見出し画像

台風中継って何だろう?

子どもの頃から、「台風中継」に関する疑問を持っておりました。
 
雨合羽を着たニュースキャスターがビニール傘を差し、暴風雨によろけながらの中継です。
 
「現場の田中キャスター、現地はどのような様子ですか?」
「うわっ・・・まともに立っていられません!○○海岸はご覧のように波しぶきが叩き付け、あっ・・・このように傘も一瞬で壊れ・・うっ、・・・大変危険な状態です。」
 
ニュースは文字情報です。このニュースに関しては、スタジオのキャスターがこのように伝えることと何の違いがあるのでしょうか。
 
「それでは台風のニュースです。○○海岸現地を取材した田中キャスターはまともに立っていられませんでした。○○海岸の波しぶきが叩き付け、傘が一瞬で壊れ、大変危険な状態でした。はい、では次のニュースです。」

更に私の疑問は「大手メディアワシントン支局特派員」に及びます。
 
「この演説で、バイデン大統領は○○国へのけん制の姿勢を明白にする意図があったものと考えられます。以上、ワシントン支局の××特派員がお伝えしました。」

ワシントンから伝える必要は?彼が大統領の意図を個人的に確認できるなら特派員の価値もあるけれども。
「××特派員、今回の演説での大統領の意図は何かねえ?」
「ああはい、じゃあボク、ワシントンに駐在しているんで、バイデンに電話して聞いてみますよ。」
 
情報源としては大統領の演説しかないわけでしょう?だったらその内容はワシントンにいなくても世界中どこへでも伝わっている。
 
むしろ東京のスタジオから想定外の質問をして、放送事故でも起こしてほしい。
「××特派員、今回の発言に関して、バイデン大統領の個人的な感情はどのようなものだったんですか?」
「いやいや、友達じゃないんだから、そんなの分かるわけないでしょう。
以上、ワシントン支局から××特派員がお伝えしました。」
 
こういうのは挙げたらキリがありません。
ニュースで聞いたことのある言い回し。
「外務省は駐在××大使を呼び出し、異例の猛烈な不快感を伝達しました。」
 
「猛烈な不快感の伝達」ってどんな感じ?
伝達は文字情報だという立場を貫くなら、書面を渡せば良いわけです。
外務省係官と某国大使は互いに微笑みの表情で、
賞状授与のようなスタイルで書簡(猛烈な不快感が記入済)を手渡しして
「猛烈な不快感を伝達します。」
「伝達されました。」とか言っているのだろうか。

異例の猛烈な不快感の伝達

実際はどうなのだ?特派員はその場で見たとでも言うのか?
外務省係官は地団駄を踏み、机をバンバン叩いて
「ンモォーッ!!ンモォーッ!!モーレツ!」。
顔を真っ赤にして髪をかきむしり、
「だから言ったのに、なーんーでぇー!ア゛ーーッ!!」。
呼び出された大使はむしろ半笑いです。
外務省係官は不快が猛烈すぎて今日の他の業務は全く手がつきそうにありません。

結局伝聞というのはは当事者感がどれだけあるかなのですよね。
戦場カメラマンが弾をかい潜って見たこと、登山家が極限の状態から生還したことを話せば人は耳を傾けるでしょう。
 
悲惨な戦争の当事者が語り部としてお話を伝え行くのも同じです。
 
そう考えると、言葉が力を持つには何を喋るかではなく、何を経験するのかなのだろうな、という当たり前のことに気付かされます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?