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組織の弾み車を回すこと

DMM.comのCTOに就任してから丸2年が立ちました。時間というのはあっという間に過ぎていくものですね。COVID-19による環境の激変もあり、想定外の対応に追われる1年でもありました。

昨年は具体的なオペレーションに関与している割合が多かったのですが、直近では考え方や方針づくりに終始している日々です。人事や総務、経営管理も管轄することになり仕組み化を目指してきました。また、CTOからみた経営とソフトウェアの関係や事業推進の考え方について、組織のメンバーはもちろん社外の方へもお伝えする方法を模索する一環として、noteのマガジンなども始めています。

嬉しいことに、自分が引っ張るではなく様々なメンバーが自律的に動くことで改善が進み始めた1年となり、自分は本当にちょっとした方向性の議論やサポートに回るようなタイミングが増えています。テック組織は独りでに改革が進む、そんな状況になってきました。

ちなみに1年前の振り返りでは具体的な施策を組み立て進めてきた話を書いていますが、今回も振り返りを社内やDMMに興味のある方々に向けて書いてみようと思います。

この1年でやってきたこと

昨年度と比べ、エンジニアリングによる事業貢献という点でアクションが増やせました。成果も上がり始めました。特にデータサイエンスでの事業貢献が着々と積み上がり続けており、これは売上だけでなくオペレーションの省力化なども実現するだろう未来が見えています。

この1年の取り組みを、公開できる、すでにされている範囲でいくつか抜粋してみました。

Agility貢献

サービスのクラウド移行:特にクラウド側でトラフィックを賢く制御しつつオンプレ・クラウドの棲み分けや移行を支援する基盤が整いました。

SRE活動の本格化:特に一部事業にリソースを集中しながらモニタリングやCI/CDなどのDevOpsの洗練化を図っています。障害の検知から復旧までの速度改善、上記のクラウドへの移行支援などを進めてきました。

QA部門立ち上げ:自社で品質保証の知見を集約し、特に自動化を進める専門部隊を構築しています。

モノリスの分割:主要事業が共有するシステム群を事業ごとの分割を進めています。結果として事業が独立して素早く改善できる環境を目指す。

Scientific関連

レコメンドによる売上貢献:様々な事業に対してABテストとレコメンドエンジンの提供・改善を開始し、売上への貢献事例が多々出始めました。

MLOps基盤:レコメンドなどの改善サイクルをより高速化すべく、kubernetes上にMLOps基盤を整備、現状多くのトラフィックをこちらの上で捌いています。

Algoage買収と連携:機械学習・AI関連での様々なソリューション提供を行うスタートアップのAlgoageをグループ会社化し、PMIとして事業支援およびAlgoageの技術を活用した事業改善を進めています。既に収益貢献も出始めました。

アドテク推進:自社の広告出稿最適化による利益率改善を目指し、自社向けのアドサーバ構築・リリースやデータ整備などを進めています。

Motivative, Attractive(人事・コーポレート関連)

リモートワーク対応:3月から即時リモートワークへの移行を促し、現時点では出社率10%を切る程度で事業が推進出来ている状況です。自宅環境整備の補助やセキュリティ、手続き面など広く対応を進めてきました。

経営管理フロー整備:定期的な事業数値のモニタリング、そのための運営体制や報告フォーマットの整備、どのような数値を追うか、どの事業をより中心的に追うべきかなど多数の事業を抱えるDMMならではの方法を確立しようと挑戦しています。

新卒研修:2019年度の研修を更にブラッシュアップし、昨年度新卒メンバーにも講師として参加していただきながら約3ヶ月のインフラ〜UXデザインなど幅広くカバーした研修を実施しました。昨年度新卒メンバー同様既に活躍しているメンバーを多数輩出することができています。

People Analytics:内製の1on1ツールやSlackbotの活用、パルスサーベイなどを駆使し、データと向き合った人事に進化している最中です。

42 Tokyo開校:社会貢献として、ピア学習を中心にしたプログラミング学習を提供する42の日本校を開校し、プログラマ不足と教育機会の均等化に向き合っています。

人事の活動などはinside(弊社公式ブログ)を参照いただけると良いかもしれません。

Agility、Scientific、Attractive、Motivativeという4軸に沿って、数多くの施策が進んでいます。具体的な施策はここに上げきれない本当に様々なものが回っている状況です。自分でも全ては追いきれてない、そんな状況です。

DMMの現在地

私がCTOに就任してからここまで、DMM Tech Visionという指針をベースに戦略を組み立て推進してきました。この考え方のベースはこちらのスライドを見ていただければと思います。

組織変革、特にその文化を変えるというのは非常にエネルギーのかかる取り組みです。組織文化については度々noteでも触れてきたのですが、これは組織に属する一人ひとりの「迷ったらどちらに進むか」を暗黙的に方向づけする力場のようなものだと考えています。

この力場を変えていくというのは、制度設計すれば完了するようなものではありません。組織文化というものは、こちらが定義してそれに則って行動してもらうようなではなく、様々な習慣づけ、評価、行動様式、コミュニケーション構造によって組織内の人のネットワークの中に自然と現れる現象です。

ですので、この2年でやってきた様々な施策はあくまで少しずつ文化を形成するための方向づけ、習慣付けの意味合いも強いものでした。「なぜこの施策をやるのか」というWhyをセットにした取り組みを進めることで、その後の各メンバーの意思決定においても、その考え方をベースに動くことが出来るようになる、それがこれまで進めてきた改革の要諦です。

この方向づけは、弾み車のように最初の動き出しは非常に重く、全体が動き始めるには時間が掛かるものです。しかし、エネルギーを注ぎ続け段々と考え方が浸透していくと全体が大きく動き始め、独りでに回り始めるようになります。一度回りだせば、勝手にどんどんと改善され文化が洗練されていくものだと考えています。

DMMは今、この弾み車が回り始めたタイミングだなと感じています。もはや自分の手を離れても各々のリーダーが考えて動ける様になってきました。この流れが続けば、DMMという技術組織は時代に合わせ変わり続けていくことができると感じています。

組織変革・DXが求められる中で今考えていること

DMMで様々な施策を推進する中で、組織変革やソフトウェア活用、データによる事業貢献などのノウハウが蓄積されてきました。昨年のnoteでは下記のように書きました。

そもそもなぜDMMをより成長させようとしているのか、その先になにを見ているのか、ですが、少し大きな話として日本の国としての課題の解決があります。国の行く末をみる一番角度高い指標は人口変化と言われますが、明らかに今後の人口減少と高齢化は世界に先駆けた日本の課題であり、これに対する解決策の一つがソフトウェア・エンジニアリングだと信じています。単にAI的な自動化だけでなく、ソフトウェアドリブンな組織設計やシステム設計による事業全体の科学が必要であり、その先に人口減少時代に必要なスケーラビリティが存在するからです。

ソフトウェア経営への変革、それによる大企業の改善は日本がこれから直面する少子高齢化などの課題に向き合う上で大きな武器になると信じています。

直近では個人として、また日本CTO協会の理事として、様々な企業・行政・団体のDigital Transformationというテーマに向き合っています。COVID-19の影響もあり、この日本も想定していたよりだいぶ早く、大きなターニングポイントを迎えることになり、私としてもこの流れの中で、ソフトウェアとデータを武器に様々な産業を強くするための経営者のサポートをしていきたいと考えています。

最後に

テックカンパニー化という面での具体的な達成はまだまだこれからだと考えています。またDMMとしては領域問わず数多くの事業買収や立ち上げを今後も進めていきます。VRやBtoB SaaSなど様々な領域に取り組んでいきます。

その中ではエンジニアだけでなく、デザイナやプロダクトオーナー、経営者などの方々が暴れまわれる様々な土俵がまだ空白地帯として残っている状況です。ぜひ、ご興味ある方のご応募をお待ちしています。

また、DMMという規模とスピードを活用して新たな事業フェーズに進みたいスタートアップの皆さんもお待ちしています。



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