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月下美人屋敷狂⑥

老人の独白は、戦中の原爆投下そして戦後の混乱期と続いて行った。 「柚子江はね...学校へ行かずに働いて家計を助けたいと言ったんですわ。けど私の両親はね、他人の家の子供でも気にしないで学校へ行きなさいと行ったんです。けど周りのやつらは違ったんですわ。ピカで親亡くして人様の家に張り付く寄生虫じゃ言ったんですよ。私はそのとき既に柚子江に惚れてましたから、よく言った連中と取っ組み合いの大喧嘩をしたんもんです。そんなときじゃった...柚子江が突然、血を吐いたんですわ。ピカ...放射能

    • 月下美人屋敷狂 ⑤

      5中旬 私はいまだ、この屋敷の謎の解明には至っていなかった。しかし、ここに来て被害者にある共通点があることを事務員の貴子が気が付いたのである。 「似たような顔つき?」 貴子は、うんうんと頷きながら行方不明になった少女たちの写真を見せた。 「いや最初は偶然かなって思ったんだけど中臣はるかさんと白畑杏子さん、の顔つきほら見てみてよ」 確かによく似ている。何も言われなければ姉妹と勘違いしてもおかしくはない。だが当然彼女らは親戚でも何でもない。顔つきが似ているのはよくある話だ

      • 真由の復讐

        子供の頃から周りの人たちが言っていた。 “真由ちゃんは、男を誘う子だ” 最初にイタズラされたのは、小学校に上がってすぐだった。相手は近所に住む歳上の幼馴染の圭くんだった。圭くんは“お医者さんごっこ”と言って、真由のお尻や太ももを撫で回して来た。徐々に嫌だと感じて離れようとしたら何度も殴られた。傷が元で両親に問い詰められ、泣きながら話した。父は烈火の如く怒って圭くんの家へ怒鳴り込んだ。だけど圭くんもお母さんも「どこに証拠がある」と言って来た。私は震えながら殴られた事を訴えた

        • 必殺?口裂け女

          私の子供の頃にも町内に口裂け女が出るという噂が流れていました。噂といっても、私や同級生も複数その姿を見かけており、単純に“まだ”遭遇していないだけみたいな状態でした。当然、その目撃談は隣町でも起きており...。 後に同じ中学へ通うNさんは当時、義理の母親つまり継母から執拗なまでに邪険に扱われていたそうだ。産みの母は弟を産むと亡くなってしまい、後妻としてお父さんが連れて来たのが、その継母であったという。当時、中学生だったお姉さんはそれなりに上手くやっており、弟は小さかった事もあ

        月下美人屋敷狂⑥

          月下美人屋敷狂④

          4月下旬 私、探偵の月ヶ瀬は中臣はるかさんが誘拐されたと思われる場所を見つけた。そこは住宅街だが空き家が多く人通りも少ない路地であった。さらにそこで事件勃発間際に中臣さんと分かれたという同級生の柏木君という男子生徒を見つける事が出来た。彼は「きゃ」という声に気づいて戻ってみると黒い車が走り去るのを目撃したという。 私は徐々に犯人に近寄っているのを感じざる得なかった。 5月初旬 その日はGWであった。事件の長期化から善道探偵事務所は伊藤所長と貴子だけは休みを取った。私はこの事

          月下美人屋敷狂④

          鬼の頭蓋骨①

          朝から陰鬱な雲に空が隠れて雨が降り頻っていた。 GWを目前に控えた春のある日であった。遺跡の発掘調査会社に勤める俺は、今日はいつもと違う勤務にあたっていた。 いつもは地面の中の包含層をひたすら掘っている。端的に言えば過去の遺物、つまりは、鏃や土器などと言った遺構物を掘り出すのが普段の仕事だ。そんな作業も毎日繰り返していれば飽きも出てくる。そんなときだった上司の秋田さんに連れられて発掘現場近くの寺へ来るように言われたのは。俺は愛車のジムニーを飛ばして現地へ向かう。しかし、この土

          鬼の頭蓋骨①

          月下美人屋敷狂③

          相模原市内某所 女が学生服姿の女児のブラウスの中に手を忍ばせた。そのまま首筋にキスをしながら女児の首筋を舐めた。女児は思わぬ快感に喘ぎ声を漏らす。しかし恥ずかしさが勝るのか真っ赤な顔をしながら泣き出す。女はそれを見て 「ダメよ...はるかちゃん。折角の美人さんが台無しじゃない...」 慰めるように言うが、はるかという女児は余計に悲しさが増して大声を上げて泣いた。すると 「泣くなっていってんのが分かんねえのかよ‼︎」 女は、立ち上がるとはるかの肩を突き飛ばし、勢いよく壁

          月下美人屋敷狂③

          援助交際の代償

          知人の娘さんから聞いた話。 中学生のとき知人の娘さん...エミさん(仮名)は、不良仲間と付き合っていてノリで援助交際をすることになったという。 「正直に言うと同調圧力...?って言うんですかね。断ろうとすると睨まれて...嫌なの?みたいな顔されちゃって」 以前の学校で執拗なイジメを受けた経験からエミさんは嫌と言えなかった。 そして当日、気の進まぬまま待ち合わせ場所へ行くと20歳くらいの童顔の男性が待っていた。正直、顔はタイプだった為 「エッチしなければ...良いと思っち

          援助交際の代償

          如月望樹堵という人物

          如月望樹堵をご存知ですか? え?何て読むのかって?ああ、字だけだと読みにくいですよね? 「きさらぎ もなと」って言うらしいです。 まあ名前から考えるに男...とも取れるし女とも取れますよね。 実際、そいつがどっちなのか分からんのですよ。 分かっている事はひとつ。 不幸を撒き散らして、目をつけた相手が泣くのを楽しんでいるんですよ。 私も知人から聞いた話なんでよく知らないんですけどね。 けど、なんでもチャットアプリとかをしてると近寄ってくるんだそうです。 得体の

          如月望樹堵という人物

          It-側溝の中のおじさん-

          Itという古いホラー映画をご存知でしょうか? 人間のトラウマを利用し、人間の心の弱い部分を突いてくる陰湿な悪魔?悪霊?のItと少年少女が戦うお話だったと思います。 特に私の印象に残っているのが主人公の弟が雨の中でItと遭遇してしまう場面です。 雨の日、主人公である兄に新聞で作ってもらった船を追いかけて遊ぶ弟。しかし船は側溝の中に落ちてしまう。急いで覗き込むが既に船は見えず、諦めて立ち去ろうとする弟だったが、そこへ 「やあ、ジョージィ!」 と声かかり、怪しげなピエロがぬらり

          It-側溝の中のおじさん-

          月下美人屋敷狂②

          4月某日 私、月ヶ瀬侑は件の子供たちの失踪について調査中であった。今日も子供らの学校や通学路周辺を聞き込みして回るが、悲しいかな探偵という仕事に対して世の人は懐疑的な目を持っているのがよく分かる。国家権力である警察であれば、一般市民が協力するのは常識といった考えがある。しかし探偵ともなれば物語のように上手くいくことはないといっても過言ではないだろう。ましてや開業したてのマイナーな探偵社である善道探偵社が苦労するのは目に見えていた。だが、私は翌日にある手がかりを得る事ができた。

          月下美人屋敷狂②

          殺しますわよ!?

          「殺しますわよ!?」 そんなイタズラ電話がかかってくるようになって既に3ヶ月が経った。いくら着信拒否しても、なぜかかかってくる謎の電話... 090-8894-2731 という番号。とんでもく語呂の悪い数字だと気がついたのは、つい先日のこと。 「8894-2731...うわぁ、“早く死になさい”って...」 もはや番号から俺を殺しにかかっている。 最初にこの電話を取ったのは今年の1月くらいだった。彼女の真里奈と待ち合わせで下北沢駅の改札で立っていたときだ。妙にくぐ

          殺しますわよ!?

          怪猫ババ出現!

          俺には、ハーフの甥っ子が二人いるんだが、今日は兄弟の話ではなく甥っ子2号と、その飼い猫ババの話をしたいと思う。 これはまだ甥っ子が3歳のときの話だ。 「ババちゃん...なんでジャパニーズが喋れるの?」 「俺はセンターにいたときボクシングと日本語を習ったんだ」 これは、アメリカ在住の化け猫と我が甥っ子2号の物語である。 甥っ子2号の話によると時は今から10年前、飼い猫ババことババ・バスケットボール・ジュニアは、ヨーロッパのとある地域で生を受けたのだと言う。 「だけど

          怪猫ババ出現!

          月下美人屋敷狂①

          月下美人とは...花には強い香りがあり、花を見なくても、漂い始める香りで咲き始めたことがわかるほど。初夏から秋まで開花を続けるが、連続的に咲くのではなく、2~3回ほどにまとまって開花する。蕾は、大きく育った株の茎葉の各節につくが、株の栄養状態によっては、しだいに落花してしまう。
メキシコから中米にかけて分布し、樹木の上に着生して育ち、近縁種のクジャクサボテンが昼間開花するのに対し、月下美人は夕方から咲き始め、朝にはしぼんでしまう。 花言葉は... 「ただ一度だけ会いたくて」

          月下美人屋敷狂①

          髪が伸びる日本人形の話

          よく髪が伸びる日本人形の話がありますよね。 友人のIもまさしく髪が伸びる日本人形というのをなぜか持っているんです。どこで手に入れたの?と聞くと 「調布の古物市で見つけた」 と言うんです。それで興味本位でIにやっぱ少しずつ伸びるのか?って聞いてみると彼は、酒を煽って少し不機嫌そうに 「少しならどんだけ良いか!こいつは伸び放題でほぼ毎日俺が超ショートのモヒカンにしてやってんだ」 しかし目の前にある日本人形の髪は、肩くらいまでである。正直なに言ってるんだろうなんて思って見て

          髪が伸びる日本人形の話

          怨念 終

          その後、私は前の会社を退職し10日ほど空き時間を作ることが出来た。その間にも奇妙な出来事は続いていた。以下の出来事である。 ・母が突如、2階からの飛び降り(本人は無意識) ・錯乱ん状態の母が禎子氏がいると連呼 ・度重なる有毒物を口に入れる ・天井から頻繁に足音が聞こえる ・中尾禎子が他界したと言う奇妙な声が聞こえる ・明け方、3階から母が階段を転げて玄関で倒れる といった事が頻繁に起こっていた。これはもはや私の手に余ると感じた。私は知人を介して、このような怪奇現象に詳しい

          怨念 終