見出し画像

真由の復讐


子供の頃から周りの人たちが言っていた。

“真由ちゃんは、男を誘う子だ”

最初にイタズラされたのは、小学校に上がってすぐだった。相手は近所に住む歳上の幼馴染の圭くんだった。圭くんは“お医者さんごっこ”と言って、真由のお尻や太ももを撫で回して来た。徐々に嫌だと感じて離れようとしたら何度も殴られた。傷が元で両親に問い詰められ、泣きながら話した。父は烈火の如く怒って圭くんの家へ怒鳴り込んだ。だけど圭くんもお母さんも「どこに証拠がある」と言って来た。私は震えながら殴られた事を訴えたとき、圭くんのお母さんは私をゴミを見るような目で

「真由ちゃん...あなたその歳でうちの息子を犯罪者扱いする気?体を触ったっていうけどうちの子は真面目な子なのよ。何かの間違いじゃない?...まあ、あなたが誘ったというなら誘惑に負けた圭にも責任はあると思うけど、子供のくせに男好きの真由ちゃんに問題があるんじゃないの?」

父は、圭くんのお母さんに掴みかかって警察沙汰になった。幸い訴えられず、示談で決着がついた。
その後、父の仕事の都合で都内へ引っ越した。圭くんのいない環境で私は、ようやく立ち直りはじめた。だけど次は通っていた塾の先生だった。

「戸川は、算数が苦手かい?じゃあ今日は少し残って先生と補修だね」

若くて明るくて優しい先生だと思っていた。無理矢理、車に押し込められて裸にされた。写真やビデオを撮られ全身を隈なく触られる行為を半年以上も受けた。たまたま塾の他の先生が不審に思って後をつけて私を助けてくれた。そして、そのときも先生は警察で言ったそうだ。

「あの子にも責任がありますよ。私を誘惑してきたんだから」

両親は、私を不憫に思って「無理に外へ出なくて良い」と言ってくれた。女の先生を選んで心のお医者さんにも通わせてくれた。そんなときだった。同じクラスの子たちと鉢合わせした。私は逃げるように去ろうとしたときヒソヒソ声が聞こえた。

「戸川さんだよね〜あの子」

「うちのお母さんが言ってたけど大人にエッチなイタズラされたらしいよ」

「あー分かる〜!あの子、学年で一番おっぱい大きいから触りたくなったんだよ〜」

「なにそれー!けど前の学校でもそうだったって聞いた〜」

「男の子と喋れないとか言ってたけど、本当は自分からエッチなことさせたんだよ、きっと〜」

そんなんじゃない!そんなんじゃない!...圭くんも先生も最初は優しかった。だけど次第に体を触ったりしてくるようになったんだ...私は嫌だって言ったのに。その度に殴られたりして...私が何をしたっていうの!
結局、孤立と不登校が続いて私は別の学校へ転校した。転校先は穏やかな多摩の方の小学校だった。先生たちやクラスの子たちの助けで少しずつ通えるようにもなった。私を変な目で見る男の子も先生もいなかった。何事もなく半年が過ぎて6年生を目前に控えた春休みだった。決定打になる事件が起きた。

「叫んだら殺すぞ!」

私は学校帰りにクラス委員の男の子・数馬くんに雑木林へ連れて行かれ、押し倒され首を絞められながらそう言われた。半狂乱になりながら助けを呼ぼうとするとさらにキツく首を絞められた。そして服を破かれて無造作に下着を破かれた。今までで一番最悪な出来事だった。無理矢理に挿入された膣内からは出血が止まらなかった。もう両親にも言えない...そう思って家に帰って着替えた。何事もなかったように振る舞った。だけど夜中に耐えられなくなって泣いてしまった。ぽたぽたと血混じりの精子が垂れて来た。痛い...強烈な痛みに耐えながら自分の不幸を呪うしかなかった。その後も数馬くんは私を犯した。時には他のクラスの子達を連れて来て複数で私を犯し続けた。9月に入ってすぐ尿検査があった。そして提出した翌日に私は担任の先生と保健の先生に指導室へ呼ばれた。担任の先生は青い顔をしながら

「戸川さん...落ち着いて聞いてね。あなた...赤ちゃんがお腹に出来てるって...」

先生はおろおろしていると保健の先生が

「もしかして誰かに無理矢理...?」

私は俯いたまま

「数馬くんに雑木林で無理矢理...何度も...。あと夏休み中も他のクラスの男子たちにもされました...」

担任の先生は涙を流しながら、両親にこの事を報告すると言って出ていった。
私はもう涙も出てこなかった。梅雨明けくらいから生理が来ていなかったからもしかしたらとも思ったが、赤ちゃんがお腹にいるとは思ってもいなかった。
保健の先生に連れられて病院へ行くことになった。先生は私を他の人に見られないようにそっと車に乗せて総合病院へ連れていってくれた。担任の先生も両親を連れて病院へやって来た。両親は涙ながらにごめんね、ごめんねと泣いて謝った。なんでお父さんとお母さんが謝るの...?そう思っても口に出せず黙って頷くしかしなかった。
入院してしばらくすると女のお巡りさん二人と男のお巡りさんが来て数馬くんたちを補導したと聞いた。私を犯した後、他の子にも手を出していたそうだ。あまりにも悪質なやり方だったそうで、それなりの罰を受けるらしい。
夏の終わりに私は、お腹の子供を殺すという選択をした。その重みは小学生だった私には重過ぎた。数馬くんらの両親は何かの間違いだと言っていたそうだが、私の体に残された傷跡が彼らの犯罪を証明していた。誰の親か知らないけど、捨て台詞で

「男好きの娘が死ね」

そう言ったのが聞こえた。その言葉が今でも私の心に刺さり続けている。

中学は通信教育だった。高校は父に送り迎えをされながら都内の女子校へ通った。あれからは何も起きていない。だけど心の中で何度も念じていた。

「圭くんは、火だるまになって死ね」

そう思ったら圭くんは、本当に火だるまになって死んでしまったと聞いた。ざまあ見ろ...

「あの塾の先生は、リンチされて死ね」

そう思ったら塾の先生は、半グレ集団に人まちがいで囲まれて死ぬまで凄まじい暴力を受けたそうだ。見つかったときには原型をとどめていなかったそうだ。ざまあ見ろ...

私を汚したやつらに死ねと思うと、そうなることに気がついた私は、数馬くんには特に酷い死に方を考えるようになった。それは私の目の前で、刺されて私に助けを求めながら死ねというものだった。
女たらしの彼のことだから、どうせ恨みの一つや二つ買っていると思った。案の定、彼は利用した女に腹部を何度も刺されて私の前で倒れた。女の方は馬乗りになって数馬くんを刺し続けている。彼は助けてと懇願しながら私を見上げていた。それが実に滑稽で笑いを堪えるのが大変だった。笑みを浮かべて死に際を見届けてやった。事切れる寸前、ぱくぱくと口を動かす彼を見ながら

「ばいばい。私の赤ちゃんのお父さん...ざまあ見ろ」

私は騒ぎの中を涼しい顔でその場を後にした。

その後、私は大学で出会った主人と結婚した。夫婦生活は円満だ。お腹の赤ちゃんも順調だ。だけど夫には他に女がいるようだ...。今はこの男をどう殺そうか、日中はお腹の赤ちゃんと相談している...。私を不幸にするやつは一人残らず殺してやる。

赤ちゃんが産まれるのが先か、あなたが死ぬのが先か...どっちかな。楽しみね...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?