して、海外で外国人と仕事をするときに気を付けるべき「やってはいけないこと」(逆に言うと、日本人が陥り易い失敗)を3つ説明します。
 
1.日本語で話す
 
日本人複数と外国人(現地人)という場面が割とよくあります。その時に、絶対に日本語で会話しない。日本人同士が下手な英語で会話する、というのは伝わりにくいし、気恥ずかしかったりするものです。でも一言も日本語会話を出してはダメ。これをやると、現地人との信頼関係が見事に崩れてしまいます。
 
2.人格に対する主観的な断定
 
欧米人は割と議論中に「いいえ同意しません。あなたの意見は意味がありません、なぜなら~」といった話し方を平気でします。日本人の会議なら「ヒヤリ」とした空気が流れ、ひとによっては「奴はあの時・・・覚えておけ」のように根に持つ人もいるでしょう。
 
なぜこのような違いがあるかというと、欧米人はあくまで「サブジェクト」に対しての議論をしているので、割と自分から切り離しているのです。一方日本人は(特に旧いタイプの人)、「人生観と人生観の戦い」のような面倒臭いものを背負って話している人がいるので、議論が感情やプライドと結びついてしまうことがあり、厄介です。

逆に言うと、「人格に対する主観的な断定」をし始めると、欧米人は「キョトン」とします。代表例は
・あなたの考えは甘い
・頑張りが足りない
・やる気がないのか
等々。「仕事の話をしていたのに何で突然個人の人格攻撃に変わるの?」となって、高確率で訴訟リスクとなります。
 
日本人ビジネスパーソンの中には昭和を引きずっている人がいて、「『仕事道』を通じた精神修養が、私が教えるべきことの一つだ」とか面倒臭いものを掲げている人がいますが、少なくとも欧米、アジアでも多くの国で、周りの人はそんなことを求めていません。
 
3.“イズム”の押し付け
たまに「日本から使命を帯びた“イズム”をこの地の人々に」みたいな余計な使命感を持ち込む人がいるのですが、これも必要ありません。必要なのは現地のチームが、その土地のやり方でうまくビジネスが回るようにすること、それだけです。
 
これに関してはこんなことがありました。
 
まだ海外駐在経験のない後輩と話をしていた時のことです。「海外赴任した時にはどんな心構えを持つべきか」というような話題に及んだ時に彼は言いました。
 
「その国に行けばやはり言語の壁、文化の壁も高いでしょうから理解し合うにも時間がかかるでしょう。だから私は決してあきらめずにしっかりと対話を重ねてお互いを理解し合いたいと思います。同じ人間ですから、対話を重ねればきっと私たちのやりたいことを分かってくれるものと信じています。」
 
私は彼のコメントを非常に危険だと思い、次のように教え諭しました。
 
「君の今のコメントを配役を変えて、物語風に再現してみよう。いいかい。」
 
~物語~
 
とある東南アジアの仏教国。日本のわが社はその国のとある企業に買収されました。
東南アジアのその国からは、来月から取締役として私の働く部署に部門長が派遣される予定です。
その某国から日本に派遣される予定の次期部門長が、元の職場の同僚と会話しています。
 
「いやびっくりだ。突然の辞令だったが来月から日本に赴き、日本人の組織・チームを引っ張ることになった。日本のことはメディアで見聞きするし、日本料理も大好きだが私は日本に行ったことはない。極東の島国で独特の歴史を持つユニークな国だ。相当なカルチャーショックや違いがあることは間違いない。でも私はこう考えている。」

「国や文化は異なれど、人間は同じだ。あきらめずにじっくり対話を重ねれば分かり合えると私は信じている。私たちがこの国で実現している崇高で尊い生活、すなわち仏の三宝(仏・法・僧)を日々の生活の中で敬い、成人すれば必ず出家得度を経験して生活と仕事の両面で豊かな精神性を持ち進む世界。彼らもいつかは理解を示し、同じ道に進んでくれると私は信じている。だから私は少しずつ、慌てず粘り強く、彼らと対話することを決して諦めない。」
 
私は後輩に問いました。「どうだい、気持ち悪いだろう。そんなの必要ない、って思わないか?」
 
以上、海外勤務する際に気を付けるべき、日本人が陥り易い3つの罠でした。

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