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経営会議の着眼点

こんにちは。CTOの松本です。最近、子供が自分にもできないこと(具体的にはバイオリン)をできるようになって成長をしみじみ感じています。

本日はLayerX Advent Calendarの41日目の記事としてブログを書いています。昨日は行動量の考え方について書いたのですが、今回のお題は「経営会議」ならびに重要な意思決定をする定例的な場におけるコミュニケーションになります。

経営会議での議論

皆さんの会社にも、経営会議や重要な意思決定の会議体が必ず設けられているかと思います。例えばそれはスプリントミーティングかもしれませんし、プロダクトバックログを整理するなんらかの場があったり、定例的に何を取り組むか考える場があるかもしれません。どんな会社にも一定のフォーマットにそった会議体があるものと思います。

こうした会議では、「正しい方向に向かう」が最も重要なことだと思います。それに合わせた試行錯誤ができているのか、また見逃している課題はないか、様々な軸から考慮し意思決定していくことになります。意思決定というものは長く調査してリスクを潰せばよいというものでもなく、素早く適切なタイミングを見計らって行う必要があります。慎重過ぎては機を逸しますし、大胆すぎては大きなダメージを負うことでしょう。

こうした会議については自分が参加することが大半なのですが、ここで何を意識すべきなのでしょうか。自分としていつも意識しているのは、モヤッとした課題を残さず様々な視点から選択肢が議論され尽くすこと、だと考えています。

この議論し尽くす、というのはとても難しく、洗い出すべき軸は物事に応じて多種多様、それを制限時間内に触れていく必要もあります。これを実現するには様々なテクニックがあります。

自分の経営会議において意識している立場の一つが、意図して様々な立場からこうした議論の促進を図る事だと考えており、福島や様々な経営陣が正しい意思決定に到れるよう、議論しつくせる場を設けていくことなのかなと思います。

その中でテクニック的に注意しているものがいくつかあります。整理的議論、意識的反対意見、時間跳躍、BlitzScaling、社内外の対比の5つの観点
になります。

整理的議論

議論をする際、目の前の課題について議論していると、特定の論点についてヒートアップすることはしばしばあるのではないでしょうか。例えばコスト側面で議論が進むことで、その点の解像度は上がるものの、果たしてコスト自体が論点なのか?ということは多々あります。

我々は人間なので、どうしても目の前に提示された論点や直感的に気になった論点に執着してしまうことも多々あるかと思います。

一方で、意思決定というのは非常に多面的なものでもあります。コストやスピード、品質、スコープなど様々な変数を考慮した上で意思決定する事となるでしょう。この多面的なものを議論し尽くす視点がかけてしまうと、なんとなくもやもやとしたものが一部のメンバーに残ったまま、残り時間がなくなって意思決定してしまうこともあるでしょう。

こういった事態を避ける意味で、物事を整理するという役回りが必要になります。多面的な理解をロジカルに、時にグラフィカルに整理することでメンバーの議論をより高度なものへ昇華することで、より良い意思決定につながるのではないでしょうか。

この観点で、自分は常に以下の点を意識するコミュニケーションを大切にしています。
・選択肢を明らかにする。
・選択肢を比較する軸を整理する。
・選択肢の比較表を提示し、議論を整理する。
どんな意思決定にも、比較する様々な選択肢がある中で決めることが大半可と思います。選択肢が連続的な数値を取るケースは少なく、基本的にはいくつかのパラメータを極端な値に設定しながら調整していくことになるため、こうした組み合わせを選択仕事に整理し、メリット・デメリットを整理する事が重要です。

こうした整理が行われると、あとはプロジェクト上で重要な考え方に沿った意思決定や、選択肢の中で曖昧になっている項目の検証といったアクションに繋がり、着実な意思決定が可能になるのだと考えています。

こうした議論整理は、意識してその議論の輪の中でそうした立ち振舞を行わねば進みづらいものです。特にファシリテータが不在なケースでは整理的な議論の進め方を丁寧に行う立ち回りをする人がひとりいるだけで、議論の解像度がぐっと高まるのではないでしょうか。

意識的反対意見

また、全体整理だけではなく、意識した反対の立場からの意見というのも有用です。特にもやっとしたものが引っかかる、直感的に気になるケースではこうした対話が有用です。

その直感を言葉として炙り出すためには、今の意思決定と反する立場から眺めて差分を明らかにすることが役立ちます。Aという意見に対して、全く反対となるnot Aの立場から意見を整理してみると、案外とそれを肯定するロジックを組み立てられたり、その視点から得られるインサイトに気づきがあります。

あえて、各メンバーの意見に対する反対の立場から眺める立ち回りを(口にするにしろ、心に秘めるにしろ)取ることは、多様な視点を議論にもたらす容易な手段です。その観点と賛成側の観点を比べていくことで、不明瞭となっている論点を取り出したり、論点の言語化ができるようになるでしょう。

時間跳躍

全体の整理、意見の視点的な多様性を持つ事以外に、時間軸の意識が重要な論点としてあります。今答えであるということと、3年後の答えは違うかもしれません。その間で様々な変化が生まれることを見落としてはなりません。

ですので、特に大きな意思決定、例えば組織編成や採用計画、事業計画の作成時は、その計画について様々な未来の時間軸に立ったときの状況を考えてみましょう。

採用で言えば、そのリードタイムからオンボーディング完了までを考えるとそもそも長い待ち時間があったりします。半年〜1年ということがザラでしょう。とすれば、採用計画事態中長期計画を睨んだものをある程度汲み取ったものである事が必要です。とした時に、1年後、2年後に事業はどういう状況になっているのか、その時の組織の状況はどのようなものか考える必要があります。

また、事業計画においても、1.5年後の計画を仮に引いたとして、その数値が売上に対する回帰予測的な単純な計算から生まれた数値だとしたなら、その前提にある数字が数年先になぜ変化しないのか考えてみましょう。例えば顧客のチャーンレートは重要な時系列に影響を与える指標で、これを真面目に経営計画に反映させると、案外と成長が止まってしまうラインが見えてくるものです。

こうした時間軸で数字や組織がどのように変化するか、意識して目線を向けてみることで、時間が事業に与える影響を加味しての議論が可能となります。

BlitzScaling

さらに、計画を飛躍させる思考、というのも議論において有用です。10x的な思考であったり、Blitz Scaling的な思考と勝手に考えているのですが、こうした思考を持てているのか、安牌な計画を引いていないかというラインの見極めとしてこうした思考が便利です。

例えば、今出されている経営計画の数字を数倍にしよう、と提案してみるとそれぞれの担当者からはそんなの無理だと言う反応も出るかも知れません。しかし、そこでなぜ難しいのか聞いてみると意外と整理されていなかったりします。

ここで、実際に大きなスケールをする過程で議論を進め、それが不可能であることの要因を探っていくことで、スケールするにあたってのボトルネックを見出すことができます。それが例えば顧客獲得から来るのか、定着率から来るのかなど様々あるかもしれませんが、限界を規定するファクターが見えてくれば、あとはそれをどう突破するか議論が可能になります。

時には今の延長に無い施策を考えていくことになるでしょう。今持てている手段だけでは見えてこない手段を無理やり見つけていくことがスタートアップの成長局面では多々求められてきます。ですので、想定を大きく超える成長を仮定して計画を再計算する中でその具体的な道筋を見つけていくことが大きな手助けとなることでしょう。

大胆な施策を見つけるには、不可能とも思える達成要件を提示しつつ整理していくことも有用なコミュニケーションとなりえます。こうした手段を活用することで今自身の組織で見えてないものをあぶり出していくことが成長手段の発見に一役買うものと思います。

社内外の対比

ここまでは社内での考え方を持ち出しましたが、もう一つ重要なのが社外との比較です。もし今議論していることそのものは社外で取り組まれていないにしても、その一部や類似事例をインターネットや聞き込みから見つけることは可能でしょう。こうした知見を活用して自身の意見を社外と相対化することで不足や常識とのズレが見えてくるものです。

この観点で、経営者としては様々な組織の人々と意見交換をすること、それを理解し血肉に変えて自身の意思として発信できることが重要です。社会全体に転がっているファクトを活用し、社内の意見をぜひ比較の俎上に乗せ、より解像度高い議論を進めていきましょう。

最後に

ここまで自分が意見を発する際に考えている議論促進の手法5つを書いてきました。経営会議に関わらず、議論をするというのは大事なプロトコルで、これを通じて物事を進めていくことで、相手の考え方を理解し、より良い解を生み出すことに繋がるでしょう。まだまだ、議論のテクニックはファシリテータの手法など調べる中で様々出てくるかと思います。

こうした議論を行う手段、道具を豊富に持つことで、ぜひより良い事業改善が生まれていけば幸いです。

ちなみに以前、経営会議の方法論についてもブログに書いたことがあるので、よろしければそちらもご覧ください。

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