遠距離&ダブルケア 孤立する家族に寄り添いたい
介護家族のケアについて殊に意識するようになったのは、
この女性との出会いがあったからでした。
老人ホームのロビーで月に2回、
フットリフレクソロジーを提供していた時の話です。
ある日、ひとりの女性が館内を歩いていました。
歳は30代くらい。見かけたことのない人でした。
「あの… 私も受けられますか?」
ためらいがちにこちらにやって来ました。
「もちろんです!どなたでも大丈夫ですよ」
と席へ迎え入れました。
座席に座った女性の足はとても緊張していました。
「今日は面会ですか?」
「いえ、母の事で相談したくて。こちらで何か情報をもらえないかと思って…」
彼女の話によると、実の母親が認知症になったようで、
昼夜関係なく繰り返し電話を掛けて来て困っているとのこと。
心配だから母のそばにいてあげたいけれど、
小学校に上がったばかりの娘がいて、まだ目が離せない。
夫は仕事が忙しく、子どもや家事を任せる事はできない。
そして、実家は秋田。そうそう頻繁には帰れない。
(ここは東京都下。東北は遠い…)
「もう、どうしたらいいか分からなくて。」
彼女は途方に暮れた様子でした。
「友達にも相談するんですけど、認知症とか介護とか、みんなまだピンと来ないみたいで、分かってもらえないんです。」
(きっとお友達も30代、まだ介護への関心が薄いのでしょう)
女性の周りには力を貸してくれる人が無く、
ポツンと孤立し苦悩しているようでした。
表情や身体の緊張具合から、
我慢を重ね気持ちを抑え込んでいる状況が見て取れました。
私からは役立つアドバイスは一つもできないけれど、
その気持ちを汲み取って、いたわることはできます。
聞き役に徹し、いたわるようにゆっくり丁寧に足をほぐしていきます。
女性はひとしきり話し終わると、目を閉じました。
「リラックスできました。こういう時間は久しぶりだなぁ…」
「また来てもいいですか?」
「もちろんですよ!いつでも来てください」
残念ながら、この女性と再会する機会に恵まれませんでした。
でも、ことあるごとに彼女の事を思い出します。
その後、彼女とお母さまに支援の手が届き、
笑顔で過ごしていていれば…と、今でも心から願っています。
まだまだマイナーな職業です。ご支援いただけましたら嬉しく思います。なお、いただきました御厚意は今後の活動資金に充てさせていただきます。